ep47 品格(Abusive language)
ここはライラ大陸にある、カイセル共和国のとある町……だった場所――
エンとイシュはその当時、この町に流れ着くなり町の住人を全て虐殺し、報を受けて侵略者を討伐に来た冒険者を葬った。何回も何回も丁寧にそれを繰り返し、押し寄せた数千人規模のカイセル共和国軍も全て消し去った。拠ってこの町は事実上カイセル共和国から「見捨てられた町」とされ、大陸勢力図から消された過去がある。
この町は“イシュエン”による……「完全なる実効支配によって占拠された町」とも言えるだろう。
そんなこの町に現在人口は三名。人口と言っても、その中に「人間」に区分される生命はおらず、いるのは高位高次元生命体のみである。そしてその三人は、町の中心にある時計塔を本拠にしていた――
「まだ、諦めないのでありんすか?」
「ッたりめーだろ、このアバズレ女郎」
「まったく、イチゴウセンパイは品がありんせんねぇ……。妾は誰彼構わずに股を開く事はありんせん。しかし、エン様には逆らえません故、悦んで開くだけでありんすぇ」
「ド変態アバズレ女郎だな。……くッ、ぐあぁぁぁぁッ」
エンの首輪にイシュが囚われてから四日が経った。その間、イシュは激しく抵抗し続けている。ニゴウはイシュの監視役として置かれているが、事あるごとにイシュに対してちょっかいを出し、その度に罵詈雑言を浴びせられていた。更にはその都度、変なあだ名が付け足されていくが、ニゴウは恍惚の表情でそれらを受け入れていった。
しかし、じわじわと身体と精神を蝕む首輪によってイシュは悲鳴を上げ絶叫し、イシュの権能は少しずつ失われていく。その結果、イシュが望むままに変質させていた依り代の身体すら、原型へと戻りつつあった……。
「イチゴウセンパイはもう、変質させた身体を維持出来ないのでありんしょう?ほら……センパイの依り代はこんな、はしたないカラダ。さぞかし、男を誑かして快楽を貪っていたのでありんしょうねぇ。……だから、清純なセンパイは身体を弄って痕跡を消してたんでしょうが……あ……れ?そうしたら、なんでそんな変態なカラダを依り代にしたんでありんしょう?そうか、イチゴウセンパイも、妾と同じ「ド変態」だからでしんしょうかねぇ?」
「はぁ……はぁ……はぁ……ソフィアの事を……悪く言うんじゃねぇッ!ド変態アバズレ売女女郎!」
「あぁ、怖い怖い。これだから、猛犬狂犬には、エン様の首輪が必要でありんすね」
首輪によって拘束され、自身の魔力も権能も自由に使えないイシュにとって、ニゴウから繰り広げられる精神汚染はどんな拷問よりも辛辣だった。
しかし、それのお陰で完全に自我を失う事なく、内に秘める「憤怒」を増加させる事には成功していたと言える。
「イシュはどんな感じだい、ニゴウ。そろそろ仕上がったかな?」
――ギリッ
キッ――
「あらら……まだだったかぁ……。その反抗的な目を早く蕩けさせてワタシの従順な下僕になってくんないと、アーレに侵攻出来ないじゃないか。あそこで、ティアもエレちゃんも待ってるんだから、早く淫靡ではしたない芸をお披露目してあげないと。喜んでくれないよ?」
「こ……の糞飼い主。あたしを姉貴への見世物にするつもり……かはッ」
「なぁに感動の再会だろぅ?「はしたなくなったイシュの、あられもない姿を見て下さい、お姉ちゃん」とでも可愛らしく言ってもらおうかな?どうせならエレちゃんも首輪を付けてワタシの下僕にして、どっか他の国で人間のオス達の欲求を満たす為の人形にするのも悪くないなぁ。「男なんて要らない」って言ってたエレちゃんがどんな風にヨガって乱れて哭くのか、今から楽しみだねぇ」
エンはイシュの崩壊を助長するべく、更に多方面から汚染を施していく。塔の壁に手足を鎖で縫い付けられ身動きが出来ないイシュの、首輪の鎖を無理やり引っ張り、その眼前でニヤニヤとした下衆で不快な顔を見せ付けている。
――ペッ
びちゃッ――
「誰がやるか、変態糞飼い主。それに気色悪い顔を近付けんなッ!」
「この獰猛な飼い犬はまだまだ元気なようだ……。もうちょっと首輪の出力を上げて……いや、もういいや。イシュの自我を早々に壊すとしよう」
――シュッ
「ギィッ……ぎゃぎゃぎゃがあぁぁぁぁぁぁ、だだだだだぐわあッあっあっあっああぁぁぁぁぁぁぁ」
「バイバイ、イシュ。今まで、それなりに楽しかったよ。従順な下僕になって、ワタシの事を忘れちゃっても、今より使い物にならなくても、ちゃんと擦り減って擦り切れて、欠片も全てキレイに失くなるまで使い潰してあげるから、安心して自我だけは逝きなねぇ。あははッ。――ニゴウ、イシュが完全に堕ちたら侵攻を開始する。準備はちゃあんとしておいてね」
「わんッ!わんわんッ!へっへっへッ!!」
その二日後にイシュは堕ちた。堕ちる直前に「憤怒」を暴走させたがエンに届かせる事は出来ず……斯くして流れ落ちる涙と共に自我を失ったのである――




