第34話 乾杯!! ~「あっしが敵の攻撃を受け耐えた姿見てたでしょう兄貴!!」「zzzzz....」
皆さん、暑い一日お疲れさまでした。
まだしばらく暑さと中国ウイルスとの戦いが続きます。
何としても生き抜きましょう!!
では今日も頑張って書き上げました。
本日二話投稿
第34話をどうぞ
ガツガツガツ
グビグビグニ
ガツガツガツ
グビグビ!
「ニャア。こっちにビールと魚の串揚げ追加だニャア!」
「あっ、あっしもビールに串肉5本追加っす」
ニャアラスとボンタは競うように酒を飲み、魚や肉の串揚げをむさぼり食っていた。
がやがやと喧騒が心地よい雰囲気を醸し出す場所、ここは大型商業都市の一角にある酒場兼宿の食堂である。
「っふーっ、ゴクゴク、すまんね姉さん俺にもビール追加で、大きいのが良いな!」
と知矢は久しぶりに飲む大好きなビールを堪能していた。
「ニャア、トーヤも結構いける口だニャ」
と追加のビールもぐいぐい飲み干すニャアラスである。
「そっすよね、でもさっきから兄貴殆ど顔色が変わりませんからそうとうお強いんでしょうね」
とこちらもどんどん飲み干すボンタであった。
知矢はそれほど昔から酒が強いと言う訳では無かった。
以前記したように大学時代には相当の酒を飲まされたり飲んだりしていたが社会人になり家庭を持つようになると自宅でしか飲まなくなりしかも相変わらず翌日が仕事の場合は飲まない習慣を続けていたこともあり年を追う事に年々弱くなっていたほどだ。
この世界に来て定職?なのか冒険者のまねごとを始め、知り合った数少ない人であるニーナと数回飲んだりしたし夕食時にもビールを飲む習慣がついてしまっていた事に自分でも驚いた。
ただ、翌日仕事とか飲酒運転などを気にする必要もなくなりさらに最高神様のおかげで体も若返った事で酒を飲んでもそれほど体に負担のかかる事も無いので少し安心して飲んでしまっているのかもしれないと心にブレーキをかけるのであった。
「まあ、それほど強い訳じゃないが、こうして大きな一仕事を終えて仲間と交わす酒っていうのがたまらなく旨いと感じてるんだよ」
ともう一口飲む知矢であった。
「兄貴!やっとおいらを仲間って言ってくれましたね!兄貴一生ついていきます!!」
知矢のセリフに感動して涙を流すボンタであるが
「いやいや、別にお前を今後も面倒見る気は無いぜ、しかもお前、いやボンタさん、あなたは私より年上ですよね、兄貴って言うのは変じゃありませんか」
とつれないセリフに「そんなあー!歳なんか関係ないっすよ、トーヤさんは俺の兄貴っすよ!敬語なんてやめてください」
と必死に縋りつく様に訴えるが聞き流す知矢であった。
「大体お前は一度冒険者ギルドを除名されているニャア、しかも除名取り消しの条件は知矢を助けて事件を解決するって言ってたニャア。お前全然必要なかったから除名継続だニャア」
「っえっいやいやそんな事ないっすよね兄貴!俺頑張りましたよね」
「おみゃあは船首で震えてカタカタ鎧を震わしていただけだニャアww」
「そんな事ないっすよ、あそこで俺が凄腕冒険者の役でいたからこそ犯人をおびき寄せて掴まえられたんじゃないっすか!あの突風攻撃も受けきりましたよ!」
と必死に自らを擁護するのであった。
あの後知矢は河に沈みかけていたボンタを救い出し再び船で遡上し都市の船着き場で船を借りていたこの都市の冒険者ギルドへ返却し、取りあえず仮の依頼達成報告を上げた知矢達は行商人に化けた犯人が連行された騎士団詰め所へ向かった。
詰め所で立番する若い騎士へ話すと「おお、あの冒険者の方ですね」と目を輝かせながら上司の部屋へ案内をしてくれた。
案内されてきた知矢を見た騎士団の団長は
「おおよく来たな、犯人逮捕への協力、誠に感謝する。出来る事なら我が隊で掴まえたかったのが本音だがこれ以上被害者を出さずに済んだのは貴殿のおかげだ!」
と素直に知矢の功績を認め握手を交わすのであった。
知矢はこんな場合は手柄を横取りされて嫌味とか冒険者を下に見る態度でも取られるのかと思っていたので意外だったがこの帝国では相手の功績を素直をに認める風潮が根強い事をその後知ったのである。
知矢は転移前の日本や世界常識に捕らわれていたのと過去に読んでいた異世界召喚物の読みすぎであった。
「で、早速ですが団長殿、犯人はその後?」
ソファーを勧められ席に着いた知矢は早速捕らえられた犯人と思しき二人組の様子を確認するのであった。
「ああ、君の推測に間違いは無かった、南の大国、”ルドマリッド人民共和王国”の破壊工作員で間違いなかった。
ここ数年被害が途絶えていたせいで我々もまんまと侵入を許し多くの被害者を出してしまった事に悔しさと怒りを覚えるよ。」
”ルドマリッド人民共和王国”帝国の豊かな大地と食料を欲し市民を奴隷にすべく数百年に渡り相変わらず戦いを挑んで来る共産主義国家であった。
国境付近では常に南の大国が侵入しようとするのを防ぎ激しい防衛戦を繰り広げているがこの数年帝国の強固な防衛線や構築した砦を破る事が出来ずにおり再び後方かく乱やスパイ活動、経済の混乱を目的に密かに不法入国者が暗躍し始めているのであった。
彼の国は自国の事、自国の利益のみを欲し卑怯・卑劣な事を何もいとわず攻めて来る。
殆ど狂信者の集団で構成されている社会主義共産主義国家であった。
今回捕らえた夫婦を偽装していたと思われた二人は本物の夫婦であり、南に大国の国民であるのは鑑定の結果確定している。
しかもその能力がこれだ。
ビッシュハルト: 人族、ルドマリッド人民共和王国民 (46)、職業:商人、及び共和国 暗部所属、行商人LV5、生活魔法LV1、剣技LV5、暗器術LV25、暗殺LV15、精霊拘束魔法LV30、俊足LV8、演技LV4
等である。
職業が商人と出ている以上本当に商人だったのかもしれないが何故か暗部兼任でしかも暗器や暗殺のLVが商人よりはるかに高い事が単なる偽装商人で無い事を示しているがステータスに所属まで出てしまっているのであれば言い逃れは出来ない。
中にはステータス偽装の魔道具もあるが希少な為、末端の者が使える事は少ない。
「精霊拘束魔法ですか、何か怖い卑劣な感じですね」
と知矢。
あの時風と共に切り裂いたのは精霊だったのかと思いながら拘束され操られていたのだと思うと精霊が不憫でならない。
もっとも未だ知矢は精霊と出会った事が無かったので今一つ実感がわかないが精霊を切ったという事実に代わりは無く後悔の念が僅かに芽生えていた。
「ああ、恐ろしい魔法だ。今回魔法で拘束し操っていたのは”ノーム”という風の低級精霊だったそうだ。だが低級とはいえ姿を現さずに襲われては一溜りもないだろう、今回の事件の被害者は皆わけもわからず惨殺されているのはそういう事だ。」
その後団長から知矢達の作戦の詳細確認を求められ話をした後その場を後にしたが、明日にも帝都より司法貴族が来る事になっておりもう一度詳細を証言し聴取をされる旨知らされ呼び出しまで自由にしてよいが都市からは出ないで待っているように言われた。
長い一日が終わった。
騎士団長と別れた後、知矢達は居場所が分かる様にと紹介された宿へ入り体を休めた。
この宿は専用の大浴場を備えており最近水浴びとクリーニング魔法で済ませていた知矢は早速入浴を堪能したのであった。
ボンタも一緒に入浴したがニャアラスは浴槽が毛で汚れるからと遠慮し洗い場で湯を浴びて汚れを落とすのみで上がってしまったのが残念だった。
その後夕食を兼ねて宿の食堂で任務完了のねぎらいの宴になったわけだ。
この支払はリーダーの知矢が持つことになっているので二人は遠慮なく浴びる様に飲んでいるのであった。
「しっかし兄貴!よく敵の行動を読み切りましたね、あの時あっしは周囲に目を光らせていやしたが何も解りませんでしたよ、いってえどういうことなんですかい?」
と急に探索を中止し一度近くのこの都市へ向かった経緯を聞きたい様子だ。
「いや別に敵の姿を確認したとかじゃない、逆に全く気配も無い事がその理由だったって事だ。」
と話す知矢にボンタは全く理解が出来なかった。
あの時知矢が感じていた違和感、全く気配を現さない犯人、街道は各所を封鎖し走り回る街道騎士団と多くの冒険者、そして河に焦点を当て探索をしていた知矢達。
いずれも気配を追うどころか襲われる事も無かったのは何故なのか?
そう考えた時やはり目的は純粋に商人や荷の流通を阻害する事であり、経済的ダメージを狙った破壊工作であると強く確信したのだった。
何故ならもし襲撃の犯人が純粋な魔物などであったら商人と騎士団の区別をつけるわけも無く騎士団と緊急依頼の冒険者に幾ばくかの被害や襲撃が発生していてよいはずであった。
それらが全くないと言う事は強い目的を持った者の計画的な犯行だと思い至ったのであったがそう思い至った時見上げた空の端に映ったのは知矢達の船が任務の為に航行中であると示したあの赤い目印の旗であった。
これだ!これが有るから俺たちが犯人捜しをしている集団だと解りどこかで次の獲物を探している犯人に避けられていたのだとひらめき、一度捜索を諦めたふりをし都市へ入ったのであった。
その知矢の考えを冒険者ギルドの職員へ訴え考えた作戦を伝えたのち街道騎士団へおとり作戦への了承も取り付けてもらったのであった。
当初知矢の作戦に疑問を抱いていた騎士団長であったが知矢達3人だけの行動で他の冒険者や騎士団の行動を阻害しないとの知矢の提案にそれならばやってみろと許可を得たのであった。
実際知矢はある程度の確信は有ったが絶対引っかかると限らないのも確かなので他の者の手を割かせるわけにもいかない事は当初より想定していた。
一応もし犯人を捕縛出来た時は大空へ”ファイヤーボール”を数発合図に発する事は伝えておいたのであった。
そして冒険者ギルドに依頼し空いている大型の荷船を用意して低重心になる様な荷を積み込んでもらい、密かに武具やで購入した大盾を用意、防御力と力に不安のあったボンタにはフルプレートの強靭な鎧をまとわせ如何にも荷を守ってる冒険者ですよという役をやらせたのであった。
だがそのボンタは初めて来た重い鎧に身動きを制限されさらに今まで採取や使いの依頼以外受けたことが無く実践の経験に乏しい事で残虐に襲撃され殺された敵をこの身と大盾のみで受けなければいけない恐怖で震えが止まらなかったのであった。
知矢は一応過去に襲撃された荷魔馬車や荷台の傷跡を見せてもらい敵の斬撃の強さを考慮に入れてはいたのでボンタがやられる心配はないと思っていたのだが一抹の不安はぬぐいきれなかった。
なお風圧や衝撃で船が転覆するのを恐れ幅広の船に低重心になる荷を積ませたのも計算の内であった。
そんな話を酔いながら披露した知矢は後半既に眠りに伏して聞いていなかったボンタを置き去りにしてニャアラスと部屋へ戻り久しぶりにベットで体を休めるのであった。
なお、ニャアラスのいびきは殺意を覚えるほどであったと書き記しておこう。
昨日の少し記載しましたが土曜日8/8~更新が途絶えます事を予め重ねてお詫びいたします。
なので最近頑張って一日2話投稿を実施中です。
この頑張りを評価してえええ!!!
では次話にて。




