ep74 見積もり(Business plan)
「それで、今日はどうするさね?転移門で大人しく帰るのかい?」
「それはモチロンッ!!きゃはッ♡」
こうして、ヘスティは満足気にランデスに乗り込み、家へと帰っていった。しかし「おかみ」は帰る前にヘスティが話していたコトに少しばかり頭を悩ませていたと言える。
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「おかみさま、ディアさまは魂を集めていると聞きましたでち。もし良ければ、わたくしにお手伝いをさせては頂けませんでちて?」
「ほう?大量に何かを狩る予定があるのかい?」
「昨日、女神ウラノ・スィンゲルさまから連絡があったのでち。わたくしの秩序の権能を貸して欲しいと」
「アンタも結構、ウラノにコキ使われてんだねぇ……」
ヘスティが言うには、ウラノは近々、近隣の惑星を大規模侵略するらしい――
だがそこは発見当初に調べてみたところ、覇権を競っているのが陸海空それぞれの獣だったそうだ――
更なる調査の結果、人間は既に絶滅し、高位高次元生命体ですら追い払われ、獣の楽園が完成しているらしいという報告を受けたウラノは、稀に見るケースの惑星である事に感動を覚えたが、それこそチャンスだと感じたのだと言う。
現状でウラノが完全支配している惑星の獣達は適宜間引かれ、人間達は争いを起こさないように厳重に統制を掛けられている。拠って平和になり過ぎた結果、人口爆発の影響で今後食料や水不足が懸念されているらしいのだ。そこで新たな惑星を植民地とし、そこに今後溢れ出して来る余剰人口を入植させようと考えたのである。
それはウラノ配下の者達で粗方の獣達を狩り、長い間争い獣達の血肉で汚染された大地と海に、ヘスティの権能を用いて、段階的に惑星の秩序を取り戻させる……と言った「計画」である。
「テラ・アルバフォーミング」と名付けられたその計画をウラノは近々、大々的に実行に移そうとしているらしい。
現状では既にその計画の前段階として、惑星侵略の足掛かりとしての砦建設が進んでいるとの事。
この「テラ・アルバフォーミング」は長い年月が掛かりそうな一大事業だが、ヘスティが一気に惑星全土の秩序を復活させる事は出来ないので、どうしても段階的に駆り出される事になる。そして、この計画の要を担うヘスティのその護衛としてディアとランデスを招集し、大量に湧いている獣達を狩ってもらいその魂を集めれば……という話しだったのである。
「まぁ、大体の話しは理解したさね。だが、こちらも商売だ。いくらディアの為とは言っても、この店の従業員に払う給金の話しもあるから料金は度外視出来ないさね。アンタが一回あたり何日その惑星に滞在するかは分からないが、短日から複数日まで、それぞれ見積もりを作っておくから、ウラノにも相談するこったね。アンタの護衛ってコトなら、ウラノも金を出さざるを得ないだろうしねぇ」
「あのぉ……おかみさま?その……料金を少し勉強してはもらえませんでちて?その方が、ウラノさまにも話しやすいのでち……」
「まぁそうさねぇ……。それは善処させてもらうとするさね」
「善処」の意味を知らない者なら、喜んだであろう「おかみ」のこの発言だが、ヘスティは「善処」の意味を知っている。そして、「おかみ」の考え方も……だ。
恐らく期待は出来ないだろう。ヘスティの護衛としての料金を「おかみ」が釣り上がれば、ウラノは難色を示し、別の者をヘスティにつけようとするかもしれない。
そうなればヘスティの心の中で練り上げた、「ディアさまを助ける名目でありながら、他人の金でランデスくんさまとイチャラブ計画」の達成は困難になる……。
そんなこんなでヘスティはランデスの車内で熟年おひとりさまモードをキメ込んでいた。
料金について、ヘスティにとっては正直頭の痛いコトこの上ない話しだった。しかし「おかみ」から仮了解を得られたこの件に対して、「一縷の望み」を高見えさせる形でウラノとの交渉に全額賭ける算段を今は考えている。
拠って頭をフル回転させながらランデスに揺られているヘスティの姿がそこにありましたとさ――
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「獣達が支配した惑星か……果たして本当に高位高次元生命体の力を以ってして、それは叶うのかい?何かしらイヤな予感がするねぇ……」
「おかみ」は一人フロアの椅子に腰を掛けていた。イシュとアマテラの二人は夜営業に向けて先程から食材の買い出しに出ている。サボりながら買い出しするのはとうに知っているから、まだ暫くは帰って来ないだろう。だからこそ今は完全に「おかみ」が「魔の酒場亭」に一人きりだ。
二人が買い出しから帰って来たら仕込みが始まる。それまでに色々なコトの粗方の段取りを組んでおきたい「おかみ」であった――




