第05話 「お前はさらなる頂きに登り詰めるが良い!!」
※この作品にBL要素はありませんm(_ _)m
『殺死愛夢』なんて物々しい名前がついていた割に、イマイチ盛り上がりに欠けた――来賓者、保護者席の方は十分騒がしかったんだけどさ。
「ていうか、いったいアレに何の意味があったんだ?」
「えっと、そのあたりは入試の問題でも出てたと思うんだけど……。
あれ? もしかして柏木くんって推薦枠の人だったの?
ははっ、葛葉くんとか仁王院くん、安倍さんみたいな雰囲気じゃなかったから普通に平民だと思ってたよ」
葛葉――はお公家さんで、仁王院がデ○ルマンは良いとして安倍さんって……ああ! あのスイカップ「柏木くん、どうしてあなたは両手をワキワキさせてるのかしら?」……ハイカラさんな女の子な!
「まぁ俺自身は平民も平民だから」
仮に俺が貴族だったとしても『ああ』はなってないと思うけど。
「もしかして久堂もお貴族様だったりするのか?」
「いやいや、うちはそこまで古い家柄じゃないから。
一応士爵家ではあるけど、貴族の集まりに呼ばれるような身分ではないよ?」
少し話がそれてしまったが、話は戻って殺死愛夢。
その歴史は古く、『迷宮科』の前身組織である『迷宮浪士組・幼年学校』時代の新入隊員の力試しが由来らしい。
「まぁ『殺死愛夢』なんて名前になったのは十年ほど前。
鷹司家の葛さん――もちろん彼女のことは知ってるよね?」
「知ってるどころか俺の隣(の家)で寝てるぞ?」
どうらやカズラさんが「『力試しの儀』とか呼び方が古臭いよね!」と、勝手に呼び方を変えたのを面白がって(忖度して)採用されたらしい。
「今回の『アレ』は各クラスの上位者を適当に代表にしてのお披露目。
完全にお遊びだったけど、9月には桜凛学園迷宮科の生徒全員による選抜会。
11月には全国大会もあるんだよ?」
「ほーん」
まぁ俺には関係のなさそうな話だからどうでもいいな!
教室に戻れば後は帰るだけ――かと思えばそういうわけでもなく。
「みんなが本格的に活動出来るのは早くても5月……下手をすれば夏休み明けからになっちゃうと思うけど。
名目上の一緒に行動する人たちで数人の班、『パーティ(仮)』を作っておいて欲しいんだけどいいかな?」
「フッ……もしも柏木くんが居なければ致命傷を負ってしまうところだったわね……」
担任の一言で始まるパーティメンバー争奪戦が始まる。
てか明石さんも俺も、すでに協調性のないところを見られてるから話しかけてくる人なんて誰も居ないと思ってたんだけど――
「柏木くん、当然僕もパーティに入れてくれるよね?」
「ん? 別に構わないけど俺も明石さんもほとんど学校には来ないぞ?」
「どうしてさ!?」
いや、どうしてもこうしても最初から『そういう約束(ダンジョンに籠もる)』で迷宮科に入ったようなものだし。
「ああ……確かにそういう人たちも年に何人かはいるみたいだよね……。
って、それならそれで、そこに僕も混ぜてくれればいいじゃないか!」
「ん? 別に構わないけど俺も明石さんも連絡手段は手紙か電報しかないぞ?」
「君たちは本当に現代人なのかな!?」
だってこっちに帰ってきてから今まで必要性を感じなかったし。
顔を引き攣らせている久堂の後ろ。
次に近づいてきたのは濃い顔の男。
というか、保健室帰りの仁王院だな。
……ていうかこいつ、顔を真っ赤にしてる上に妙に挙動不審なんだけど?
「かっ、柏木!!」
「おう、怪我はもういいのか? ていうかどうした?」
「お、お、お、お……」
……大丈夫かこいつ?
力みすぎて今にも血管が切れそうになってるんだけど?
「俺の……俺の物に……俺の男になれ……っ!!!」
「担任!?
教室内に不審人物が居ます!!
早急に通報してください!!」
「柏木くん、認めたくないのは分からないでもありませんが、それはあなたの同級生です」
「いや、違う!! そういうことじゃない!!
俺が言いたいのは、伝える言葉は……そうだ!!
俺がお前のことを男にしてやる……っ!!」
「言ってることがさっきより悪化してるじゃねぇか!!」
もしかして廊下に投げ出された時、頭部に深刻なダメージでも受けたのか!?
ていうか担任! 腹を抱えて笑ってないでこの不器用なゴリラをどうにかしろよ!!
久堂! お前も笑い過ぎで呼吸困難起こしてメスイキしたショタみたいな顔になってるからな!?
「なぁ……俺は……仁王院鳳凰はこんな気持になったのは初めてなんだ!!
もしこれでお前が受け入れてくれねぇとなったら……なったら……」
ぶつぶつと呟きながらすり足でこちらに近寄ってくる仁王院。
なんなの!?
どうして目からハイライトが消えてるの!?
男のヤンデレとかどこ需要なんだよ!!
「仁王院……確かにお前は強い」
「ふざけるな!! たった一度拳を合わせただけで吹き飛ばされてしまったこの俺の!! いったいどこが強いと言うのか!?!?」
いやお前、拳を合わせるどころか腹トンで吹っ飛んでいったよな?
ていうかそもそもお前をヤッたのって俺じゃなくて明石さんだよな?
「仁王院! 話は最後まで聞けっ!
そう、お前は強い、それは間違いのない事実だ!
……だがしかし! 今の俺は、そんなお前よりもっと強い!!」
「どうして……それは一体何故だ!?
俺の惚れたお前が認める最強の漢っ!!!
そんな仁王院鳳凰が負けたっ!! これはいったいどうしてなのだっ!!」
背筋が凍りそうになるから惚れてとか言うの止めろや!
あと、最強だとか一言もいってねぇわ!
「仁王院。
それはすべて……お前のその奢り、高ぶった心のせいだ!
お前は強い! おそらく、これまでお前が出会ったであろう誰よりも強かっただろう!!」
たぶん今まで乳母日傘のあんよが上手で育てられてきただろうしな。
「奢り……高ぶり……」
目を見開き、その場で膝をつく仁王院。
「そうだ仁王院。
お前が慢心して立ち止まっている時間っ!
俺も、そして明石さんもすでにダンジョンにもぐってたんだよ!
そこで死闘を繰り返していたんだよ!
……そんな俺達に、お前が勝てる道理があると思うか?」
「なっ!? ダンジョン!? お前らはもう魔物を倒していたというのか!?
かっ……かっかっかっ!!! なるほど……なるほどな!!
柏木……かしわぎぃぃぃっ!!
確かにそうだ!! その通りだ!!
慢心っ! 奢り! この仁王院鳳凰っ!! 己の力を知り尽くすあまり己等のように努力することを忘れていたわぁぁぁぁっ!!」
「そうだ仁王院!!
……なら、これからお前がやるべきことは……言わずともわかるな?」
「ああ!! もちろん!! もちろんだ柏木っ!!
我が目指すのは最強!!
良いだろう、すぐにでも己等に追いついて見せようではないか!!」
「そうだ、そうだ仁王院!
だがな仁王院っ! ……俺だっていつまでもこのまま立ち止まりはしないからな?」
「ああ……ああそうだ! そうだろうとも!!
かっかっかっかっ!
俺のことなど待つ必要など無い!!
お前はさらなる頂きに登り詰めるが良い!!
……だが、必ず! 俺もそこにたどり着いてやるかならな!!」
「そうだ! それでこそお前だ仁王院!!
これからはそこの久堂と二人!
研鑽を重ねながら俺の後ろを……いつかは俺の前を走るが良い!!」
「えっ? どうして君は僕のことを巻き込んだのかな!?!?」
「……なんだろう、いい話風にまとめた感出してるけど、ビックリするほど中身のない話だったよね?
最後は久堂くんに押し付けてたし」
「文句があるなら担任に回しますが?」




