表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
531/564

反乱の首謀者

 ワァーーーーーーーーーーー!!!


「朝から物々しいな」


 翌朝、ドミニアの各所から聞こえてくる鬨の声や歓声の声で目を覚ます。


「御目覚めであるか」

「……寝なかったのか」


 俺が目覚めると、部屋の隅に用意された椅子で本を読んでいるオーギュストが反応する。そしてその傍にはすぐに動ける体制で寝ている騎士達とティタの姿があった。


「ワガハイは悪魔である。寝ることは生きるのには必須ではない故に、しいて言うなら夢を見るための娯楽としてであるな」

「時間つぶしときたか……普通は生きるために必要なものなのだがな」


 ベッドを降りると、そのまま窓辺に寄り、領主館から見えるドミニアの景色を見渡す。


さすがに(・・・・)火の煙は登っていないか」


 領主館の窓から見えたのは、街のあちこちに武装したドワーフの姿と、列をなしてドミニアの壁門へと向かっている人族の列だった。


「さすがに、ここで人族を惨殺しても、どちらにもいいことは無いであろう?」

「だな。そんなことをしてしまえば、俺も(・・)不信感を持ちかねなかった」


 ドワーフたちはここ、ドミニアで反旗を翻した。その過程で人族を虐殺でもしてしまえば、ネンラールはもちろん、人族の国と交渉しにくくなる。仮にもドゴエスが国として立ち上がったわけなのだから、そこはしっかりしておかなければならない。


 コンコンコン


「バアル様、目を覚ましましたか?」


 しばらく戦時中の町の光景を見ていると、扉がノックされ、そこから高い子供の様な声が聞こえてくる。


「ああ、起きている」

「朝食のご用意が出来ましたが、要りますか?」


 室内を見回して、すでにティタが起きていることを確認する。


「ああ、もらおう」

「では、今お持ちいたします」


 こちらの言葉を聞くと料理を取りに行ったのか、足音が遠のいていく。


「そういえば気になっているのであるが、ワガハイ達は宿泊所に帰っていないが、食料はどうなっているのであるか?」


 オーギュストは宿泊所の食糧が全てティタの解毒が必要なことを思い出してそう聞いてくる。


「安心しろ、昨日は何かあると分かっていたから、今日の分を含めて解毒させてから会食に来ている。変に食べ過ぎていなければなにも問題ないだろう」


 昨日はドイトリからすでに何かあると聞いているため、今日帰らなくてもいい量を無害化していた。


「そうであったか」


 コンコンコン


「食事をお持ちいたしました」

「ああ、入れ」

「失礼します」


 扉を開けて入ってきたのは、ドイトリよりも少し背の低い女性のドワーフ。それが、自分の目線から少し下くらいの高さのワゴンを押して入って。


「一応全員分のお食事を用意はしました。ですが、お代わりなどはありませんので」

わかっている(・・・・・・)

「では、私はこれで、使用済みになった食器はワゴンに乗せて、廊下に出しておいてください」


 最後に一礼してからドワーフの少女?は部屋を出ていく。


「さて、ティタ」

「……わかっている」


 こちらの声を聞くとティタが動き出して、ワゴンに近づいていく。


 そしてそれぞれの料理を一つまみし、口に入れる。


「……大丈夫だ」

「そうか、ではいただこう」


 ティタにより安全が確認できたので、俺やほかの騎士達も食事を始めだす。












 コンコンコン


 食事が終わり、ゆっくりしていると扉がノックされる。


「バアル様はいるか?」

「だれだ?」

「儂じゃ、ドイトリじゃ」

「いいぞ、入れ」

「邪魔するぞ」


 こちらの許可を得ると扉が開かれドイトリが姿を現す。


「なんだ、武装はしていないのか?」

「はは、してくるなら、あと数十人は用意してくるわい」


 ドイトリはドワーフが一般的に着ている服装だった。そこには敵愾心の欠片もなかった。


「それで、何の用だ?」

本格的な(・・・・)話し合いを行いたい」


 ドイトリの言葉で先ほどまでのゆったりとした思考から切り替える。


「面子は?」

「儂、ドゴエス、ジアルド、そしてユリア嬢とお主のつもりじゃ」

「なるほど」


 どうやらドワーフとグロウス王国の面子での話し合いになると言う。


「了解した。それと確認だが、ユリアとは?」

「何も話しておらん。というよりもユリアは知らなかったと言う方がいいのであろう?」

「確かにな」


 ドイトリの言葉に微かに笑う。


「で、何時だ?」

「すまんがこの後すぐにじゃ、今ユリアの方にもほかの奴が行っている」


 どうやら今この瞬間にユリアの方にも案内のドワーフが行っているらしい。


「なるほど、こちらは今すぐでも構わない」

「よし、では行こうぞ」


 それから、俺はティタとオーギュスト、騎士達に囲まれながら、領主館の中を移動し始める。












「おう、来たな」

「これが俺たちを殺す場でないことを祈ろう」


 俺たちは執務室らしき場所に訪れるのだが、そこには椅子にふんぞり返って、さながらマフィアのドンの様になっているドゴエスがいた。


「安心してください、親方が、どんなに悪人面であろうと私たちがそういった行為は見逃しませんから」

「そうじゃ、いい加減ドゴエスも愛想よくしたらいいのにのぅ」

「……俺、これでも笑顔で迎えたつもりだぜ?」


 もはや恒例となったようなドゴエスいじりが行われて、俺はそのまま部屋の中に進み、ソファに座る。


「……なぜ、そんな飄々としていられるのですか?」


 そしてソファの反対側にはユリアが険しい表情で座っていた。そしてその視線は完全にこちらを非難してるものだった。


「なぜだろうな、似たようなことの経験があるからか?」


 おどけて返答するとユリアの視線が一層厳しくなった。


「さて、では話をしよう」

「何の話をするつもりですか?この反乱についての後悔についてなら話を聞きますけど?」


 ユリアの言葉に当人以外はげんなりとする。


「さて、ユリア嬢、ここからは俺たちの()が話そう」


 ドゴエスが椅子を降りると一人(・・)に席を譲る。


「さて、では改めて挨拶しよう、私はジアルド(・・・・)=ゴル・ウェゴン。300年前、初代ネンラール王と知己であった、グロム=ゴル・ウェゴン王のひ孫だ」


 ドゴエスに変わり、ジアルドがその席に座る。


「……旗頭はドゴエスではないのか?」

「ははは、俺はせいぜいがお前らで言う将軍とかそこらだぜ。で、ドイトリは近衛騎士の隊長ってところか」

「似合わないとは思って居るがの」


 ドゴエスとドイトリがジアルドの斜め後ろに並びたつ。


「しかし、ひ孫か、ドワーフの長寿を考えればそうおかしい話でもないのか」

「ええ、私も70歳といういい年ですが、ドワーフの平均寿命が200歳なのを考えればおかしい話ではないでしょう」


 こちらの呟きに最初にあったときの雰囲気に戻ったジアルドが答えてくれる。


 ジリッ


「おっと、嬢ちゃん、手荒な真似はしたくねぇ、変な色気は出さんでくれるか」


 ジアルドと歓談しているとドゴエスがユリアとジアルドの間に入ると、手で制する。


「ユリア」

「……」


 俺が静止の声を出すと、ユリアから揺らめく気配の様な物を感じる。


「バアル様、今目の前にいるのは反乱軍の頭目とその側近、制圧しない理由があるのなら、今ここでおっしゃってください」


 ユリアが戦士の目、または狼の目とも言えるほどの気概でこちらに告げる。


「ユリア、聞くが、お前のその行動は誰に対してのものだ?」

「どういう意味ですか?」

「……その様子じゃ、見えていないのか……」


 ユリアの様子に本当に落胆した声を出す。


「さて、バアル君は見えている様子ですが、そちらは目が曇っているようですね」

「ジアルドさん、それはどういう意味ですか」


 ジアルドの言葉が気に障ったのか、ユリアの足元から霜が広がり始める。


「はぁ、氷があるなら涼みたいところだが、しゃあねぇ」


 ユリアの気配にドゴエスも対抗し始める。だが―――


「双方、やめろ」


 俺は魔力を込めて、言葉を紡ぐと二人とも視線をこちらに向ける。


「ユリア、なぜ、反乱することをそこまで否定する?ここはネンラール国内、グロウス王国からしてみれば荒らしてくれて感謝してもいいぐらいだ」

「……」


 だが、その言葉にユリアの目から剣呑な気配は消えない。


「言いたいことはわかる。ネンラールが国力を落とすことになれば、イグニアの力が落ちるも同義。だからお前はこの反乱が許せない違うか?」

「……」


 こちらの言葉にユリアは答えないが正しいとその表情が示していた。


「だが、ユリア、よくよく考えてみろ。この反乱では俺たち全員が(・・・)得をすることになると思わないか?」

「…………何を」


 ユリアはこちらの言葉に何かが揺らいだのか気配が小さくなる。


「考えてもわからないか、なぜ俺が露骨に抵抗しないのか、そしてなぜ目の前にいる三人を捕縛しないのか、を」

「おいおいおい」


 俺の言葉にユリアではなく、ドゴエスが反応する。


「…………まさ、か」


 頭がようやく冷えたのか、ユリアがようやく答えにたどり着いた。

カクヨムにて先行投稿をしています。よろしければそちらもどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16816452220569910224

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ