第20話 「・・・・・・」 ~宝くじ買ってたらどうなったかね?
第19話が少し短かったので第20話を投稿いたします。
よろしくお願いいたします。
いつもよりかなり早い朝だった。
昨夜は騒ぎの為同じ宿に泊まったニーナが
「トーヤさん、人々が街へ出てくる前に取り急ぎギルドへ入ってしまいましょう。」
と早々に起こしに来た。
寝ぼけ眼で急ぎ洗顔身支度した知矢とニーナはミンダに断り朝食も食べずにギルドへと急いだ。
街は一般の市民が活動を始めるのにはまだ早く市場へ向かう商店主や丁稚、宿を早出する様子の旅人逆に酔った状態で下を向いたままうつらうつら歩く冒険者らしきもの。
その程度であったからニーナの判断は正しかったのだと思いながら知矢とニーナはギルドの裏口から入り職員用の階段を上がりギルド長室の扉をたたいたのであった。
すぐに中から返事が返ってきたので入室するとギルド長と男女2組の職員が打ち合わせ中であった。
「ギルド長おはようございます、申し訳ありません打ち合わせ中でしたね、別室で控えております」
とニーナは知矢を促し踵を返そうとしたが
「構わん入ってこい」と二人を呼び止めるのであった。
ニーナに紅茶をいれるように指示した後
「昨夜はゆっくり寝せてもらえたか」と意味深に知矢へ視線を送るギルド長のガインであったが知矢はそ知らぬ顔で
「おはようございます、ええ、静かな宿でそれはもうゆっくり体を休めましたよ」と打ち合わせ用の机から脇に外れた高足椅子によっこいと座り「このくそおやじが」っと渋い顔を向けた。
「んじゃあ英気を養った所で話をすすめるぞ」と今度はガインがそ知らぬ顔で話をすすめた。
「紹介しておく、この二人はギルドと帝国との連絡員をやってるやつらだ、そしてこいつが今うわさでもちきりの新進気鋭の冒険者”トーヤだ”」
互いによろしくと挨拶を交わしたがどうもこの二人はかなりお疲れの様子だ。
「まあ、見た通りこいつらは昨日から徹夜で帝国官僚やらと※1)魔伝で情報提供と指示を受けこれからの事を打ち合わせていたってわけだ」
ガインはお前のせいだぞと言わんばかりの顔を向けるが取り合わず二人にだけねぎらいの言葉をかけた。
どうやらもう既に帝都より”魔鉱石”発見の報を受け確認と現状確保をするため担当貴族の役人が夜を徹して向かっているようだ。
知矢はそう聞きながらも「そこまでの事かね」と思わなくも無かった。
しかし帝国にしてみれば鉄鉱石にわずかに混ぜるだけで強度が数倍、魔力伝導率もはるかに上がり刃物の切れ味は抜群、盾や防具に利用すれば重さが減り強度は増えるそれは南の国との戦いで遥かに優位に立ち今後※2)の防衛が相当楽になるのは間違いないのだからすぐにでも発掘精製を行い工業都市へ送らなければならないのだから。
その話を具体的に聞き知矢は異常なほどの報酬額にやっと合点がいくのであったが。
その後ニーナの紅茶を飲みながら職員との打ち合わせと指示を終え二人は仕事へ戻っていった。
「よし、じゃあ次はお前の番だ」とわずかに凄みを聞かせ獲物を狙うような視線を投げかけた。
「昨夜あの後お前を襲撃した連中は頼みの綱の準男爵までもが拘束された姿を見てまあ、べらべら素直にしゃべってくれたわ」
騎士に引きずられるように連行されドミワ元準男爵は地下牢に放り込まれた直後は威勢よく罵声や無実を喚いていたが周囲の牢へ先に投獄されていた犯罪者に殺気を向けられると下半身から湯気を出し腰を抜かしたように座り込んで大人しくなっていた。
すこし放れた牢に先に放り込まれていたソメッソの仲間の冒険者たちはその様子で観念したようだったが娘のソメッソだけは周りをお構いなしに夜中まで罵声を止めず貴族である自分と父親の権利を主張続けたが夜中家令が面会に訪れ屋敷も全て捜索されたことを聞きついに観念したのかやっと静かになったのであった。
知矢に対する殺人未遂を初め過去に行っていた犯罪行為や恐喝、恫喝乱暴、殺人の疑い等あまりにも余罪が多すぎる為今後本格的な取り調べと証拠の精査は帝都の司法貴族管理官が改めて来るまでは進まないとガインが言うがもう既に興味のない知矢はまあ司法がしっかり裁けば良いであろうとだけ思っていた。
「で、肝心の魔鉱石の件だがこれも発掘前に埋蔵量の算定が行われなければ特別報酬は払われないから来月まで待つようだがおまえ金には困って無さそうだから構わんよな」
と報酬の先送りを伝えてきたが「特別報酬?なんだそれ」と引っかかった知矢
「なんだ、おまえ依頼書ちゃんと読んでないのか?」
呆れた顔のガインだが知矢は失礼な!と
「ええと 「採取ではなく花の咲いている箇所を探す依頼で花の本数が多ければ多いほど支払われる料金、依頼料が上がるシステムになっている。依頼料は1本につき中銀貨1枚(千円)だがもし群生地だった場合はその土地の大きさによって変わるり1サイクロン(1㎡)×大金貨1枚(1000万円)と言う仕組みだ。更にその群生地が10サイクロン(10㎡)を越えると1サイクロン当たりの価値が大金貨10枚、実に青金貨1枚(1億円)×発見サイクロンとなる」 」ですよね、ちゃんとわかってて依頼を受けてますよ?と知矢
すると、あ~あっと呆れた顔をするガイン、知矢は何?っとニーナの方を振り向くと苦笑いをしていた。
「えっ?なんですか?そう書いてありましたよね」
「まあ、そう書いてあったがその下の方にも続きが書いてあったはずだ」
その続きとは、
発見者には上記報酬の他に鉱脈調査の結果地下に確認された埋蔵量推定量 1リクロン(1㎥)毎に大金貨1枚を追加特別報酬として加算するものである。
「と、言う訳だ。理解したか?」と少しバカにするような言い方に知矢はむっとしたがそれ程大げさにいう程の追加報酬でもないのではないかと純粋に思った、なにせ発見時に既に青金貨(約1億円)以上がほぼ確定しているのだから。
「その顔やっぱ分っとらんな、おいニーナ説明しちゃれ」とあきれ顔
「はい、では知矢さん」 と落ち着いて聞いてくださいねとニーナが説明を始める
詳細はこうである
1リクロン(1㎥)毎に大金貨1枚、という事は
10リクロンで大金貨10枚=1青金貨
100リクロンで10青金貨=1白金貨 となる
そんな小学生の算数は義務教育を受けている日本の小学生がわかない訳がないが問題はその後だ。
「50年ほど前に発見された魔鉱石鉱脈は、良いですか! なんと約2000リクロンの巨大な鉱脈でした!!」
2000リクロン×大金貨1枚=大金貨20000枚=青金貨200枚=白金貨20枚
日本円に直すとナント200億円に相当する金額であった。
それを暗算した知矢は何かの間違いではないかと机の脇にあった打ち合わせ用の紙を勝手に引き寄せ計算しなおしてみたがやはり間違いない。
「・・・・・・白金貨20枚・・・だと!!!!!!!!!!!!」
一瞬動揺して日本円で言いそうになったがそこは何とか踏む留まり白金貨換算で叫んでしまった。
知矢が日本で経営していた会社の年間売上高は約250億~300億、利益は40億~60億程度だったから今回の功績で最低1億以上、後日追加で100億とも200億とも見込まれる収入を得たことになる。
いくら歳を重ね苦難も大金星も日本で経験してきた知矢だがほとんど何もせず1日魔法の練習をしていた程度、実費は昼食代や宿代その他道具屋で細々購入してはいたが合計しても2万円程度、しかも魔力は無料で使い放題ときている、そんな投資と労力で1日に稼ぎ出してしまった事に知矢は驚愕してしまった。
経済活動の中で現代の地球では有価証券取引や仮想通過、外国為替差益その他いくつもの1晩で大金を得る事の出来そうな商品もあるが結局ギャンブルであり資金もそこそこ投入せねばリターンも得られない仕組みである。
そんな中、知矢は一切の博打的な資産運用や投資を毛嫌いし証券会社や銀行その他怪しい営業までもを全て袖にしてきた。
知矢が信じてきたのは間違いのない仕事と得られる信用”のみであり他社がバブルに浮かれていた時も見向きもせず逆に経営者失格の様に言われたこともあったがその後10年20年30年と経過したその結果が”無借金経営”、”経常利益毎年の微増加”、”一切下請けも持たない直営部隊”、”給料遅配ゼロ」”、”支払遅滞ゼロ”、”手形を一切使わない現金主義”等を貫いてきたのであった。
もちろん税金もしっかり支払っていたため税務署や国税の定期査察が入ったこともあったが※3)お土産無しでお帰りになった。
というのは経済界の伝説とまで言われたほどであった。
そんな堅実で固い仕事、経営をしてきた知矢がまさか異世界に来て軽い気持ちで受けた残り物の依頼で大博打以上のものを引き当ててしまったのだから驚きすぎて言葉も出ない。
実は知矢は全く気が付いていない、忘れているかもしれないが転移前に最高神様に”最高神の加護(小)”を貰っていたことを。
この(小)が実は曲者であった。
知矢自身の元々の幸福度 ”幸力”はAであったが更に加護(小)を受けA+になっている。
これはどれだけの幸福度というと自分の意志で1億円の宝くじを10回連続で購入したとしよう
幸福度Aの状態だと大体2回当ててしまうと物である、ここで+になるとその幸福値はさらに上昇し8回は当たってしまう程である。
じっさい自分が望めば日本にいた頃から知矢は高額当選を繰り返していたかもしれないが当の本人全く宝くじを購入したことが無い為実証できなかったのが残念であるがまさか異世界に転移してその本領を発揮していまい、さらに最高神の力も加味させて発揮させたとは全く考えが及ばないのであった。
しかも日本円換算200億円=白金貨20枚と書いたが
実際この世界における一般市民の生活レベルや物価から換算に直すと400~600億円規模に膨らむ場合もあったがそこは知矢の感覚だけであったのだが。
知矢が驚愕したまま固まってしまったので残された二人は静かに知矢の復活を願い紅茶を楽しむのであった。
※1)魔伝:要はFAXみたいに書いた文章を魔法の力でやり取りする魔道具と思ってください
定番ですよね!
※2)防衛:ギルバルト帝国は過去も将来においても”専守防衛”を国家の是としているため。
※3)お土産:税務査察では必ず成果を上げて署へ帰らなければならない(内部的に)よってどんな良識経営の企業に監査、査察が入ったとしても必ず税務申告修正や追徴課税に相当する結果をみ見つけ出して持ち帰るのが通例だった。
逆に怪しまれないよう脱税している企業の中には見つけやすいところに隠したお土産を渡して帰っていただきほくそ笑んでいる企業などがあるという噂は・・・都市伝説ですかね。
ある企業ではどんなに探してもお土産が見つからないので(本当にきちんと申告していたため)署員は最後は「この別地の倉庫の電気代はおかしいですね!」と言ってきたが・・・毎月の電気料金が基本料だけっておかしいか?
結局手ぶらでご帰宅だったそうです。




