ep297 脚撃(Ma-ia-hii Ma-ia-huu)
「あのぉ、ヘスティさん?」
「ディアさま、どうしたのでちて?」
「わたしもちゃんと活躍してますよぉ?活躍してましたよ……ねぇ?」
「ディアさん、わっちに救いを求められても、困るのでありんすが……」
もうマイアはこの場にいない。状況的には小破ではあるものの意識喪失から脱した以上、戦えないワケではない。故に戦術ネットワークをランデスから返してもらい、自身は再び過酷な戦場へと舞い戻っていった。そしてその表情を窺い知り得たモノはこの中にはいない。
マイアは無言のまま「ひー」とも「ふー」とも「ほー」とも、「はぁは」とも何も発する事なく飛び去ったのである。勿論「のまのまいえぃ」などと言う事もない。
うん、意味が分からない。
げ、げふん。取り敢えず話しを戻すと、ディアとしてはヘスティが自分の名前を挙げてくれなかったコトに納得がいかなかった様子で、アネサに同情と共感を求めたようだ。
……が、アネサはアネサで、過去にこのエルメキアを滅ぼしたのが「無機生命体」であった事から、マイアに対して同情する事は出来ず、複雑な気持ちであった事に変わりはない。だが、その事を敢えてマイアに話す必要性を感じてもいない。
故に複雑な気持ちを抱いたまま、今に至る。
従って、ディアから救いを求められても、困る素振りを見せるだけで、助け舟を出す事も、共感する事もない。
そして、ディアからクレームの入ったヘスティは聞いていない様子で、ただただ遠い目をしていた。これは偏に、前にディアから受けた意趣返しの可能性が残されたワケだが、それはそれ。これはこれ……としておこう。
女の戦いというか、なんというか、まぁ、複雑な心理戦……いやそれはなんか違う。なんと言えば的確か分かり兼ねるが、なんとも形容し難い戦いがここにもあったというコトだ。
うん、女性とは得てして理解が出来ない生き物と言えるかもしれない――
※異論は認めさせて頂きます。また、その場合はスライディング土下座しますので、勘弁して下さい。ははぁ……
では、本題に戻るとしよう。
_____
――ガキンッ
じゃらららッ
シャシャシャッ
たたたんたたッ――
「ちィッ!きあぁぁぁぁぁッ!蹬挿脚、分擺脚ッ!」
――がががッ
「コココ、コイツラ、ツツツ、ツヨイ」
豚骨は白湯と共闘するにあたり、ウォーハンマーからモーニングスターへと武器を切り替えている。豚骨のモーニングスターは「スティング」と発する事でその左手の五指から鎖が一本生える。この鎖は伸縮自在であり、「スティング」の回数で最大五本まで増やせる。
鎖の先頭にはトゲトゲの付いた鉄球があり、直撃すればそのトゲトゲが獲物に食い込み対象を簡単に破壊する。
※鎖一本につき一つの鉄球ではなく、鎖が五本に増えても鉄球は一つのままである。但し、鎖が増えれば増える程、鉄球は直線的な動きから複雑怪奇な動きへと変化し、回避は困難になる。その為、ノーブス・アリディフォリアは躱せず捕らえられ、この場に強制的に連れて来られたというのがタネ明かしとなる
※指から鎖が生え、その先に鉄球が付いている武器を「モーニングスター」と呼称するか否かの論争は却下とする
一方の白湯は武器を装備出来ない特性を持っている。そして魔術の適性も持ち合わせていない。故に攻撃は全てに於いて「無手」となる。しかし毒鶏蛇種である事からその「四つ目」の「死角無し」の特性を活かし、筋力で劣る「腕撃」よりも、より威力のある「脚撃」を攻撃主体としている。
更にその「脚撃」のみで「屈指」となった所以は、白湯が履いている「下駄」にこそある。
この「下駄」は「専用装備」であり、それ故にこの「下駄」にもありとあらゆるバフが掛かっている。豚骨は二振りの「ハンマー」に攻撃系のバフが振り分けられているが、白湯の攻撃系のバフは「下駄」のみに宿る。故に「下駄」であっても純粋な攻撃力は豚骨が持つどちらの「ハンマー」よりも強い事になる。
豚骨のモーニングスターが自在に動く事で、ノーブス・アリディフォリアの両鎌の斬撃を未然に防ぎ、死角の無い白湯が敵の死角から「脚撃」を繰り出すコンビネーションアタック。
一対多数の戦いでは背中合わせの流麗な無双乱舞の渦中にいた二人だが、一対一の戦いでは千変万化の自在攻撃によって獲物を追い詰める。それこそが二人を「屈指」足らしめている強者たる所以と言えるだろう。
「オオオ、オコッタ、モモモ、モヤシツクス、サササ、ササゲモノニシナイ」
――ボッ、ボボボーボ、ボーボボッ
ぼわぁぁぁぁぁぁぁ――
「ぱいたん、下がって」
先ず、貴方は何も見なかった。いいね?(にっこり)
げふんげふん。それはノーブス・アリディフォリアが“ゼロ”距離から放った「龍人ブレス」である。マイアを一撃で意識喪失に至らしめた高火力超高温の焔撃たるや、有機生命体では本来ならば一溜まりもない。
だからこそ豚骨は白湯を下がらせ、自身が白湯の「盾」となったのである――




