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不死の商人  作者: ととキャット


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1/3

1

街の石畳に、朝の光が斑に落ちる。

小さな露店が軒を連ねる商人街。香辛料の匂い、焼き立てパンの匂い、湿った石の匂いが入り混じり、今日も街は目覚めていた。


リオは静かに歩きながら、露店の間に立つ少女に目を留めた。

銀色の髪を風になびかせ、どこか浮遊しているように見えるその姿は、普通の人間ではない――そう直感した。


「……やっぱり、魂か」


声は出さなかった。ただ、手のひらに微かな波紋を走らせる。空気の密度が少しだけ変わる。

魂を感知する――リオの商人としての本能は、この街で最も重要な力の一つだった。


その時、少女の足元に突然、黒い影が落ちた。

影は人型だが、形が歪み、目だけが不自然に光っている。

「ちっ……またか」リオは呟いた。

その存在は、街の裏で魂を狩るならず者だ。まだ小物だが、見過ごせば他人に害が及ぶ。


「危ない!」


少女の声と共に、黒い影が少女に向かって飛びかかる。

リオはためらわなかった。足を踏み出すと、空気の中で微かな光の糸が走り、影を縛り上げる。

瞬間、影は断末魔のような声を上げて消えた。


「……あなた、魂の扱い方、心得てるね」

少女は目を丸くしてリオを見上げる。

「そう見えるならそうなんだろう」リオは淡々と答えた。


その夜、リオは少女と街の小さな酒場で向かい合った。

「名前は?」少女が訊く。

「リオ」

「私は……カイル。……死んでる」


リオの眉がわずかに動く。

「……死んでる?」

「ええ、でも意外と気楽。誰も見えないし、好きなところ行けるし」

カイルは楽しげに笑ったが、目はどこか寂しげで、深い影を感じさせる。


リオは黙って酒場の壁を見た。

——この少年には、何か大きな未練がある。

そして、街に現れた影の件も、単なる小物ではない。

どこか大きな渦の端が、この小さな事件に触れている気がした。


リオは思った――

「面倒くさいことに、巻き込まれそうだ」


しかし、その面倒くさいことこそが、リオの長い不死の人生に、久しぶりの刺激を与えることになるのだと、この時はまだ気づいていなかった。

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