ep62 考察(Verbal promise)
「この話しはディアから聞いたワケじゃあない。ディアは何故か言わなかったが、イシュははっきりと覚えていた。いや、思い出したとか言ってたねぇ」
「それはどういう……?」
「まぁそれはさておき……ディアの子供、名前を……それはまぁいいか。だがその子供とイシュが戦ったそうなんだ。――しかも子供の方が優勢で善戦してたそうだ」
「さっき六歳とか言ってなかったか?そんなガキとイシュが善戦?いやいや、どんだけ弱いんだよアイツ……」
「その子供は転生者だとイシュは言ってた。そして、その転生者をイシュから守る為に、何者かが乗り移ってイシュと戦ったそうな。その何者かはイシュの事を異界の神と呼んだ……これの意味がアンタに分かるかい?」
「イシュが異界の神なら、アタシらも異界の神って事になる。だが、アタシらは異界の神じゃない。高位高次元生命体だ」
「あぁ、そうさね。この箱庭の中にいる高位高次元生命体は他の高位高次元生命体に遭遇してもそんな言い方はしない。だがソイツは神々の遊びを終わらせる為に転生者を連れて来たとも言ったそうさね」
「そうなると、その何者かは箱庭の外の存在で、そのガキの中身も同様ってコト……か?」
「そうなるねぇ……。だがそうすると、その何者かは創造神と同格ってコトにもなる。創造神と同格の存在が、他の神が作った箱庭に干渉するなんてコトが起こり得るのかって話しだが、そんなコトを議論してもそれこそどうしようもない」
「ん?そうしたら、まさか……」
「気付いたようだね。ディアが行った二つの権能。だが実際はディアが行ったワケじゃあなくて……」
「それこそ異界の神とやらの仕業……ってコトか?」
「同じ異界の神かは分からないが……どちらにせよ異界の神とやらがディアと何かしらの契約を結び、その為にディアは魂を集める事になった……ってのがオチなのかもねぇ」
「それだと話しに整合性が付くが、ディアがヒト種じゃない理由にはならない気がするが……」
「まっ、今のところ分かったのはそんなところさね。だけどねぇ……ディアが前に言った自分の種族はディア■■だが、さっきの話しを聞いた後じゃ、異界の神とやらがディアをヒト種から変えたって可能性しか見えて来なくなる」
「世界を渡り、時を超え、種族を変える……確かに高位高次元生命体らじゃ出来ない権能だ。ところでディア■■って何なんだ?そのなんとかの部分……」
「上手く聞き取れないのさね。ディアはちゃんと発音してるらしいんだが……。ディアが帰って来たらアンタも一回聞いてみるかい?」
「おかみさんが上手く聞き取れないのを、アタシがちゃんと聞けるかは分からないよ」
「でもま、ディアと契約書を交わさなかったのは結果オーライってヤツだったのかもねぇ」
「えっ?まさかディアって、口約束なの?アタシより自由度高かったんだ……」
「まぁ、アンタと折を見て話そうと思ってたのはそんなところさね」
「あぁ、分かったよおかみさん。だけど、ディアの事はこれからどうするつもりなんだ?」
「どうもこうも、アンタもディアも、新しく入った二人も、みんなここの従業員さね。それ以上もそれ以下もない。だからエレ……アンタには因縁があるからこそ仲良くしろとは言わないが、因縁があろうとなかろうと、争いは御法度だよ。そこんところちゃあんと弁えておくれよ?」
「あぁ……」
斯くして二人の話し合いは幕を下ろした。特に最後の部分だけは納得がいっていない顔をしていたエレだったが、「おかみ」からすればそんな事は織り込み済みだ。言質が取れればそれはエレに対しての楔になる。
「おかみ」は「魔の酒場亭」の主人であり、店を畳む気など毛頭無い。故に詰まらない争いによって全てをご破算にされるのだけは勘弁……それを前以って楔という手段で摘めるのならばそれが最善策となる。
故にディアの謎が少しは解け、エレに対しても楔を打てた事を考えれば、それだけで気分は上々……とまではいかないながらも、後顧の憂いを断つ事には成功し満足気な表情でフロアの天井を見詰めていた。
どうやら2階ではまだイシュが暴れているようだ。「おかみ」はその音を聞きながら「イシュとアマテラの宿代を考えるとバカにならないから、魔の酒場亭に住まわせてみるかねぇ?」と今度は別の事に頭を悩ませようとしていた……。
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エレと「おかみ」が頭を捻り、解答を導き出そうとしてるその頃、当事者は――
「いやーーーーーんでちッ!ランデスくんさま素敵ーーーーーッ!きゃは♡きゃはは♡」
超ハイテンションなヘスティのノリについていけず、無言でランデスを駆り、無心で目的地に向けて爆走し、無事に帰れる事をただただ祈っていたのだった――




