第51話 忘れてた・・・ ~何時神を信じるか
こんばんは
表の仕事も軌道に乗り取りあえず・・・
と思っていたら緊急依頼が舞い込み・・
「あのね加藤さん、昼過ぎにメールして資料を送って今日中の見積ってどう考えても無理です」
「いやあ・・・はははぁぁぁそこを何とか」
「無理!譲歩して明々後日中」
「あのぉぉぉぉ何とか明日中では・・・」
「無理です、他社を当たってください」
「そんなああ、御社以外じゃこんなプロジェクト無理ですよじゃあぁぁぁぁ・・・明々後日で結構です・・・」
と言う訳です。
でも何とか一話更新は出来ましたのでよろしくお願いいたします。
第51話
ポクポクポクポク
規則正しい律動を続けながら馬魔車は通りをゆったり進んでゆく。
通りには多くの人々が往来するがまるで海を割るかの様に馬魔車をに気がつくと左右へ人垣が別れ道を譲る光景は時として勘違いをしそうになる程小気味よい。
人々が道を譲るのは何も馬魔車が危険で逃げ惑う訳ではない。
逆に人と接触事故を起こさぬ様に平時はゆっくりと走らせるのが決まりだ。
では何故いまこの大通りを進む馬魔車をみた人々が道を譲るのか。
答えは簡単である。
その馬魔車に掲げられた三角に形度られ豪奢な刺繍に彩られた帝国範旗を掲げているからだ。
帝国範旗
それはその地域を治める貴族を示す旗でありその旗が掲げられた馬魔車、又は荷馬魔車は管理貴族が乗り込むか、又はその貴族が招待した重要と位置づける人物や重要な物資を乗せている証である。
故に普段は市民生活優先の法が旗1つで変わるのであった。
但し貴族の家族や縁戚の者には有事以外は適用がされない。
よって人々は何が重要な客が管理貴族の元へ招待されたのだと気がつき道を譲るのであった。
「何でこんな大仰な事になっちまったんだ…」
とまさにその馬魔車の豪華な車内に座らせられ言われるがままに御者に身を任せている青年前期の人物、知矢が嘆息していた。
数時間前の事である。
知矢が密かに経営する魔道具商店は毎日の様に魔道具を購入したい客で溢れかえっていた。
マジックバックを発売してからはその人垣が更に増え使用人達だけではとてもその行列を安全に維持する事は出来ないであろう。
先日の騒ぎから毎日都市へ駐留する騎士団から兵士が代わる代わる派遣され店に殺到する人々と一般の通行人をさばいてくれ騒動が発生すればすぐ様収めてくれる。
そんな高待遇が続いている為何とか商売が成り立つのであった。
商売が軌道にのれば店の裏で作られている商品の補給、知矢しか出来ない魔法の定着さえ数を用意しておけば知矢が店でやることも無い。
更に当初の思惑通り最近の人々の話題は魔道具一色であり都市外からも多くの人々が訪れているがその者達も魔道具の噂を聞きつけて来ている者が半数だ。
残りの者は確かに知矢が発見した魔鉱石の採掘や採掘場建設に関わるまたは関わりたい人々だが既に誰が魔鉱石を発見したか等は二の次になっていた。
今は魔鉱石の流通に関わりたい商人や武器加工を行う工業都市の貴族、そしてそれを横取りしたい又は妨害したい某大国のスパイや破壊工作員が採掘砦の周囲に仮の街のを形成しつつあった。
お陰で騎士団も臨時の増員を行い、冒険者も警備に雇われ、人々が集まれば商売も成り立ちこの先はこの砦を中心に衛星都市を成す事も見込まれる程の活況だ。
ようやく知矢の思惑通りに事が進みやっとこれでのんびりしながら理想の老後が送れるだろう。
ならばそろそろ静かな場所に良い物件を探し老後の住いを定めようかと思案していたのである。
そんなある日の事である。
暦この月に必要な商品の魔法定着作業も終えて街を散策しながらどの辺が住みやすいかな等と考えながら歩いていた知矢。
ある商店の店先に並んでいた穀物や調味料を見て
「そういえばこの月内にでも戻ってくるかな?」
と思い出した。
知矢の求める食材や調味料、具体的には米と醤油、味噌などであるがそれを得るために商隊を編成しイエヒコに案内を指示し彼らの故郷へ向かわせてから50日ほどが経過している。
単に徒歩で往復するだけであれば90日前後、馬魔車を利用して往路が30日、復路は荷物の重みにもよるが40日~50日ではないだろうかと聞いていた。
であれば取引やその他諸事を含めてもおおよそあと20日前後で戻ってきてもおかしくはない。
そう思いだした時未だ契約だけで何も手を付けていない魔道具商店の両側の空き家を整理し手を入れて受け入れ準備をしなければと思い出した。
「まずい、すっかり忘れていた。イエヒコが戻って来てせっかく仕入れた物が置き場所もないでは申し訳が立たんな。しかし片付けや家屋に手を入れると言っても他の使用人は皆忙しいしな。急に奴隷を買ってきてもリラレットが手一杯ではどうにもならんしな」
そうだと思い立ち足を冒険者ギルドへと向けるのだった。
久しぶりの冒険者ギルド、既に日が高く昇っているこの時間は依頼を求める冒険者はほぼ居らず朝方依頼を終えたり都市へ到着した冒険者が1階にある食堂兼居酒屋で談笑する光景が見られる程度であった。
「依頼か、そういや魔粉花の依頼以外まともに依頼受けたことが無いな。まあもうA級になった事だし更新のために依頼を無理に受ける必要もないしな。」
と知矢は考えながら依頼募集掲示板を横目に見ながら奥のカウンターを目指す。
本来冒険者ギルド規定ではF級からスタートした新人冒険者は細やかな依頼をいくつもいくつもこなしながら冒険者の基礎基本も学び安全な範囲で経験を積みながらE級、D級と昇級していくのである。
その過程でFランクは7日以内に一度必ずギルドへ出頭し何らかの依頼を受けなければ即その資格が消滅する。(病気等の理由があればその限りではない)
Eランクからは3年以内に何らかの依頼を受け続ければ自動更新される。
Fランクは会費無料。
Eランクから年間会費が徴収される。
だが定期的に依頼を受けていれば年会費はその報酬から自動的に差し引かれギルド証にはその差額が振り込まれる。
だからギルドでの依頼を定期的に受けていれば一々年会費を払いにくる必要も無い訳である。
このシステムは逆に言うと低ランクはこまめに生存確認を行ったり状況を窺がい指導を行う事がしやすい状況。
冒険者側から見ると習慣的にギルドへ顔を出す事になるので出入りする事、依頼表を探す事、職員と話をしたりすること、先輩冒険者に顔を売る事、等が自動的にしやすい環境になる。
そんな状況をわざと作り低ランク冒険者の事故を防ぎ順々に教育していくためのシステムの一環である。
そんな話は知矢には遠い昔に聞いた事のある話となっていた。
実際はまだ冒険者へ登録して数カ月なのだが登録月に魔鉱石鉱脈を発見しその功績によりいきなりAランク昇格を果たしてしまったためそういった基本的な教育の流れからはすっかり外れてしまった。
もっとも元来低ランクと言うのは社会に出たばかりの13歳から16歳のものが殆どでありせいぜい18歳までがFランク登録者だ。
日本で60歳まで社会経験を積んだ知矢と異なり未だ社会の仕組みや大人としての振る舞い人との付き合い方等冒険者以前の教育が必要な為そのようなシステムであるのだから知矢には必要の無い事であった。
ただ、異世界、日本の文化や考えも異なる事もあるのでそういった意味で知矢にも教育が必要な事もあるかもしれなかったが転移後早々に色々な出来事と人々にもまれ今では商店を経営する使用人を抱えたいっぱしの社会人とA級冒険者の立場を得ているのだから少々の異文化などがあっても支障は無かった。
冒険者ギルドのカウンターは入り口を入って依頼募集掲示板の前を通り過ぎて奥になる。
横に長く伸びる受付カウンターには依頼を新規で受ける場所が一番広く受付の人員も多い。
その隣には採取依頼や購入してほしい魔獣の部位や魔石と呼ばれる魔物魔獣から採取できる魔力のこもった石などを買いとる場所がある。
大型の獣や魔獣等は受付へ持ってこれないので別の大型専門買取カウンターを設けた倉庫の方へ運ぶ。
そして受付カウンターの一番横に奥まったカウンターがありそこには何か困った事が有ったり相談を受け付けたりする低いカウンターがありその奥には椅子に腰かけている専門のギルド職員が常時待機して冒険者の相談に乗っていた。
知矢はそんな相談カウンターへまっすぐ足を向けいつもの様にニーナの姿を見つけると声をかけるのであった。
「こんにちはスコワールド主任」
と声をかける。
下を見て書類に目を通していたニーナは呼ばれ顔を上げるとそこにいたのが知矢だと気が付くと優しい微笑みを浮かべ
「いやですよトーヤさん、いきなりそんな呼び方されたら誰かと思って驚いてしまいます。」
と微笑みながらこんにちは知矢・塚田様と返すのだった。
「参ったな、ニーナさんにそんな呼び方されたら私の方が直立してしまいますよ。」
と二人で笑いあった。
「そういえば今日はどうされましたかトーヤさん」
忙しい知矢がわざわざ依頼を受けるわけでもないのにギルドまで来たのだから自分に何か相談があるのだろうと推測したニーナである。
「ええ、ニーナさんにまたご面倒をかけるかもしれませんが」と断り新に買い取った店の片づけや改装を誰かに頼めないかと相談する。
「今回は今までの様に奴隷を購入しないのですか」
「ええ、奴隷を購入するのも一案なのですがなかなか初期教育や指導にも時間がかかりますからね、今の使用人をその役につけると店の方が手が回らなくなるかもしれません。
ですから奴隷は今後も必要なら増やしていきますが今回は専門に仕事して受けてくれる方がいないかなと思いまして知恵をお借りに参上しました。」
そんな知矢の相談に「そうですね」と色々なあての中から最良の者はいないか考え出すニーナである。
そんな真剣な顔つきのニーナを眺めている知矢は「うーん真剣な顔も可愛いな」などと考えていた時そ「そうだわ、良い方々がいます」とニーナが突然顔を向けたので驚いてしまった。
「えっトーヤさんどうかしました?」と怪訝な顔を知矢に向けるニーナに
「いえいえ」と動揺を隠しながら何がそうなんですかとごまかすのが精いっぱいであった。
「そうでした、ええと実はこの都市にも大きな教会が有るのはご存知ですか」と聞かれたが知矢は全く存在を認識していなかった。
元来無宗教人の集まりでもある日本から来たせいもあるが古来から続く一般に認知されている宗教などは別にして新興宗教や教義を他人へ強要したり対価、金を要求する、宗教団体なのに政治活動をするなどが大嫌いな知矢であった。
知矢の中での宗教はその
・教義を他者へ強要しない
・対価を求めない (慣例的なお布施や檀家の寄付等は許す)
・政治と宗教は隔絶する
・他の宗教を攻撃しない
・自分の信じる神だけが絶対だと他の宗教や神を否定しない
等があるので日本で政治団体を作り選挙に出て議員に成ったり、家を各個に回り教義を押し付けたりする似非宗教と位置付ける団体が大嫌いであった。
そんな知矢であるのでそもそも宗教に気が向かなかったせいか教会の場所など気にもしていなかった。
まあ、知矢も日本では一応神道を選択はしていたのではあるがこれは武道を行う者にとっては宗教と言うより武道の歴史に関わる者としての位置づけに過ぎなかったのであるが。
「ニーナさんは信者なのですか?」と逆に先に聞いておく。他者の信じる者は己に害が無ければ敢えて否定もするつもりも無かった。
「いえ、特に洗礼を受けたり教えを乞うなどはしたことは有りませんがバザーなどが在れば言って寄付をしたりその程度です。」
「そうですか、でその教会が何か」
「ええ、実は協会では我々冒険者ギルドと同じく戦乱などで親を失った子供たちを教育したり養うために市民からのお布施を受け代わりに子供たちがそれに見合う労働を提供する言わば仕事を社会に出る前にいろいろ経験したり見聞きし将来の準備のためのシステムがあります。
そこでトーヤさんの相談でもある片付けや掃除なども行っていますのでそちらは如何かなと思いまして。」
なるほど知矢は考えた。
実は知矢は豊富な資金の還元先の一つとして孤児院のような物が在れば寄付をしたいと思っていた。
それが形として教会であっても子供たちが粗末に強制労働を強いられる様な物でなければそこで構わない、いや丁度いいのではと考えた。
「それは良い案ですね、でもどうすれば良いのですか」
「そうですね、トーヤさんこの後お時間は如何ですか、良ければ私がご案内いたし教会に司祭様へご紹介いたしましょうか」
と申し出てくれたのでそれはお願いしますと早速二人で教会を訪ねる事にしたのであった。
「では行きましょう」と制服の上に薄手のコートを羽織っただけのニーナを伴いギルドを出た二人は途中で昼食を食べながら教会を目指すのであった。
さて更新もしたので見積に戻らさせて頂きます。
暫く寝られん(-_-;)




