ep63 バブル(Lewd gaze)
前回後書きで書きそびれました……。
なのでこちらに。
このep63から新章「神々の戯れ」に入らせて頂きます。
尚、この章の途中に二回目のギャラリーを挟み込む予定ですので、もう暫くお待ち頂けると幸いで御座います。
それでは、本編をお楽しみ下さりませ____○_(土下寝)
――アーレ攻防戦から2ヶ月経った明くる日の事――
「おかみさま、いらっしゃいますでちて?」
「あぁ、アンタか。今日もランデスに乗りに来たのかい?」
「わたくしの愛しの愛しのランデスくんさまに会いたくて逢いたくて逢瀬を重ねる為に、また来てしまいましたでちッ!きゃは♡」
この2ヶ月、「魔の酒場亭」は儲かって儲かって仕方がなかった。売り上げの大半……いや、正確にはほぼ八割は守銭奴から浪費家にジョブチェンジした元守銭奴のお陰と言っても過言ではないが、それ以外の売り上げは酒場が当たったと言えなくもない。
更にはそこに少しだけ、エレが行う無理やりねじ込まれた出稼ぎが混じる。
以前は給仕がエレしかいなく、そのエレは給仕の間も不機嫌なしかめっ面だった。当然客ウケは良くない。
まぁ、中にはコアな客もいるが、それはそれ。これはこれ。
だが今は違う。ほぼ休みなく毎夜営業を重ねられるようになった事。見た目がソフィアになったイシュと、首輪が外れ愛想が格段に良くなり、更には見た目もいいアマテラが加わった事。主に後者が大きくその甲斐あって、客ウケがうなぎ登りになったのだ。
まぁ、大体の客は男性メインの冒険者パーティ女性抜きか、老若問わない町人男性ソロ客、イケメン独身貴族などであり、お目当ては当然二人だ。
エレとしては不機嫌な顔に磨きがかかると言うものだし、穴場のバー的な感じから、わちゃわちゃしてる居酒屋的な活気ある姿に「魔の酒場亭」がジョブチェンジした感もなくはない。
酒が入った客が二人を口説き、こっぴどくフラれるのも連日の恒例行事になりつつある。だが、フラれても折れずにその壁を乗り越えようと、店に連日通うツワモノの姿も多数存在する。
そんなこんなで店は活気付いたのである。「もう閑古鳥が鳴き叫んでいるとは言わせない」と、そんな雰囲気を醸し出す程に特に夜は賑やかだった。
拠って更には欲をかき、店を少しばかり改装してフロアの専有面積を増やしたりもした。
だが昼間の営業……ランデス目的のヘスティの存在はディアを疲弊させていた……と思いきや、意外とそうでもなかったのである。
当初はランデスの中で、一人キャッキャウフフ一人イチャイチャしてたヘスティだったが、回を重ねる毎にヘスティは熟年カップルのようにランデスに対して、物理的に寄り添うようになっていった。
ただ実際にいそうな往年の熟年カップルと違う点は、常にハイテンションなおひとりさまだという点だろう。
そんなこんなで、車内でわきゃわきゃはしゃぎ、ディアの運転妨害をする事は徐々に減っていったのである。
「おかみさま、ランデスくんさまはいつも、わたくしを家まで送って頂くだけなのでち。片送りではなく、目的地経由で家まで送って頂く事や、わたくしの家から何ヶ所か経由して、再び家まで……そんな事は可能でちて?」
「まぁ、それは出来なくもないが……。先ず、複数日に跨るならディアの宿泊の用意と宿泊場所が必要になる。だから今日の今日みたいに急遽な対応は無理さね。今のところ片送りだけにしてるのは、片送りなら帰りの時間が読めるからなんだ。――片送り以外なら完全予約制にして、他の予約が入らないようにする必要がある。だから……」
「金額が高くなる……という事でちて?」
「ランデスは1台。ディアも一人。ディアもここの従業員である以上、そんなに無理はさせられないさね」
至極真っ当な意見と言えるだろう。「魔の酒場亭」の2階をついでに改装した狭い部屋に住み、朝から晩までコキ使われる運命を背負わされた二人とは、桁外れに「好条件での待遇」と言えなくもない。
まぁ、この店の収益の八割をディアが稼いでいるので、仕方ないと言えば仕方ないのだが、そのほぼ八割の支払いを店にしているのはヘスティである。
故に無碍には出来ない。上得意様の機嫌を損ね、その売り上げが失くなってしまえば昼間だけは昔の姿に戻り兼ねない。そうなれば店の収益は減り、エレが前にやっていたような、ほぼ毎日出稼ぎに出る所用をさせるしかなくなってしまう。
本来は売り上げを複数箇所に分散させ、単一顧客一点集中依存型を避けておくのが経営の基本だろうが、今の「魔の酒場亭」の売り上げ上昇は言わば「バブル」のようなモノ。そして、この話しは深堀りする必要がないので、それはそれ。これはこれである――




