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水滸伝  作者: 本間敏義
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第4話:花和尚の道



林冲が滄州へと護送される途上、彼の運命を決定づける出会いが待っていた。その男の名は魯達、のちの魯智深。小覇王とあだ名されるほどの怪力無双な将校であったが、弱きを虐げる悪徳商人・鎮関西を拳一つで撲殺してしまい、官憲の追っ手から逃れるために出家し、僧侶となっていた。


魯智深は背中一面に美しい花柄の刺青を彫っていたことから、「花和尚」と呼ばれた。僧侶の袈裟を身に纏いながらも、酒を愛し、肉を喰らい、法力よりも己の拳で道理を説くという、破天荒極まりない男であった。しかし、その豪放磊落な性格の裏側には、誰よりも熱く、純粋な義侠心が脈打っていた。


滄州へ向かう林冲の護送を担当した公人たちは、高俅から密命を受けていた。「野猪林やちょりんという深い森の中で、林冲を暗殺せよ」と。護送役たちは、疲弊した林冲を縛り上げ、棍棒を振り上げて今まさに命を絶とうとしていた。林冲が万事休すと思われたその瞬間、森の奥から雷鳴のような咆哮が響き渡った。


「誰が俺の兄弟を殺そうとするのか!」


挿絵(By みてみん)


梢を揺らすほどの勢いで飛び出してきたのは、魯智深であった。彼は林冲が護送されることを知り、密かに尾行していたのである。魯智深は太い鉄の禅杖を一振りし、護送役たちをまるで子供のように蹴散らした。林冲の縄を解くと、彼は「俺がここまで送っていく」と、命を懸けて林冲を守り抜くことを誓った。


林冲にとって、この出会いは単なる命の救済ではなかった。高俅に裏切られ、世の中に絶望していた林冲の心に、再び「人と人の信義」という灯がともった瞬間であった。魯智深は、理不尽に満ちたこの社会の中で、力で道を切り拓くことの正当性を、その背中で示し続けた。


その後、魯智深は五台山を追われ、東京(汴京)の大相国寺へと流れる。そこで彼は、偶然にも菜園を守る役目を命じられる。その菜園の近くにいた浮浪児たちが彼を陥れようとするが、魯智深はその度量の深さで彼らを子分にし、逆に結束を強めていく。


「酒と肉と、そして義」。花和尚の道は、常識という殻を打ち破り、真に自由な魂が梁山泊へと向かうための先駆けであった。一方、林冲もまた、復讐の炎を胸に、やがて梁山泊の門を叩くことになる。運命の歯車は、着実に百八星の集結へと向かって加速している。

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