第53話 騎士団再び ~この都市の平和は私の剣が守るのだ!
今週はバタバタしておりまして投稿も滞り、内容もいつもにも増して雑では無かったかと心配しております。
ご意見などございましたら遠慮なく書き込んでください。
では第53話です。
祈りを捧げていたマベラス司教が頭を起こしゆっくりと立ち上がると知矢達を振り向いた。
「スコワールドさん、今日は素敵な出会いの場を設けて頂き感謝します。」
ニーナへ向け感謝の言葉を述べながら軽く頭を垂れたマベラス司教は続けて知矢へ顔を向けるとその慈愛に満ちたりた笑顔で
「トーヤ様、明日から数日、必要なだけ子供たちに仕事を命じて下さい。
子供達のまとめ役として見習い助祭の者をお付けいたします。その者へ申し付けて頂けば結構です。」
と明日からの事を話し始めた。
知矢としては幼い子供達の労働に過分な期待はしていなかったが話を聞くとプロ並みとまでは無理でも少々の大工仕事をできる者もいるとの事でならばと清掃片付けから店の修理や改装まで頼むことにした。
勿論これ以上の料金、喜捨、寄付の類は必要ないと断られたがならばと来てくれている間の昼食や飲料、道具や資材は全て支給する事で話がついたのである。
「では明日からよろしくお願いいたします」と礼を述べお暇しようとした時に玄関先まで見送る司教へ
「これは仕事の依頼とは別で教会の建物の補修や運営の足しにしてください」
と先程より少し重い革袋を無限倉庫から取り出し戸惑う司教へ無理やり押し付ける様に渡すと足早にニーナを連れて立ち去ろうとした。
背に司教の黙って頭を下げる気配を感じ取りながら知矢達が歩き始めたときである。
「オイオイ司教様よ、何か景気の良い感じじゃねえか」
と無粋な声が聞こえてきた。
知矢とニーナが振り返ると5人の男が司教を取囲んでいる。
司教は今知矢から受けた寄付の入った重い皮袋を両手で胸元へ抱え込み男達と対峙していた。
直ぐに駆寄ろうとしたがニーナに
「トーヤ君、彼ら街の金貸しをしているザザン商会の者よ、先頭にいるのが商会長のザザンだわ。
司教様は本式の契約を結んでお金を借りているのかしら、だとしたらちゃんとした商行為、介入は出来ないわよ」
と知矢の行動を待つ様に制した。
「オイオイ、何だ金袋を抱えて黙りかよ!ええ!
司教様よ!あんた今月は利子の払いも無しなんだぜ!
こっちも腹減らしを幾人も抱えてんだ薄汚い孤児に飯食わせる金があんならさっさと払えや
!それともあれか!金利の代わりに子供どもを差し出す話、あっちでも良いぜ若い子供なら借金奴隷としてまあまあの金額になるからよへっへっへー」
小柄な司教の顔へ屈みながら下から舐め回すように睨み恫喝する男。
他の子分達はそうだそうだ俺たちに飯を食わせろ!
と司教をはやしたてる。
我慢出来なくなった知矢はニーナの制止を振り切り踵を返し男達へと迫った。
「おい、お前ら何司教様に集ってんだ。
その薄汚い顔を司教様へ向けるな!」
と体を割り込ませ司教を玄関へと避難させニーナもこっちへと呼び寄せた。
「何だ小僧!冒険者如きが勝手に話に入るんじゃあねえよ!俺たちは帝国の法にキチンと従い商売をしてんだぞ。」
と言いながら貸付契約書らしき用紙を見せつけて
「なあ司教様よ!」ヒヒヒッ
と冒険者が現れても怯む様子も見せずあざ笑う様にマベラス司教へ同意を求めるが司教はうつむいたまま何も答えない。
「どうせ少額の金を慈善家の様に最初は無利子でとか言って貸し出しておいて少しずつ少しずつ気が付いた時にはまあまあの金額になってから形だけでもとか旨い事を言ってろくに内容を確認させずに貸付契約書にサインさせてから後で暴利を請求しているんだろ」
と日本でも昭和の頃によくあった2020年でもまだ騙される馬鹿が奴がいるほどの常とうな手を思い浮かべてみた。
「・・・!!」はっと顔を上げ知矢を見つめるマベラス司祭そして
「何で知ってやがる!」と驚く金貸しの下っ端たち。
「馬鹿!何言ってやがんだお前ら」と口を滑らす下っ端を怒鳴りつける商会長のザザン。
「ハッンどうせそんなこったろうと思ったぜ、じゃあ今のセリフ聞きましたねニーナさん。
さて証人もいる事だし契約は無効だな。
もうとっくに今まで支払った金利で元本は払い終えてるんだろ、じゃあその契約書はこっちに貰うか」
と知矢がさらっと言ったところ
「馬鹿言ってんじゃねえこれがこっちにあるうちは・・・・あれ?無い?」
と契約書を持っていたザザンは自分の手を見つめ周囲を探し下っ端へ「おいどこ行った!」と慌てて探していたが下っ端の一人が「あっあいつ!」と知矢の方を指さすとその先には貸付契約書を手に持ち「何々・・」と契約内容に目を通す知矢の姿があった。
「てめえ」いつの間に!返しやがれ」と迫るザザン、ひょいと体を躱し契約書を無限倉庫に収納した知矢は
「えっ?何?何の事だ?借金?
何を夢でも見てんのか、司教様がお前らみたいなチンピラに金など借りるわけが無かろう。
悔しかったら借用書でも契約書でももって騎士団へ訴え出ればよかろうが」とニヤニヤしながら言い放つ。
既にご存知と思うが瞬間的に数歩踏み出した知矢は契約書を相手から奪い去るとすぐに後退し元の位置へ立っただけの事だ。
ただ、その知矢の常人には計り知れない ”速力 A級+($%▽;の加護)”は少し本気を出すと全く動きが見えないほどである。
もっとも人のそれであるから鍛え抜いた動体視力を持つ武人などには通じないかもしれない。
ただし知矢には($%▽;の加護)と記された未だ未知の加護がある。
この加護の力が将来発揮されたとき・・・・どうなるかはまだ知れない。
「このガキが!てめえらとっちめて書類を取り返せ!」
と下っ端に激を飛ばすと自らも腰に下げた短剣の鞘から剣を抜き去り片手で知矢に突き刺す様に飛び込んだ。
「カラーン」
乾いた音が石畳にこだまする。
ザザンが短剣を知矢へ突き刺した・・・と思ったが知矢の左手でザザンの右手は押さえつけられ剣先だけ何故か足元に転がり持ちていた。知矢の光速の居合切りである。
「???」確かに短剣を知矢の脇腹めがけて刺したと思ったザザンは抑えられた右手に力を込められるとぐいぐい押されるように後退し最後のひと押しで尻から石畳へ放り出されてしまった。
訳も解らず知矢を見上げるザザンの目に入ったのはいつの間に抜いたのか剣、日本刀がその右手に握られていた。
知矢の刀と自分の手にある柄だけになった短剣を交互に見つめ事態を感じ取ったのか柄だけの短剣だったものを放り出し「あわあわああああ」とズルズル尻を擦りながら後退していく。
自体の呑込めない手下たちが「手前親分に何しやがった!」と息巻くが肝心のザザンが恐怖を覚えて尻を付いたまま声も出せぬでは下っ端も口だけでどうすれば良いか戸惑うばかりであった。
そこへ
「双方静まれ!!剣を引け!!」
と高く通る女性の声がしたと思うと通りを騎士団と思しき集団が駆け寄ってきた。
知矢とザザンたちの間に割って入った先頭の隊長と思われる女性剣士が己の剣を周囲に知らしめながら
「天下の大来で剣を抜くとは何事だ!ラグーン騎士団第1団 団長マリエッタ・アンコールである!双方剣を引け!」と宣言した。
銀色の軽甲冑に身を包み他の団員とは異なる銀色の地に赤いラインを縁取らせたローブをまとった女性騎士が全員が剣を鞘へ収めるまで周囲ににらみを利かせていた。
他の団員たちは外から双方を囲み監視する様に立つ。
「この騒ぎは何だ、うん?お前はザザンではないか」
とマリエッタは腰を抜かす様に石畳へへたり込む見知った男を見とがめ声をかけた。
「はっははハイ、マリエッタ様、ザザン商会のザザンでございます」と助けをすがる様に騎士に這い寄ると足元から見上げ訴える。
「本日当商会の貸し付けが溜まりに溜まった者へ返済の催促と借金減額の相談に乗ってやろうとこの教会を訪れましたところあの冒険者にいきなり剣を抜かれ借金の貸付契約書を強奪されさらに持っていた金貨の入った皮袋まで奪われた為、止む負えなく配下の者が剣を抜き、命を取られる寸前の私を身を挺して守ったのでございます。」
と有りもしない物語を語り出した。
(こう言う奴ってどこの世界にもいるが何故こうも口から出まかせをスルスル出せるのかのう?
だがこんな話を真っ向から信じるやつがいるわけなかろう)
と知矢が考えていると
「何だと!!貴様か冒険者!」
とマリエッタと名乗る騎士団長は己の細身の研ぎ澄まされた剣を真っ直ぐ知矢へと向けたのであった。
(・・・信じるやつ居たよ・・・)はあっと嘆息する知矢であった。
「兄貴!」
「なんだボンタ」
「噂によりますとあっしのファンがもっとあっしの登場機会を増やせってメールが」
「有るわけねえだろ」
「いや、でも運営さんが言うには」
「お前もう一回冒険者止めさせてもいいんだぞ」
「・・・・ハイ嘘をつきました。申し訳ございません。でも兄貴!もう少しだけでも登場させてくださいよ!!」
「・・・・考えとく」
果たして今後ボンタの登場は有るのか、ひょっとしてボンタの物語も・・・「ねえな」




