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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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遠回りの理由

 森神と別れ、レオは杏那を背に乗せ夜空を駆ける。


「レオ様、どうして神殿とは逆方向に向かうのですか?」

「戻ってしまうと、なかなか杏那と二人きりになれないからね。」

「レ、レオ様、そ、それはどういう…!」

「それに、視線を感じたんだ。僕たちの動きを探っている者がいる。真っ直ぐ神殿に戻れば、相手の思うつぼだろう?」

杏那は観月祭の直前に聞いた理世の言葉を思い出す。理世は調査状況として”先日の一件を再現させようとしている者がいる”と話していた。

「確かに…。」


 レオは森神の話を聞いてからずっと眉間に皺を寄せ、浮かない顔をしている杏那を横目で捉えていた。

「せっかくだから今日は杏那を僕のお気に入りの場所に連れて行ってあげるよ。」

レオはそういうと閃光の如く夜空を駆け抜ける。森と山を越えた先にレオが降り立つとそこには大きな湖が広がっていた。そして水面には夜空に輝く月と星たちが写り、幻想的な景色が広がっている。

「わぁ!なんて美しいのでしょう…!」

杏那は思わず息をのみ、幻想的な景色に見惚れた。レオは杏那が寒くないように虎の姿のまま寄り添った。


「やっと笑ったね。」


レオは目の前の煌めく水面に視線を移し話しかける。

「森神の話に心を痛めていたのだろう。」


レオの言葉に杏那ははっとした。

(レオ様は私を元気づけるために、遠回りをしてくださったのね。)


「だけど杏那のおかげで森神を元に戻してあげられたね。」


「…レオ様のおかげです。レオ様があの場に瞬時に連れて行ってくださったから他に被害も出さず、お助けすることができたのです。それに…。」


レオは杏那の方を少し振り返って顔を覗き込むと続きを待った。


「レオ様が森と神殿の間に結界を張ってくださったおかげで、心を落ち着けて祈りの儀式にも臨むことができたのです。レオ様、今日は本当にありがとうございました。」

そう言うと杏那はレオに笑顔を見せた。


 杏那たちは裏手の森に妖怪の不自然な気配を察知した後、杏那が対処に向かうことができない祈りの儀式の間に被害が出ないよう、レオが神殿と裏手の森の間に邪悪なものを通さない一時的な結界を張ったのだった。


 レオは水面に視線を戻し、もう一つ質問をする。


「そういえば、どうして杏那は彼が森神だと分かったの?」


「光に照らされたとき、深緑色の髪と神職のような装束が見えました。以前この森の森神様が行方不明だという話を聞き、何度か探したことがありましたので、特徴を覚えていたのです。」


「そうだったのか。あの短い時間ですぐに気づくとはやっぱり杏那はすごいね。さてと…そろそろ戻ろうか。豪と理世が心配するだろうからね。」


レオはゆっくりと立ち上がり、杏那も続いた。

「はい。戻りましょう。」


 レオのおかげで杏那の気持ちは落ち着き、痛めていた心もいつの間にか元気を取り戻していた。二人は少しだけゆっくり夜空の散歩を楽しみながら神城家へと帰っていった。

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