第04話 シンカンセンスゴクカタクテタカイアイス。
夏も真っ盛りの7月の終わり。
「もう! せっかくお兄ちゃんが50層攻略に乗り気になってきたのに!
管理局のつまらない行事で邪魔されるなんて!」
「レベルアップのために階層を進んではいますけど、50層まで潜るとは一言も言ってませんけどね?」
『国鉄』大阪駅から高速鉄道の指定席でぶつぶつと文句を言ってるのはカズラさん。
普段着より少しおめかしした俺達が向かっているのは『東京府』。
アヤカさんにお願いされた迷宮管理局主催の最年少20層制覇パーティ改め、30層制覇式典に出席するため全員で移動中なのである。
「といいますか夕霧さん、本当にうちの実家に挨拶にみえられるのですか?」
「もちろん!
と言いますかショウコさん、何やら浮かない顔になってますけど。
……もしかして俺と婚約するのが嫌になりました?」
「そんなことあるはずがないじゃないですかっ!!
そのですね、父に関しましてはごくごく普通の人間なのですが……うちの母が少々変わり者でして。
いえ、それでも両親に関しましてはそこまでの問題ではないんですけどね?」
「あー、そういえば中務にはあの男がいたわね」
誰だよあの男……。
それでなくても結婚の申し込みどころか彼女の両親に挨拶すらしたことないのに!
緊張でトイレが近くなりそうだから、意味ありげなこと言って俺のこと惑わすの止めて?
うん? お前、ちょっと前にシズカさんの家に挨拶に行っただろうって?
いや、あれはほら、プロポーズどころか引っ掛けるための小芝居だったし?
コケシの家でおばさんと話したこともあるけど、あれも友達の家に遊びに行ったって範疇だからノーカンで。
「身内の恥を晒すようでお恥ずかしいのですが……。
私には仲のあまりよろしくないといいますか、一方的に私のことを嫌っている弟がおりまして」
「嫌ってるっていうか、あいつよりショウコの方が全てにおいて優秀だったから嫉妬してただけなんだけどね?」
どうやら、自分がショウコさんに勝っている部分が何も無いからと、彼女の外見――金髪や青い目のことを、なにかに付けてチクチクチクチクとねちっこく言うくだらない人間らしい。
「といいますか、もしも俺の目の前でショウコさんにそんなことを言い出したら手が出るのを我慢できる気がしないんですけど?」
「カズも何度かシメたことがあるし?
別に殴っても問題ないと思うよ?」
「いや、さすがに彼女の家に挨拶に行って家族に暴力を振るうのは大問題――」
『おくつろぎ中のところ失礼いたします。
ワゴン販売のご案内です。
お飲み物にお弁当、アイスクリームはいかがでしょうか』
「アイスください! みんなも食べるよね? 一人5個で足りる?」
「僕は一個で十分なんだけど……」
「えっ? あんなちっちゃいのに?」
「あら、夕霧くんは小さいモノはいっぱい無いと満足できないのかしら?」
……それはアイスの話だよね?
もちろんこっちの世界の新幹線アイスも凄く硬かった。
こちらに戻って(?)きてからはほぼ家とダンジョンの往復しかしてない俺。
シズカさんやショウコさんとウメダやナンバに遊びに出たり、お世話になった先生――キクコさんの勤める病院にポーションを持って行ったりはしてるんだけどね?
なんだかんだで初めての遠出ということで、車窓から見える景色も物凄く新鮮に感じたり。
「といいますか、ダンジョンモールとかでもそうですけど。
カズラさんって有名人のわりに誰も声を掛けてきたりしませんよね?」
実は探索者ってあんまり人気が無い職業なのか?
いや、それならそれで写真集とか出てるのはおかしい……あっ!
「夕霧さん。普段の言動からついつい忘れてしまいそうになりますが、この子はこれでも侯爵令嬢ですので。
さすがに理由なく、気安く話しかけてくるような一般人はいないですよ?」
「ていうかお兄ちゃんのその何かを思いついたような、痛い子を見るような表情は一体どういうことなのかな? かな?」
「いや、自費出版で写真集を出すとかちょっと可哀想な子だったんだなって」
「そんなことしてないよ!?
そもそもカズの写真集なんて出すだけで50万部は確実に売れるんだからね!
初めてあった時、お兄ちゃんだってお金があれば買おうと思ったって言ってたよね?」
「あの時はほら、気の迷いと言うか鍛えられた腹筋に負けかけただけで。
中身がこんな感じだって知ってたら……ねぇ?」
「そろそろ不敬罪で訴えたら勝てると思うよ?」




