ep298 ピーキー(Yuru-yuru Filter)
――豚骨はノーブス・アリディフォリアの「龍人ブレス」から白湯を守るように、その前に飛び出していった――
しかしこれは、妹を守る為に豚骨が盾になったというワケではない。
これは二人の確立された戦闘スタイルなのだ。
白湯の種族は毒鶏蛇種であり、俊敏性が高いそのステータス的特徴と、「専用装備」の特性から攻撃特化型の戦闘スタイルになっている。
拠って、防御は完全に捨て元々の速度の高さから回避に重きを置いている。
※白湯は「専用装備」のバフのみで防御力を確保しているに過ぎないが、「紙装甲」と呼ばれる程に防御力は薄くない。逆に攻撃力は「ロマン砲」並にピーキーである
世の中には「痛いのは嫌なので防御に極振りしてみた」的な、敵への攻撃に一切活用出来ないピーキー性能に限らず(但し盾役としては非常に優秀)、攻撃全振りや素早さ全振りといった様々なピーキーステ振りも見受けられるようだが、実際はどうなんだろうね?
そこらへん界隈のネタはよく知らんのだけど……。
※まぁそもそも、この箱庭内ではそのようなステ振りは個人の意思で出来るモノではない
そんな事は置いといて、攻撃特化の白湯に対して、豚骨はどちらかというと万能型に近い。武器の性能が近距離〜中距離対応しているのを筆頭に、(強くなり過ぎた事で普段はあまり使わなくなったが)左腕には「専用装備」の盾を装備している。更には火属性の魔術まで使える。
拠って、ノーブス・アリディフォリアの「龍人ブレス」から自身及び白湯を守り切る算段があったと言えるだろう。
実際に、この二人が強敵と戦う際には豚骨は盾役として振る舞う事が多い。よってこれは、これまでの二人旅に於ける経験則から得られた戦闘スタイルと言える。
ただ「屈指」となった二人と互角以上に戦える猛者は、早々お目に掛かれるモノではない。故に簡単に敵が倒れてしまう事から、二人はより強い者を求めていた……という事に繋がるのである。
――ぼわぁぁぁぁぁぁぁッ
しゅばぁんッ――
「あっついなぁ、もうッ!」
「――ッ?!」
火属性魔術を扱える豚骨は火耐性もそれなりに高い。そして、左腕に装備している盾の効果も合わさり、「あっついなぁ」程度の感想で終わらせているが、本来であれば皮膚は焼け爛れ、肺は伸縮を止める程の熱量がそこにはある。
これは偏に「天然系天然娘フィルター」を介しているからこそ、緩過ぎる感じになっているに過ぎないし、豚骨の性能の高さ故にほぼノーダメージになっているだけだ。
しかし、「絶対必殺」とも言える自分の奥の手とも言える「龍人ブレス」が防がれた事で、ノーブス・アリディフォリアは驚きを隠せていない。拠って、そこには大きなギャップがあるとしか言えないだろう。
場面的に見れば、劇画調のシリアスな絵面と、ほのぼの日常系ギャグが同居しているようなギャップと言えるかもしれない――
「キぃえぇぇぇぇぇぇッ!斧刃穿脚ッ!斧刃旋風脚ッ!!」
――ドッがががががッ
ピシっピシピシッ――
「ドドド、ドコカラ、キキキ、キタ、アアア、アンノウデガ」
それはノーブス・アリディフォリアの頭上から降ってきた一撃であり、ノーブス・アリディフォリアの外骨格である「ジェネラルエクソスカル」に対して少なからずダメージを負わせる事に成功した。
更に白湯は追撃の脚撃を加え、ノーブス・アリディフォリアの鎌にもヒビを入れてみせたのである。
ちなみに「旋風脚」だが、「竜巻」は付かない。よって白湯、掌から波動を飛ばしたり、上昇中無敵パンチを出したりは出来ない。まぁ、「脚撃」によって残像を出し百本くらいの脚で蹴っているようなワザは出来る可能性はあるが、それを喰らった敵は「あべし」とか「たわば」とか叫びながら破裂……ん?なんか色々と混じってしまった気がしなくもないので、それはそれ。これはこれ。
便利な言葉さ、それはそれ。これはこれ。
げふんげふん。まぁいずれ、自分がそんな奇声を上げて爆散しない事を願っている。
白湯は「龍人ブレス」を豚骨が受けるにあたり、自身はその腕の翼をはためかせて上空へと駆け上り、ノーブス・アリディフォリアの死角から奇襲を仕掛けたに過ぎない。
ちなみに、今まではあまり触れて来ていないが、白湯の腕には「鶏の翼」が生えている。その翼が、「鶏の翼」故に空を飛ぶだけの能力はないが、翼をはためかせる事で自身のジャンプ力を数倍に跳ね上げる事が出来る。
※腕から直接、翼が生えているために羽ばたく事は出来ない
だが、そこまでの攻撃をしても尚、ノーブス・アリディフォリアの「ジェネラルエクソスカル」や「マントデアシックル」にはダメージを与えられても本体へのダメージは疎か、部位破壊すら出来ていない事から、如何にこのノーブス・アリディフォリアが強敵であるかが窺い知れるというモノであろう。
よって、決定打に欠けるチームハラヘリは、少しずつ焦りの感情に支配されつつあったと言っても過言ではない――




