第03話 「重ければ重いほど愛情と安心を感じられるから、自傷しないヤンデレまでなら大歓迎なんだけどな」
「ねぇねぇお兄ちゃんお兄ちゃん」
「いい加減にその呼び方どうにかなりませんかね?
あと、何なんですかそのおかしな動きは?」
「どう考えてもセクシーなダンスでしょうが!?
……コホン。
お兄ちゃんはカズが昨日だけでいくらお兄ちゃんに貢いだか知ってる?」
「いや、買い物をしてもらっただけで、貢いでもらった記憶は一切無いんですけどね?」
「35億」
「……」
「……」
だから何なんだよっ!!
* * *
……ということで、やたらと朝からウザ絡みしてくるカズラさんのことはさておき。
「さすがにカズラさんも年齢的にお疲れでしょうし」
「その『年齢的に』というのはどういう意味なのかな? かな?」
「えっ? もしかして自分で気づいてないんですか?」
「柏木さん、その攻撃は私にも効きますので……」
「なおショウコさんは俺の妖精さんなので除外します」
「ふふっ、なら大丈夫ですね!」
「いったい何が大丈夫なのよ……」
「いやほら、昨日カズラさんの先導で7層まで到着したじゃないですか?
そこのC区画――最後に出てきた兵隊蟻を鑑定したら『レベル:11』、『戦闘力:115』もあったんですよ」
「でもお兄ちゃんもナニガシちゃんも苦戦するような相手じゃないでしょう?」
「確かに今の俺と明石さんでも、1人で3匹くらいなら問題なくさばけるんですけどね? でもそれが10匹、20匹に囲まれてしまえば対応しきれるか不安でして。
その時のための対抗手段といいますか、範囲殲滅手段を手に入れておきたいかなと」
「そんなものがあるの!?」
「あるも何も、カズラさんだって魔法は使えるようになりましたよね?」
俺も明石さんも、今使える攻撃魔法(?)は【破魔】だけ。
効果がある魔物はアンデッド――もしかするとデビル、デーモン系統にも使えるかもしれないけど、他の魔物には目眩まし程度の役にしか立たない。
「昨日、カズラさんに渡した剣のエンチャント、雷撃が発動した時に思ったんですよ。そろそろちゃんとした攻撃魔法が欲しいなぁと」
「……それはカズにも回してもらえるということでよろしいか?」
「そのへんの商談は中務さんとお願いします」
「どうしてお兄ちゃんはこんなに可愛い妹にそんな意地悪を言うのかな!?」
そもそも妹じゃないからだと思うよ?
「てことで、まことに勝手ではございますが今日からしばらくの間カズラさんはお休み――」
「いやっ! カズもいっぱい暴れたいのっ!
だから……お兄ちゃんに見返りなんて求めないから一緒にイカせてっ!」
「野蛮人乙」
まぁ一緒に来てくれるなら俺と明石さんのレベルアップも早くなるし、それならそれでカズラさん自身の経験値ももったいないので、【見習い冒険者】と【中堅冒険者】のスクロールを
「カズラ、代金の入金が確認できるまで商品は渡せませんからね?」
「カズってショウコの従姉妹だよね?
そのうえ結構な大口の取引実績だってあるよね?
さすがにそれは信用がなさすぎじゃないかな!?」
なんだろう、いつもよりカズラさんへの当たりがキツイような?
そんな中務さんにはもちろん魔石の購入依頼。
「さすがに17億5千万円分の一型魔石となりますと、他所からも取り寄せる必要があるかもしれませんので……」
あるだけは用意するが、数日掛かるかもとのこと。
まぁ今すぐに……欲しいものではあるけど、無理を言ったからといってどうこうできるものじゃないから仕方ない。
普通なら卸値で大量の魔石を仕入れることすら出来ないモノだからね?
「いつもお手数をおかけします」
「ふふっ、あなたのためになるのなら何の苦にもなりませんので」
「柏木くん、ああいう重いオバサンはあとあと祟るわよ?」
「誰がオバサンですか!
重い女度でいえば、間違いなく小娘のほうが重いでしょうが!!」
「俺的には重ければ重いほど愛情と安心を感じられるから、自傷しないヤンデレまでなら大歓迎なんだけどな」
「お兄ちゃんもたいがい厄介な性格してるねぇ……」
と、そんな俺の恋愛観などどうでもいいとして。
蟻退治とはいっても、通常階層だとそれなりの人数の人たちが狩りをしてるので、俺達が向かうのは『真・第7層』。
出てくる魔物のレベルも少し上がり、偵察蟻で『11』、兵隊蟻だと『13』。
もちろんレベルが上がった分、少し強くなるが……素早くはあっても、速さだけなら間違いなく狼の方が機敏に動くし?
外殻も固くはあるが、それだってゴーレムを斬れる剣なら楽に斬ることも出来るし?
「それでも俺達が普段狩ってる1層の魔物――スライムやコボルトとは比べ物にならない強さだから。安全マージンを考えて、今日は別れないで狩ろうか?」
「それはつまり二人で愛の共同作業ということね?」
……間違いではないけど蟻退治に愛はないと思うよ?
「あっ、カズラさんは『豚蚯蚓』で」
「ミミズはいやぁぁぁぁぁぁ!!!」




