表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LEMURIA 混沌のレムリア  作者: アマダイ
3/25

第三柱 根無し草

トギニの異常に気づき彼を恐れ、イブキと焼却炉で再会したリキは、その場に他の人物が既に侵入していたことに気づいていなかった。

一方ディオルコは『イブキ・ダグー』という人物を探していた。


……自前の鍵を鍵穴に差し、錠を外す。自動的に内部の凹凸を平す仕掛けが施されているため、そこらにある南京錠程度であれば他愛もなかった。ディオルコは夜の事務室に忍び込んでいた。


イェルバの者たちのほとんどは、目的も知らずに、羊のように群れをなして進んでいる。この場所でもそれは同じだ。

とある王が、一人の子供が自分の存在を脅かすと予言されたために、町中の疑わしい子供全てを殺した。そんな物騒な物語があるとかないとか。

…さすがにどこにいるかも、存在しているかもわからない子供に対して、それは現実的ではないだろう。子供を『洗脳・教育』するよう任命された信者達によって無数に登録された標本の中に、『妙なもの』が混じっていなければ、それでいい。仮に紛れ込んでいても、『Barrenバレン』が排除されるべきものではなく、崇めるべきものであると刷り込まれていればそれでいい。


そんな思惑は、多くの羊達は知る由もない。


ディオルコが探すのは、つまりは『予言の子供』の情報だった。資料に次々と目を通す。書類のミスを見つけることは苦手としていたが、必要な情報を抜き取ることには長けていた。


…『イブキ・ダグー』は存在せず、めげずに『イブキ・ビ・エラ』という人物の情報収集に切り替えた。

彼はこの五年間、ずっと顔も知らない『予言の子供』を探していた。進展はほとんどなく、それでもその名に縋り、探し続けてきた。…少しの可能性でも拾っておきたい。

『イブキ・ビ・エラ』が昼間の奇抜な少女であろうことが読み取れた。

「……。」

やはり偽名に思えた。しかしそれがどうも気になった。

目的を終え、するりと来た扉から出て錠前を戻した。寒さに張り詰めたガラス越しに、ふと灯りが見えた。…あの方角には愛車がある。

ディオルコはその灯りがどこか引っかかっていた。

いや、しかし…、気にはなるが今歩き回るのは賢明では無いだろう。ミケーレの言葉が頭をよぎる。

『今夜は荒れます。』



不自然に狭い部屋、正面のただの白壁。その白壁が溶けるように滑らかに空間が開け、風が自分の側をかすめた。

パン!という破裂音は風切音に変わり、背後の扉にめり込んだ。


―――発砲!


弾痕を確認するよりも早く、白い壁から銃を持った『トギニ』の黒い腕が伸びた。

ガシャン、と機械が床に捨てられる音がした。ご丁寧にサイレンサーを取り付けていたのか、銃を持ち替えたらしい。出現した小部屋にはまだ奥行があるように見えた。

背の高い男は銃を下ろしてこちらへ二歩ほど歩み寄り、壁は空間を舐めるように再び口を閉ざした。


漆黒の皮に覆われた身を灰の革で包み、全貌を現した。目の前の男は昼間の教師に間違いなかったが、今やこの男がただの教師だとは到底思えなかった。あまりにも『場馴れ』しすぎていた。


トギニは野生的な勘でリキの昼間の様子から疑惑を抱き、壁の向こうで今しがたのイブキとリキとの会話を盗み聞きした。その疑惑は殆ど確信に変わり、確実にリキの正体に近づいていた。

トギニは既に、ほぼ確信していた。

リキが「人の心が読める」存在、『根無し草ルルカ|』と呼ばれる者であることを。


リキはトギニの鋭さに驚き、それ故生じた彼の隙にも気付いていた。

「外したな」

弾は外れたのではなく、逃げられないための牽制に過ぎない。男に気がつかなかったのは何も彼が壁に隠れていたからだけではない。気配を消し潜むことに長け、なんの躊躇いもなく再び発砲するだろうと、昂りつつも落ち着き払った男の姿からはそう感じ取れた。

裏付けるように男はわずかに笑っていた。


「この人、どこから…!」

男は混乱したイブキの方を見据え、口を開いた。

「君、罰則は必ず与えると夕刻に言ったはずだ。」

イブキはリキの突拍子もない話のせいで、夕方自分に起こった出来事をすっかり忘れていた。

「銃まで持ち出されるようなことは、私…」

はは、と遮るように、トギニは笑った。

「君たち二人は夜中に抜け出してこんなところへ…、ここは部外者は立ち入り禁止だよ。思わず不審者かとびっくりして撃ってしまったじゃないか。」

トギニは大袈裟に肩をすくめて見せた。


いや、あの発砲は明らかに牽制だ。おかげで確かに迂闊に動けなくなった。イブキは目だけでリキの方を見た。


「騙されるな、イブキ」

自分を落ち着かせるために、リキは震えながらもトギニから目を離さず言った。すごい汗だ。

「なぜそう思う?」

トギニは目を細めて牽制してくる。

「私はここの教員であり、関係者だ。君達に故意に銃を向ける理由があるかな?」

「あなたがここの関係者になったのは、数週間前だ。それ以前が何者かは僕らは知らない。」

嘘だ、本懐は人殺しだ。人生で未だ経験したことのない危機に、今や顔面蒼白、手指は明らかに震え倒れそうだ。

彼は白子がいると聞きつけてここへ来たはずなのだ。

落ち着け、恐れるな…、コイツを止める方法はないのか…?

「誰かが目当てでここに来たのかも。」

トギニが鼻で笑った。

「君は優秀だが愚かだな。壁の向こうから聞こえたよ…君も幾多の頭のお堅い連中と一緒だ!君がどこで知ったのかはわからないが…君は私が君らにとっての卑しい一族、『食人族(クバタ)』だと言いたいのだろう!」

食人族という呼び名は、どちらかと言えば蔑称である。正式名称は、『クバタ』という古くからの民族名だ。

「『君』に偽っても仕方あるまい。君達の誤解を解かなくてはね…」

トギニは拳銃を撫でた。

「…リキ君。君は私達がなんなのか知っているのだろう。砂漠に暮らす(いにしえ)の戦闘民族。彼らが滅びてもなお、私のいくつかの特徴が彼らと合致するために、何度も後ろ指を刺されてきた。そして、彼らは正しい。」


「私は食人族『クバタ』の生き残りだ。」



トギニの低く深い声は、どこか講義のような錯覚を覚えた。


「クバタは歴史の上で、度々人を食してきた。死した戦士を、理不尽に失った愛する者を、敬意を込めて食して来たのだ。私達はそうやって、英霊が自らの血肉となり、力を与えるだろうと信じてきた。そうして戦士は、次の世代を護るのだ。」

「…しかし砂漠において肉は貴重でもあったから、戦いに敗れた我らの敵を食料とすることもあった。それを知った外の人間は、私達が化け物に見えたことと思う。」

イブキは昔父親にクバタの存在を教えてもらったことをぼんやりと思い出した。気高く危険で、不幸な…南の名の知れた部族だ。


「『食らう』為に人を殺す文化は我々にはない。あくまで…ついでだ。だがそのために我々の一族は、他の者から酷い迫害を受けた。バレンが現れる以前に、北人(ホルト)と闘い続けていたのは我々であったにも関わらずだ。一族の末路は…悲惨なものだった。」


強靭な肉体と精神を持つ彼らは先陣を切って北と闘ってきた。だがBarren(バレン)の出現により南人(バレン)にとって存在価値の無くなった食人族(クバタ)は、人外であるかのように扱われ、虐げられ駆逐され、悲しい結末を迎えたという。孤独になった漆黒の幼い少年はいつも命を狙われ、人を騙し、日陰者として逃げ延びた。それでも本だけは肌身離さず持っていた。胸を張って生きたい、いつかは(まっと)うに―――…

俯くトギニから、偽りのない悲哀と、同時に強くなる憎しみが伝わってきた。彼は同情を求めていた。


「…だがもう昔の話だ。其れは其れとして、今とは関係がない。」


「我々が人を食していたのは少し古い文化によるものだ、私の世代には受け継がれていない。私達も今の世に適応しなければならないからね。…しかしイメージは生き残り、今でも君がそうしたように、時に我々若い世代へも白い目が向けられる。」


『私達』———…、『我々』———!?

そう語る彼の意識の中に、その心当たりはもう存在しない。滅んだ者達を在るものとして扱う男に、リキは戸惑った。


「リキ君、私のことが気にくわないなら構わないが、一族のことを悪く言うのならこちらも黙ってはいないよ。」

率直に上手いやり方だ。事実を交えることで信憑性も与えつつこちらを訂正し、一族の体裁を守る(まっと)うな者であるかのように見せる。イブキの丸い目に戸惑いの色が浮かぶ。彼女の迷いを感じ、リキは焦った。


「―――嘘だ、貴方は今でも人を、食べ…!」

民族的な単位で『食べた』なんて話をしているわけじゃない。こいつだってわかってるはずだ!

こ の 男 が 最近まで人肉を食べている!そして、今もイブキを狙っている!それが問題なんだ!

「たっ…食べっ……くっ」

サブリミナルのように、過去の犠牲者の映像が紛れ込む。正直吐きそうだ。

…事実だろうと伝える術がない、物証がない!ムキになるほど差別主義者に見えるだろう!

トギニのイメージが瀑布のように雪崩れ、脂汗をかき、リキは思わず男の真っ黒な瞳から目を逸らした。これがよくない。そんなリキをトギニは見逃さなかった。


「まだ言うのかね!君は先ほど彼女に話していたね、私が人肉を喰うだとか口走っていたと!自身が迫害されていると知っている人間が一体いつ、どんなタイミングで誰にそんなことを漏らす!?まさか私の周りも食人族だらけだと!?」


理由はない。

狩りをするなら今日だ、とただ漠然とトギニは考えた。思い付きのようなもので、前の仕事を辞めてから…今までもずっとそうだった。今の生活は愛おしい、それでも———…

『来客』の影響も大きい。二人がトギニの存在に気づいたら、きっと彼を始末しに来るだろう。また逃亡生活が始まるのなら、御馳走のチャンスはもう今日しかない。

そう思っていた矢先、この少年にそれを見抜かれたのは計算外だった。


昼間にイブキのみを狙い、誘き出そうとしたが思いのほか少女の勘が良く、失敗した。こちらへ来てまだ日は浅いが、この少女の素行があまり良くないことはわかっている。…警戒されてしまった以上、本日中は呼び出しには応じないだろうと思った。

…少女の部屋を訪れた際、まだリキがイブキに会えていないと踏んだ。そこで、この建物の灯りをつけてイブキがいるものと思わせリキをおびき出した。この少年が獲物を呼び出すダシに使えるだろうと考えたからだ。

友人(イブキ)を売れば、|リキ(お前)の命は助かる。』

少年が根無し草ならばそれを逆手にとることが出来る。『根無し草』と『食人族』の本質は同じだからだ…世間に知られることを良しとしない。お前は根無し草だなと、知っていることが既に脅しとなる。

それでも首を縦に振らなければ、今度は———命を奪うと少年を脅し、標的を誘い込む。普通の人間はここで折れる。

…万に一つ、リキと話が決裂すれば、彼を密かに始末するつもりだった…やむを得ない。これは、仕方のない犠牲だ。娘の方も同じだ。力技だ。

警戒すべきは『来客』の二人で、本日決行してしまうことがマストだ。


だが幸運なことに、計画の途中で少女は現れたため、少年の役割は終わった。


事が済み自分用に解体して小さくした『残り』は、普段使われないこの『火葬炉』で処理してしまおうと考えていた。この場所は絶好の場であり、この火葬炉では骨まで燃やし残らないことを彼は知っている。

人がいなくなったらなったで、細かく気にする人間はここにはいない。集団が結託しないうちは、自分に分がある———施設は偽善者の箱だ。脅し方によっては臆病者たちは目を瞑り、口を閉ざす、集団の隙を突く。

ただ———…強欲なあの二人、札付きの二人(やつら)に見つかった場合だけ…立場を放棄しここを去らねばならないだろうが。元よりそれは覚悟の上だ。



「君は私を見かけだけで判断し、ただ銃を持って見回りに来た私を嵌めようとしている!食人族(クバタ)が危険だから身の回りから排除したいんだろう!

私も今までの社会的信用を築き上げるのにそれなりに苦労した。でっちあげもいい加減にしてくれたまえ!」


トギニの心から願っているような演技は、実に巧みだ。いや、演技というよりも、彼は自分の虚像を半ば現実として信じてしまっている。しかも悪いことに、イブキは少し気の毒に思っているようだ。僕の言ったことを疑っているわけではないが、何かの間違いかもしれないと思い始めている。


少年にとっては、非常にまずい展開だった。

流石迫害される側。少年の心理をよく理解した上での思惑だと読み取ることが出来ても、幾度もの似通った経験が脳裏に蘇り、それが彼を弱くした。


幼い頃から、相手の瞳を見ればその考えが勝手に流れ込んできた。

少年は、彼自身が素直で無防備だったために世の辛酸を舐めた。嘘を嘘と伝えるのは難しい。

人はまれに、見かけによらずとんでもないことを考えていたりする。宣教師が色欲まみれの好き放題だったり、穏やかな老婆が墓場を荒らしていたり…

あれやこれやを善意で他人に忠告しても、こちらを変人悪人扱いするだけだった。人の幻想に水を差す厄介者。人々は包装されていない容赦ない言葉で、彼の心を傷つけた…対象が憐れみを誘う相手であれば、余計事態は悪かった。

なぜ自分しか理解できないのか、全ては妄想、思い込みなのか———…リキ自身ですら、本で自分の正体を知るまではずっと自分を不気味に思っていたほどだ。

彼は『ほら吹き』として、前の町では生きてきた。


孤児院(ここ)に来て、忘れていた。

僕がどれだけ心配しても、イブキはきっと僕を信じてくれない。今までの人々のように。

これ以上食い下がれば、余計疑いを深める。

リキは同じ(てつわ)を踏むのはごめんだった。


『へえ!リキおまえ、人の心が読めるのかよ!カッケー!』

『うん、でも、他の人には内緒にしてね』


友人が『根無し草』であるのを知ることは、その時だけは良くても後々彼女にとって…いやお互いに重荷になる。


『…どうして!内緒って言ったじゃないか!どうして僕を避けるんだよ、…嫌いになったんだよ!!』

『う、うるせー!人の心を勝手に読むんじゃねえよ!お前なんか、気持ち悪いんだよ!』


今のイブキの秘密が、自分にとってそうであるように。

重荷が限度を超えたとき、遅かれ早かれ、裏切られ傷つくのは自分だ。



トギニはそこまでは想定していなかったが、自分について語るということは、自分をも刺激するということだった。

「さて、イブキ・ビ・エラ、君には昼間の件でも話がある。リキ君、君はとりあえず部屋に戻りたまえ!」

リキはハッとし、イブキは「げっ」と声を漏らした。

「そ、その銃しまってくれないかなぁ…」

イブキはそう言って銃を持つトギニの手元を見ると、落ち着きなく指を屈伸させていた。

「ああ、これはすまないね。」するりと、しかし少し名残惜しそうに、トギニは一度銃を懐にしまった。再び顔を見ると、瞬きもせず瞳孔も鼻翼も開き切っていた。

再びイブキの体に第六感的な警告が迸る。———非常に嫌な様子だ。

思わず後ずさる。


…時に。人の心の底が分かるということが、判断を鈍らせることがある。

どのみち施設を離れるのだ、一人殺すも二人殺すも同じこと。

本来トギニからすれば邪魔であるリキをさっさと殺してしまえばいいものを、苦労人である彼の僅かに残った同情心が、自分に境遇の少し似たリキを殺すことを躊躇ためらわせていた。

情。このカニバリストは、リキに情けをかけていた。しかもそれだけではない。トギニはリキに自分を見ていた。

帰るか残るか、生きるか死ぬか、何者か、自分で決めろと。

殺すことで生き延びてきた自分の様に。


「………僕は…」

トギニは何も言わずここを去れと、少年に促していた。今なら友人の死を目にすることなく助かることが出来ると。…確かに選択を誤れば僕は死ぬ。

トギニはイブキを知らないんだ。彼女がどれだけ恐ろしい思いをしようと、イブキは恐らく不死だから、…きっと問題はない。

僕は友人を売った卑怯者として生き…、イブキは、どうなるのかな。想像もつかない。傷つけられ、その存在が知られれば、悪魔(かみ)の子に普通の人生はないだろう。

自分が『こちら側』へ回るなんて、考えてもみなかった。


『…どうして!内緒って言ったじゃないか!どうして僕を避けるんだよ、…嫌いになったんだよ!!』


彼女は僕を恨むだろうか。でも誰も死なない。


何も変わらないんだ、人間なんて、どうせ騙しあって生きている。死ななければそれで儲けものだろう。

でも、もし………

今回はイブキの傷が治らなければ?


血は流れる。僕らと同じように。

心は痛む。僕らと同じように。


ふと異変に、リキははっとして顔を上げた。

見れば元々飢えていたトギニは、徐々に我慢の限界が近づき、獣へ近づいていた。

暴走した欲望が、人の理性から大きくコースアウトした。


「…先生…?」

事態は目に見えて急変していった。

「私はねぇ、イブキ・ビ・エラ!」

イブキは、トギニが首ごと突然イブキの方を向いたので本当にびっくりした。銃を持っているとはいえ無防備なほどにこっちを向いている。

「勉強家だからね、教会でも本当に勉強した。」

恍惚とし、ボヤくように話す。

「毎日毎日明け暮れて私は…どうにもならないとヤケを起こしスラムで死んでいった同胞達…世間に墓さえ受け入れられない…私の手では間に合わない…これで世界の何かが変わるならと………そんなときあの方に出逢った」


「白く、輝く………生に溢れた………『BARREN(バレン)』………」


今やトギニのイブキを見る眼は猟奇的な光を放っていた。

何故こんなことを急に話しだしたのか。こちらはバレンの話なんかしていない。イブキはトギニを警戒した。

明瞭だったさっきとは違い、おかしい。


———待たせすぎた!

リキは直感した。シンプルな欲求に、余計な枝葉をつける暇を与えてしまった。トギニの理性がガタガタと崩れていく。そもそも、ここまで綻びだらけだったのだ!

顔をあげてトギニを見た瞬間、卒倒しそうな量の情報が捻じ込まれる。


『仕方ない』


『どうして私だけが』


「白く、輝く………生に溢れた………『BARREN(バレン)』………」


『助けてくれ———…』


トギニがBarren(バレン)の名を呼んだ瞬間、リキの脳内にイメージが流れ込む。

何だ?


色黒の痩せた青年が、何人かの血に赤く染まった土壌に膝立ちになっている。その正面には再生していく筋肉質で真っ白な、男の脚、ベール、肩、そして———


「山羊の………頭?」




イブキ・ビ・エラ:異常な回復力を持つ少女。不死であるかは不明。

リキ:他人の心が正確に読める。人知れずトギニを攻略しようとする。

トギニ:リキの能力に気づく。食人嗜好がある。バレンに救われた。クバタ。

ディオルコ:『イブキ』という人物を探しているがエラとダグーが同一人物かは不明。

バレン:イェルバのメシア。


クバタ:食人族。南最強を誇ったが、後に迫害され滅亡した。

イェルバ:この世界の宗教団体の一つ。

根無し草:ルルカ。


第三話は自分の中でトラウマに近いです。

LEMURIAを本当の最初に構想したのは高校生の時なんですが、その後最初の数話は何度も焼き直されています。理由は「稚拙すぎたから」。高校生らしいっちゃらしいんですが、この物語、単純かつ矛盾だらけのスタートだったんです。しかも最初は漫画でしたので、動きのあるコマをいくつか並べておけばいいだろう、くらいの浅はかなものだったんです。それもそのはず、当時のコンセプトが「スピーディーでシンプル」と今と正反対でしたから。年を重ね段々と、在り得ない、成立し得ない…何より倫理的に軽すぎる展開に気付き。その最初の関門がこのド初っ端のこの話でした。

何度も良くしようと試みるも、小説というのは台紙からパズルのピースを切り出すようなもの…とでも言うのか、失くしたピースを後からどれだけ精巧に再現しようとしたところで、何度やっても弾け飛ぶ。

しかもシンプルであればあるほどボロが見え、それを隠そうと詳細を足すほど話は歪み…そんなに時間も取れないし。じゃあもういっそ足してから削ってみよう。そういうことを思い付き、やっと今の形に落ち着きました。少しは読みやすくなったかと思います。

イブキ、リキ、トギニは実は同じ存在なんですよ。気付いてもらえれば幸いです。リキという、空気のようでありながら特異な経験を沢山持っている少年の魅力を本当ならもっと引き出してあげられたのではないかと思いますが、今の自分では力不足のようで、ここらが一旦引き際かなと思います。ではまた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価を得て一層精進します。 小説家になろう 勝手にランキング
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ