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第62話 決着は  ~今夜の俺の刀は血を見るまで収まらんぞ

いい気になって本日2話目の投稿です。


そろそろ話を考えるのが難しくなってきたなあ・・・・



では第62話どうぞ



「貴様あ!!!この正義の剣を受けろ!!!」


知矢に迫るマリエッタの剣!


未だその右手に持つ剣を構えようともしない知矢!


そんな知矢の事はお構無しに剣を振り降ろすマリエッタ!


カキーン!!カチャーン!!


周囲に響き渡る金属音!


回りで息を殺し勝負を見守っていた者達の息が止まる。




「この勝負トーヤ殿の勝ち!!」


勝敗を決する宣言がモンドールより下される。



観るとマリエッタの剣は足元の石畳に打ち付けられ柄の根本より折れ、その剣先は数メートル先に落ちていた。


知矢と言えば開始の合図時とほとんど変わらぬ姿勢、涼しい顔をして立っているだけである。


状況を見守っていたほとんどの者にはマリエッタが大振りに剣を上段から知矢へ打ち下ろしたが狙いを外し1人相撲(この世界に相撲は存在しない)の様にただ敷き詰められた石板を自ら叩き剣を折っただけのようにしか見えなかった。



「ま、待て!!おかしい今のは無しだ!!」

自ら折った剣と何でもない様に佇む知矢を見てマリエッタはすぐさま審判をしていたモンドールへ異議を唱えた。



「マリエッタ様、私は剣を失った場合は負けと宣言しましたよ。潔くありませんぞ」


と言い放ったモンドールであったが実は彼には知矢がマリエッタに剣を打ち下ろされる瞬間僅かに体をそらし避けた瞬間をやっとの思いで見極めたのである。


であるから瞬時に状況を見極め知矢の勝ちを宣言したのだった。



「いや、待てモンドール!これはおかしい」


「おかしくありませんぞ。そもそも先の街でトーヤ殿に斬りかかった折にも今と同様にその剣を躱されたあなたはバランスを崩し地面へ転がったのを覚えてらっしゃらないのですか。

つまりトーヤ殿はあなたの斬撃を二度、同じように躱したのです。あなたは全く前回躱されたことも生かせずただ力で剣をたたき込んだだけでした。

トーヤ殿が機会を与えてくださったことがまるで意味をなしていませんでしたな。」


と冷たく言い放ったのだ。



「かわしただと!私の剣を奴が、この平民の冒険者如きが躱せるわけがないであろう!


貴様!またあの時と同じく何かしらの魔法を使い小細工したのであろう!そうに決まっておる!このいつまでも卑怯な手を使いおって!」



「お前あれ見えたか?」

「いや全く、マリエッタ様の剣が撃ち込まれる、と思った瞬間石板を打ち据えていただけだ」

「マリエッタ様は魔法だと言うが?」

「何の魔法だよ、剣を躱す魔法って」

「いやしかしまったくあの冒険者は動く気配も無かったぞ」

「しかし団長は瞬間に体をさばいて躱したって」


回りで見ていた騎士団の者達が小声でぼそぼそと言い合う。


「皆の者静まれ!」モンドールの檄が飛ぶ。


みると主のアンコール伯爵が指定された闘技エリアの前まで進み出ていた。


それに気が付いた騎士たちは瞬時に静まり姿勢を正し注目する。



「マリエッタよ、其方は納得がいかない様であるな」と娘へと優しく尋ねるのであった。


「お父様、当然でございます。

この男は何やら技か魔法を使い私の剣をそらしたかまたは己の姿を歪め私に方向を見誤らせたに違いありません。

剣での勝負を誓っておきながらそのような卑劣な手を使うなど許す事は出来ません。」


とあくまでも納得できないマリエッタから視線をモンドールへ向けたアンコール。


モンドールは首を横に振り重ねてマリエッタの主張が間違っていることを示した。


「正直わしにはただマリエッタが1人石板を打ち据えたようにしか見えなかった。

だが真直で審判をしておったモンドールには見えていたのだ。それに異を挟むことこそ正義に反するのではないか。」



あくまでも諭すようにマリエッタに話すアンコールであった。



・・・正義に反するとまで言われ、モンドールの判定も覆らない状態でマリエッタは何も言う事が出来なくなり下を俯き歯を食いしばるのであった。



そんな時


「このバカ娘が納得できないならしょうがない、今のは無しにしてやろう。しかも次はお前の剣を避けず俺も剣で受けよう。ただし、今度は自分の剣を使う、真剣だ!どうだ」



と知矢は言うと借り物の模擬戦用に刃を丸めてある剣を近くにいた騎士へ渡し、伯爵の前のテーブルへ置いてあった自らの剣、”刀”を手にするのであった。



それを見ていたマリエッタは「望む所だ!剣を交えてこの私が貴様などに負けるわけもない!」


と折れた剣を放り他の騎士へ預けていた自らの豪奢な剣を受け取り鞘を払った。


その勢いで鞘を放り投げ再び闘技エリアに戻るマリエッタを見て



(※1)マリエッタ破れたり!! なんて言っても通じないか)と含み笑いを浮かべるのであった。



その知矢の笑いを馬鹿にされたと思ったマリエッタは

「貴様、真剣勝負を前に何だそのにやけた顔は!!又しても何か怪しい策を講じるつもりか!」


と激高する。


もうキリが無いと呆れる知矢は


「伯爵様よ、お宅のバカ娘が安心して決着を付けられるように何か俺が魔法を行使したかを判別できる様な魔道具とか魔法使いはいないか?」


と聞いてみるのだった。



「うむ、トーヤ殿の言う通りじゃな。これでは何度繰り返してもあやつは納得すまい。暫く待ってくれ」

と言うと控えていた執事へ何か伝えると「畏まりました」と一言答え走って館の方へ向かった。



暫し待つことになった知矢は一度仮に定められた闘技場を離れ自分のマジックバックから水筒を出すと喉を湿らすのであった。



傍でその様子を見ていたザイードは

(トーヤ様がかかわる出来事は大変興味深いですな。しかも伯爵さまといつの間にかに対等の様に話を出来る関係になるとは、今後も目が離せませんな)

と興味津々で見つめるのであった。


だが(しかしあのお嬢さんを奴隷にしてもなにも役に立ちそうにありませんね。当館へ売り渡されてもただ貴族の娘と言うだけで値が高くあれでは売れる事はないでしょう。ですがトーヤ様なら何か上手く御し得る腹積もりなのでしょうね)


とザイードに相変わらず評価されている知矢であった。



暫くすると執事に連れられた魔法使い然としたローブをまとい短い杖を携えた女性が姿を現した。


その女性は歳の頃はマリエッタと変わらぬ様子だが身長は非常に低く1400程で頭に被る広いつばをたたえた帽子が異常に大きく感じてしまう。


その魔法使いが伯爵の元へ参じると腰を折り「魔導士モンゴミリアお呼びにより参上いたしました。」と小さなかわいらしい声で告げた。


「おお大魔導士モンゴミリア先生、研究に忙しい折にこの様な場所に来ていただき申し訳ない」



伯爵の口から聞こえてきたセリフに驚く知矢。

(大魔導士だって!おお、いかにも魔法使いだがかなり幼く見えるのに大魔法使いで先生と呼ばれるほどだ、相当の使い手なのだろうな)


と現れた少女の大魔導士に興味津々だった。

いっそうの事マリエッタを放り出してその大魔導士と手合わせしたい等とつい思ってしまう知矢だった。


ただ知矢もよく考えると感知魔法やレーダ、気配遮断。魔法の定着等種々の魔法が使えはするが攻撃系の魔法は未だ”ファイヤー”や”ウォーターランス”雷を発する”サンダー”程度だったので勝負にならんかと今は諦めるのであった。



伯爵の前で片膝を付き礼を取りながら「何事でございましょう」と呼び出しの要件を訪ねる。


「実はな」と勝負の経緯を話しマリエッタが納得できるようこの闘技場において勝負の間魔法が行使されていない事の確認をしてほしいと伝えた。



話を聞いたモンゴミリアは少し考えるそぶりをしマリエッタと知矢を見た後伯爵へ振り返り

「ではこの闘技場のみを囲む形で魔法障壁の一種、魔法遮断を施しましょう。それならばこの中にいる間だけ一切の魔法を行使する事は出来ません。

しかももし魔法を使用する気配が在れば私に感知できますのでそれで如何でしょうか」


と提案する。


「おお、そんなものが」と伯爵はすぐに了解し魔法を施すように命じた。


闘技場へ進み出たモンゴミリアはその小さな体躯に似合う短い杖を掲げ闘技場を見つめながら魔力を込め始めるのだった。

そして「魔法遮断(インシール)」と唱えると微かに霧の様に闘技場を囲む何かが周囲に展開されたのが見える。


伯爵を振り返り頭を下げ「これでしばらくの間は闘技場の中は結界に包まれ魔法の行使を不可能と致しました。」とつげた。



「うむ、さすが大魔導士、見事である。マリエッタこれで文句は無かろう。この戦いで全てを決し不満を訴える事の無いよう、騎士として潔い勝負をするよう!」


とマリエッタに最後通告のつもりで宣言するのであった。


「お父様ありがとうございます。これでこの男の怪しい術は封じました。後は私の正義の剣でこ奴を叩きのめすのみでございます。」と意気揚々と宣言するが、親の心子知らずとはこの事であろう。



「よし!貴様今度ばかりは逃がさんぞ、正々堂々と戦え!」


あくまでも今までの負けも認めず知矢の技も見切る事の出来ないのに勝つつもりでいるマリエッタであったが知矢は(さてどんな終わり方が良いのかね)と半ばあきれながら闘技場に再度足を踏み入れるのであった。



魔導士モンゴミリアは闘技場の前に佇み魔力行使が無いかを見守っていた。


周囲を囲む騎士団たちは今度こそその動きを見逃すまいと集中し見入っていた。



両者が闘技場に揃うとモンドールは再度注意を促し加えて此度は真剣を使うのだから相手を思いやる剣の技と義を尽くすよう注意を促した。



もちろんマリエッタの頭にそんな言葉は理解できておらず目の前にいるこの卑怯者を成敗する、その一点しかなかったのである。



「始め!!」モンドールが開始を宣言した。


今度はマリエッタは一応先ほどの轍は踏まぬと考えたのか一気に間合いを詰める事はせず剣を正面に構え知矢の動きを注視した。


が、一瞬知矢の姿がぶれたと思うと「どっちを見てる!」マリエッタの直ぐ右手にその姿を現し声をかけた。

驚いたマリエッタが体を引きながら回転し知矢へ剣を横薙ぎに払うとその剣は柄の元で知矢の手刀により上へ押し上げられた。


マリエッタはすぐに後方へ飛び再び剣を構え知矢を見ると既に姿は無く今度は背後から「だからそっちじゃない」と告げられ再び体を廻し剣を振るが又しても今度は柄の元を掴まれ腕ごと引き寄せられて投げ飛ばされた。



石畳に投げ捨てられたマリエッタは背中を強打した様で呼吸を整える事が出来ず苦しそうにだが必死に剣を杖にしやっとの思いで立ち上がり呼吸を整える。


数メートル先には未だ剣を抜いてもいない知矢が泰然と立っていた。


それを見たマリエッタは「貴様!また魔法を使ったな!」と叫ぶが


「いえ、その方は何も魔力を発するどころか魔力を集中させることもしておりません。」

とモンゴミリアが静かに答えた。


そんな馬鹿なと呟くマリエッタに聞こえたのは


「おい見たか今の」

「ああ、今度は見えた、すごい抜き足と瞬発力だ」

「ああ、だがそれにマリエッタ様の懐に入り込んだ瞬間に剣を掴み投げを打つ、凄いとしか言いようがないぞ」


と感嘆する声だった。


「ば、ばかな・・素早さだけでこの私を翻弄だと・・クッ、貴様、正々堂々剣を抜け!」


何が正々堂々なのかもう既に分からなくなっている様子のマリエッタであったが知矢も最後は剣でけりを付けなければ本人も周囲も納得すまいと思っていたのだった。


「じゃあ、ご希望通り刀を使わせてもらうとするか。ただしこの刀は剣と違い・・・斬れるぞ!!」


最後の一言に少々殺気を込めた知矢にマリエッタは1人自然と足が後ろに一歩一歩と下がっていったのをまだ気が付いていないのであった。




  ※1)有名な佐々木小次郎と宮本武蔵 巌流島での決闘の名セリフですね。


剣の鞘を払い投げ捨てた佐々木小次郎に 「小次郎破れたり」という武蔵のセリフ。


鞘を投げ捨てた行動が勝って再び鞘に刀を戻す事の無い動作だと揶揄した武蔵の心理戦です。

つまりお前は勝負の前に負けが決まっていると。


このせいで小次郎が敗れたのかは定かではありませんが。

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[気になる点] >> その女性は歳の頃はマリエッタと変わらぬ様子だが身長は非常に低く1400程で ミリ単位!? [一言] ここまで来てまだ実力の差が分からないって。 本当に才能あるの? やはり親の欲目…
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