第05話 「遠慮なく一撃コ゚バァァァァァ!?!?!?!?」
デ○ルマンのくせにアシュ○マンのような笑い方をする仁王……なんにしても全員顔が濃いな。
担任に命令して机と椅子を下げさせ、教室の前半分にスペースを作らせたからいったい何をするのかと思えば――
「柏木くん。あの指名手配顔の漢、いきなり服を脱ぎだしたのだけれど?」
なぜか上半身裸になって筋肉を誇示するようにポージングを始め。
えっ? なにこいつ……普通にドン引きなんだけど?
顔を引き攣らせる俺を見て、何を思ったのかまた笑い出す半裸の男。
「そうだ! 俺がお前に求めていたのはその顔だ!!」
かっかっかっかっ!!
どうだ? (俺の筋肉美に)驚いただろう?」
「おっ、おう。
確かに(いきなりの変態行為に)ビックリしたわ」
「ほら、早くお前も脱がんか!!」
「なんで!?」
この悪魔で阿修羅で仁王で鳳凰な筋肉はゲ○なの!?
なんか両手を羽のように動かしながらその場で回りだしたんだけど?
「久堂、あいつの奇行の説明をしてくれ」
「どうして君は僕にそれが分かると思ったのさ!?」
「お前にそれが分かるかどうかなんてどうでもいいんだよ。
ただ部外者ヅラしたイケメンを巻き込みたかっただけだから」
「君はイケメンに恨みでもあるのかな!?」
「おっ、やるか?
俺にはヤバい『バック』が付いてるんだぞ?」
「確かに君の『バック』っていうか『後ろ』でヤバい人が踊ってるけどさ!!」
てことで(?)、結局『変態』が何をやりたかったのかといえば『力比べ』。
少し前に中務さんと明石さんがやってたレッサーパンダの威嚇ポーズの押し合いへし合いである。
……いや、あったらしいのだが。
「ふん、お前のようなナヨナヨとした男に力で勝ったところで何の意味もない。
……そうだな、さっきの女! お前にこの俺の腹筋に触れられるという栄誉を与えてやろうではないか!
俺はこの場から一歩も動かんし反撃をするようなこともせん!
遠慮なく一撃コ゚バァァァァァ!?!?!?!?」
そうのたまう仁王院の腹を『トン』と軽く小突いた明石さんと、動かないどころか廊下側の窓を巻き込んで吹っ飛んでいく半裸の変態。
「いや、せめて話くらいは最後まで聞いてやろうよ」
「だって、あまりにも気持ち悪かったのだもの」
「明石さん!? 先生、さすがにアレはやりすぎだと思うんだけど!?
ほら、仁王院くんが廊下で血まみれになってるわよ!?」
そりゃ(上半身ハダカで窓ガラスに突っ込んで行けば)そう(血まみれにもなるだろう)よ。
……さすがに死ぬことはないと思うけど、一応ポーションくらいはかけておいてやるか。
まぁそんな、俺達とは違う『世界線(昭和の少年漫画雑誌)』の住人である仁王院のことはおいといて。
「おいといちゃ駄目だからね!?
あのまま放置はさすがに大問題になるわよ!?
誰か! 保健室から担架借りてきてっ!!
うう……入学早々この騒ぎとかどうなってるのよ……」
……おいといて。
一名保健室送り、二名付き添いで三人の脱落者を出しながらも俺たち1-Aメンバーがたどり着いたのは『迷宮科練兵場』。
まぁ見物席の付いたサッカーコートくらいの広さの運動場だな。
「ということで、仁王院くんが負傷、退場してしまいましたので、うちのクラスの代表は明石さんと柏木くんの二名で」
「嫌よ」
「あれだけごねておいて嫌ってなに!?」
「そもそも私は『柏木くん以外パートナーとして認めない』とは言ったけれど、おかしなお遊戯会に参加するとは言っていないわよ?」
「えー……クラスメイトを血祭りにあげておいていまさらそんな……。
か、柏木くんは出てくれるわよね?」
「頑張れよ柏木!」
「だから僕は久堂だよっ!!」
最終的にうちのクラス代表に選ばれたのは『久堂』と『葛葉(お公家さん)』。
「他のクラスの地味な顔面の連中と比べたらその存在感だけで間違いなく優勝だな」
「あなたと明石さんが出てくれれば余裕で優勝、私の評価だってうなぎのぼりなのに……」
などとほざきながらこちらをジト目で見る担任の隣に座り、競技の開始を今か今かと待ち構える俺。
だって……殺死愛夢だよ?
そんなの、参加するより見るほうが絶対に面白いやつじゃん!!
……まぁやってたことはただの『武器無制限武道会』だったわけだが。
「いや、そこは殺し合えよ!!」
「柏木くん、さすがに学校でそんなことさせるわけないでしょう」
ならややこしい名前を付けるなと……。
ていうか、試合自体もトーナメントとかじゃなくて最下位クラスからの勝ち上がり戦というAクラスにすさまじい忖度をした内容だったし。
もちろん頑張って勝利を掴んだ久堂たちに罪は無いので、
「チッ、いけすかねぇイケメンの顔面がボコボコになるのをワクワクしながら見てたのに時間の無駄だったじゃねぇか!(クラス代表としてよくやってくれたな!)」
「君、人に代表を押し付けておいてその物言いはどうかと思うけどね!?」
笑顔で出迎えてやった。
~こちらは保健室で目を覚ました仁王院~
「はっ!? 俺はどうしてこんなところに……」
「確か明石とかいうおもしれぇ女と教室で向かい合っていたはずだが……」
「この胸(※殴られた腹)の痛みはなんだ……」
「これは……もしかして恋……」
「かっ、かっかっかっ!!
この仁王院鳳凰が女に惚れたというのか!!」
「……いや待て。
そもそも俺が相手をするはずだったのは柏木とかいうよくわからねぇ野郎だったはず」
「……つまり……何か?
俺は男に、あんな筋肉もない男に惚れたのか!?」
ふっとばされたショックでちょっとおかしなことになっていた。




