12層 海のもずく(直球)
「しゃあ! なんかいいのこい!」
勢いよく開封。罠だったら……まあ、うん。次回から確認しよう。もう遅い!
中身は…………海藻?
とりあえず食べてみる。
「ん、これもずくか。元々こんな感じなんだな……」
…………え、これだけ?
ハハハ……嘘だろ?
これが運悪くハズレだったんだと思うことにして、他の宝箱を探す。というか自衛隊が運送していた巻物もここから出た可能性があるし、あれだけを運搬して落とすということもないため、他にも色々拾ったものがあったのだろう。階層に紛れて落とした説はあるが……うん、その考えは忘れよう。
一時間ほどサメをシバきつつ地面を見ながら歩き回った結果、見つけた宝箱は最初の合わせて三つ、全部もずく(食料)だった。
ちなみに、何かですくったような痕跡が見られる場所があったため、自衛隊がいくつか回収したものと思われる。ただ、その数的に漏れは無さそうであり、宝箱もモンスターのように時間で湧き直すものと考えられる。
今日はこの辺にしておこう。どういう雰囲気なのかは掴めたし、もずくを美味しく頂かねばならない。
もずくを枕に入れるのは何か嫌なので手で持って、いつも通り1層の人目のつかない場所へ転移した。
一応正式な手順で入出の記録を残さないと、後々探索者免許剥奪とか言われたら泣く。
脱法探索者にならないためにも、この面倒な手続きはしなければならないのだ!
平日の夕方は入る人が一定数、出る人はあまりいないようで、なぜか入ってきた探索者からジロジロと不躾な視線を浴びながら外に出た。
幸いなことに退出の列には誰もおらず、退出業務の方に居る新人さんのところへ向かった。
「すみません退出でお願いしまーす」
「はー……い?」
「? 大丈夫ですか?」
「あ、えと、……しょ、少々お待ちください!」
慌てた様子で電話をとっている。内線というやつだろう。
「すみません先輩、びしょ濡れの水着の人が退出する場合ってタオルの貸出とか……え、いえ、下水ではなく海水みたいな匂いで海藻を手づかみしてて……はい、あっ、はい。分かりました!」
あっ、そういえば着替えるの完全に失念していたな。
水中が地上と変わらなすぎて違和感を抱かなかった。しかもよりによって学校指定のピチピチの水着だ。
「あの、別の人が来ますので、少々お待ちください!」
「ああ、はい。すんません、うっかりしてまして。次はちゃんと(オシャレな水着)着てきますんで」
「あ、ありがとうございます? ……ちゃんと(服)着てくれるんだ。変な人じゃなかった……」
次はイケイケな水着着て見せにこよっと。
上書きしないと俺の沽券に関わる。アロハ系でいくか、敢えてのブーメランでいくか……実に悩ましい。慌ただしい感じの歳の近いレデイにお見せするならやはりリードできそうな男前なアロハな感じがいいだろうか。
新調する水着のカテゴリに頭を悩ませていると、息を切らしながら走り寄ってきた人物が。
「やーおーえーだーさーんっ!」
「げっ、司條さん……」
今にも爆発しそうなほど頬を膨らませたちっこいロリきょぬー氏が睨んでいる。
「私がなんで怒ってるか分かりますか!」
「えーと……ガチャですり抜けたから?」
「……」
「じょ、冗談ですよやだなー。ほら、あれでしょ、えーと……俺が美しすぎるか――いえちょっと舌が勝手にすっ転んだだけです。あれっすよね。女の子の日!」
「――貴様そこになおれぇい!!」
ひぃこわい!
12層のサメよりこわい。心の中のサメどもも俺の横で正座してるんじゃないかと幻覚を見せるくらいこわい。
そうして俺は学校の水着のままお外で小一時間ほど説教され、ダンジョンに入る人達にクスクスと笑われる拷問を味わった。その後、協会本部のシャワー室にぶち込まれ、清めた身を無理やり引っ張られて本部長とやらが待つ部屋へ連行されたのだった。特に、逃げないようにとガチムチの人達に監視されながらのシャワーが一番身の危険を感じた。
たぶんあの時間だけでケ〇の穴が数ミリは萎んだぜ(震え)。




