第06話 お前の頭の中ア○横ウニかよ!
昼間の他所様が大勢集まったパーティとは違い、晩餐に参加するのは鷹司家の身内と六条家の面々だけ。
六条家も鷹司家とは昔から親しいらしく、嫁入り婿入りも何度も繰り返されているとかでほとんど身内らしいけど。
「もっとこう……料亭っぽい感じというか、やんごとない雰囲気というか。
キンキンキラキラした和室で、御膳がずらーっと並んで三味線とか太鼓の音色をバックに、芸姑さんがお酌をしてくれるような食事会を想像してたんですけど」
「なんか色々勘違いしてるっていうか、料亭での食事とかお茶屋さんのお座敷での遊びが混ざってる部分があるけどそういう時もあるよ?」
あるんだ!?
「でもほら。お兄ちゃんの普段の食事を見てると、あんまり京風な料理は好きじゃないかなと思って」
「あー……確かに、うちでは肉の日が多いですもんね。
でも別に、これまで『本格的な日本料理!』って感じの和食を食べる機会が無かったってだけで、お出汁の効いた料理は普通に好きですよ?
臭いのキツイものとか、ヌルヌルしたものとか、腐ったものとか、魚卵系とか、あとは魚が嫌いってだけで」
「えっ!? そうだったんですか!?」
驚き顔のショウコさんと不思議顔のシズカさん、
「でもあなた、鯖の味噌煮とか鯛の天ぷらを美味しそうに食べてたわよね?」
「あー、魚が嫌いな理由の第一位が内臓で、第二位が小骨なんだよ……。
だから、丁寧に処理されてる料理なら普通に食べられるんだ」
「何その、やたら手のかかる子供みたいな理由」
呆れ顔のアテナと話を続ける。
「てかさ、和食に限らず創作料理全般!
やたらと『お前ら、ウニとかタラコ乗せてあったら喜ぶんだろ?』みたいなヤツ多くない?」
「君が何を言ってるのよくかわからないんだけど……」
「ほら、お前らは他人の言葉でしか料理の説明すらできないのか! みたいな?
語彙力の無いタレントがテレビでよく言ってるじゃん。
『あーこれ! 女子が好きそうー!』みたいな?
女性を小馬鹿にしてるとしか思えない、それなのにどうしてツイ○ェミが噛みつかないのか不思議なヤツ」
「そんな人、頻繁には見ないと思うけどね?
ていうか『ついふ○み』って何なのさ?」
あれ?
男は無条件で叩く!
幸せそうな女も叩く!
政権与党も叩く!
ママ、戦争の火種になってくる!
みたいな○○○○は……そういえばこっちの世界のマスコミって普通に理性的で、それなりにまともな存在だったな。
「まぁ……あれだ。
そんなやつらの戯言を真に受けてる料理人!
『お前の頭の中ア○横ウニかよ!』って言いたくなるような連中がいっぱいいるって話だよ」
「まとめると、君がウニとタラコが嫌いで、魚介類が好きな人たちに謂れのない偏見を持ってるヤベェ奴ってことでいい?」
「大体合ってるけど言い方っ!!」
――などというまったくどうでもいい話は置いといて。
のんびりとした雰囲気の、食事会での当たり障りのない会話。
その後の三者面談――見た目だけでは誰が年長者なのかさっぱりわからないお姉さんたち――各ご家庭のご両親や祖父母とのご挨拶も無事に終わり。
まぁまだ『婚約』のご挨拶を済ませただけだからね?
それでも何某氏がいろいろとやらかしてしまったせいで、ショウコさんのご両親だけは背水の陣というかなんというか。
崖っぷちに追い込まれて自○間際の殺人犯みたいな顔になってたけど。
あとは、やたらとこちらへの引っ越しを勧められたのと、(主にアヤカさんのお身内から)『孫(ひ孫)はいつになるのかしら?』と急かされたくらいだろうか。
「それにしても……ちょっと拍子抜けしましたね。
もっとこう、いろいろ質問とか詰問とかされるかと思ってたんですけど」
ホテルに戻り、ゆったりとソファにもたれかかりながら、膝枕しているシズカさんの髪を梳く俺。
「その辺りはねぇ。
ほら、カズもお兄ちゃんたちも『魔力適性持ち』だってある程度は知れ渡ってるし? 力ずくでどうこう出来るなんて考えるおバカは――そこまで多くないと思うよ?」
そんな彼女を少しだけ羨ましそうな目で見ているカズラさんの言葉を、
「そうですね。
そもそも鷹司にしても六条にしても、今でも十分に恩恵を得ておりますので。
下手に夕霧さんとの関係が拗れるような行動には出ないかと」
「取り引きの窓口も、薬品は硝子さん。装備品や素材は私ですので。
無理を言うとしても、私たちに相談するだけだと思えば……それなりに気楽なものでしょうし」
ショウコさんとアヤカさんが引き継ぐ。
今のところ蚊帳の外なアテナが所在なさげにしてるのがちょっと面白いと言うか可愛らしいと言うか。
確かに、よく知らない兄ちゃん相手じゃなく身内が全権を握ってる取り引きならそんなもの――なのかな?
面倒事なんて無いならそれに越したことはないからな?
これからもお貴族様相手の業務は全部二人に丸投げするとしよう。




