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都での滞在ーその10-

収集が・・・・

 案内され辿り着いたそこは、中庭というよりも、小さな森の様だった。開けた場所にテーブルとイスなどは用意されているものの、周りには結構な高さの樹木が生い茂っていた。日中の暖かな日差しがさしつつも、木々の枝葉が受け止めてくれて、柔らかい木漏れ日と化している。耳をすませば、さわやかな風の音と、皆を和ませる様に(さえず)る小鳥の鳴き声が聞こえて来る。その様子を目にし思わず、


「とても素敵な場所ですね」


 誰に話し掛けるでもなく、一人そう呟くと、ちゃんと聞いていたマリカが、


「ありがとう御座います。私の一番大好きな場所を褒めて頂いて、とても嬉しいです」


 照れたように、頬を染めつつも、我に向かいそう言ってくるのだった。そんな会話を聞いたら普段は騒ぎ出す他の女の子達も、この風景は気に入ったのか、静かにし、周りの音に耳を傾けつつ、目では景観を楽しむのだった。暫く皆で、そんな心地よい時間を過ごしていると、お茶の準備を済ませた城の侍女達がやって来て、テーブルの上に、セッティングすると、マリカに向かい、


「マリカ様、支度が整いました。後は皆さまの妨げにならぬ様、控えておきますので、御用の際はお申し付け下さい」


 一旦礼をし、言葉を掛けた後、邪魔にならぬ様、後ろの方へと去ろうとした。なので我は、我が家方式を採用すべく、マリカに、


「此処の侍女は絶対に控えないと、何か罪になりますか?」


 笑顔でそう訊ねると、意味が分からなそうに、


「いいえ、そのような事は無いと思いますが、何故でしょう?」


 素直にそう聞き返してきたので、侍女達にも聞こえる様に、


「ここにいる我が家の彼女達もそうなのですが、我が家ではこういう場所で寛ぐときは、そこに居る者全てで、寛ぐ事にしています。なので、奥に行き立って控えるのではなく、こちらで一緒にお話ししましょう。そうすれば、お茶が切れた時なども、わざわざこちらが呼ばずとも気付いて注ぐ事も出来るでしょう? それに人が多い方が楽しい話も増えるはずです」


 周りの子達に目配せをしつつ、そう語り掛けると、我が家の子達は本当の事なので頷きつつも肯定しているのだが、城勤めの侍女たちは初めて言われる習慣に困惑しつつ、どうすればいいか悩んでいると、マリカが侍女達に向け、


「私の許嫁であるセオス様が、そう仰っているのですから、これからはこのメンバーの時はそのようにしましょう。なので、貴方たちの分も、今からお茶の準備をしてね」


 楽しそうに、そう話し掛ける。それでも、そうして良いものかと、おどおどしていると、城の方より突然訪ねて来て顔を出し、


「皆が楽しめる様な、新しい提案を下さったのです。他所からの賓客の時などは駄目でしょうが、身内の時は、王家でもそうしましょう」

「皆聞いたのでしょう、さあ、準備をして、楽しい時間を過ごしましょう」


 会話をまとめる様にそう話す、ソフィア王妃とアンジェリカ王女に視線を向け、


「ごきげんよう、お二方。どうしてこちらに?」


 マリカに目線で確認し、私は呼んでいませんと、首を振って来るので、そう訊ねてみると、


「未来の息子が遊びに来ていると聞いたので、顔を見に来たのですが」


 王妃は堂々とそう答え、アンジェリカは、


「マリカと同じくセオス様とお話ししたくて」


 姉妹で顔を合わせつつ、そう言ってきたので、取り敢えず、


「え~、皆さん、本来此処へは、うちの女の子達と初顔合わせのマリカに仲良くなってもらえるよう、会話の場所を作りに来たのですが、何故か王家の方があと二人いらっしゃったので、唖然として言葉の告げずにいる家族に、まず紹介しますね」


 前置きに、そう話を入れておいて、


「こちらが、我の姉上でアイシャ姉、で世話係筆頭? のエリーナさん、後は順に、ルナール、ネイエ、カーネ、フェールです。皆、こちらはさっき紹介しましたが改めて、許嫁のマリカ、で初めて紹介するのがマリカの母上で王妃のソフィア様、でマリカの姉のアンジェリカです。皆仲良くしてくださいね。ああ、それからお城の侍女の方々も、これから顔を出した時は他人行儀は苦手なので、仲良くしてもらえると助かります」


 収集が付かなくなりそうなので、一度に皆に向け、そう紹介して、


「後は個別でも皆ででも構いませんので、お茶を飲みつつ聞きたい事でも聞きながら、楽しく話して過ごしましょう」


 お互いへの紹介を、まとめてなんとか話し終えると、やっと再起動しだした姉上が、


「お、王妃様が、な、何でわざわざきてるのよ、セオ君」


 緊張しつつそう話しかけて来て、冷静な状態なのか判らないエリーナさんは、王妃に向け、


「祖母、母、共々、家族でお世話になっております。エリーナと申します」


頭を深々と下げつつ、そう挨拶していた。で、他の四人は余りの立場の違いに、実感がわかないのか、


「王妃様ですって」

「お綺麗な方ですね」

「えらいかたなのです~」

「若旦那様~、挨拶した方が~いいのですか~」


 終始、話して来る会話も他人事の様であった。逆に王家の面々は、


「お姉さま、セオス様が生れたときからのお話をお聞かせください」

 

 アイシャに向け、マリカがさっそく話し掛けると、アンジェリカも、


「あ、私もそのお話は伺いたいです」


 姉妹揃って、同じ話題に興味深々の様だった。王妃は話しかけてきたエリーナに王の乳母の祖母の話を聞かせたり、マリカの世話をしてくれている母の仕事ぶりを話したりしていた。その様子に、城の侍女達も、徐々に緊張を解き、最初は城の侍女同士だったのが、後はうちの女の子達とも楽しく会話をして皆で盛り上がっていったのだった。


つかなくなりました^-^;

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