都での滞在ーその28-
つづきですのにゃ^-^
「先ずは皆に紹介しよう。今年5歳になった我が娘、マリカだ」
貴族たちに向け王がそう言うと、椅子から立ち上がり、ドレスの裾を軽くつまみ、礼をしつつ、
「皆様、お初にお目にかかります、マリカと申します。以後よろしくお願いします」
挨拶し終え、椅子へと座り直すと貴族達より歓声が上がる。
「おお、なんと立派な。あれで五歳とは先が楽しみですな」
「素晴らしい王女様だ」
「可愛らしい上に、聡明でいらっしゃるとは、是非我が息子の妃に」
皆、見事な挨拶に見惚れているのだった。そこへ再び王が、
「先程の、発言した子よ、こちらへ」
唖然とする貴族たちを尻目に、王が呼びかける。一度確認するべきかと、
「王よ、我の事なのでしょうか?」
我がそう訊ねると、笑顔を向けつつ、
「そうだ、セオス・アルギュロス。儂の前へ」
含み笑いを浮かべつつ、そう言ってきた。その様子に、これが昨日マリカが言っていた事かな、などと考えつつも、他の貴族の手前、素直に従う事にした。王の前へと進み出ると、王は椅子より立ち上がり、我の肩に手を添えると、貴族たちの方を向かせ、その方に向け、
「我が臣下たる皆に、伝える。この王錫とアルギュロス家の家宝の剣を神より与えられしは、このセオスなり。しかし、王錫ゆえ、すぐに王家に献上してくれた。なので、皆に言っておく、本来なら、王錫を神より授けられ携えるのはこの子であった。エレオノーラ様もそう告げるという事がどういう意味か、理解して欲しい。なので王家としては、縁を結ぶため、この度紹介したマリカをこのセオスの許嫁とし、王都の学院に通う際には、王子と学友として過ごしてもらう事にしておる。生涯変わらぬ縁故が両家に紡がれることを喜び、皆に報告する」
度肝を抜かれた貴族たちが唖然とするも、息子の嫁にと画策し縁を結ぼうとした貴族達は、
「王よ、何かの間違いなのでは?」
「出来たばかりの男爵家の子になどと、マリカ様が可哀想では?」
口々に撤回を今の時点でさせておこうと躍起になるが、王は、
「マリカよ、この件に不服はあるかな?」
王女に向けそう訊ねると、満面の笑顔で、
「不服など、とんでもありません。喜びで一杯です。早くその日が来ることを、待ちわびているほどですわ」
王へとすぐにそう答える。当事者たる王女の笑顔での言葉に一旦は引くも、小さき領故、力でと考える者が出そうな雰囲気に、王がまた、含み笑いを浮かべつつ、無知とは恐ろしいな、などと考えつつ、口を開く、
「メルゼール辺境伯よ、儂も真実を知る故、絶対に敵対はせぬが、此処に居る貴族共に聞かせてやって欲しい。尚、この返答は不敬罪には値しないと、約束しよう。で、聞くが、もし国軍とシールズが争いになったとして、隣であるそなたは、どちらに付く?」
いきなり訊ねられた辺境伯は、王や周りの貴族たちを一度見回しつつ、すぐに口を開くと、
「王には申し訳ありませんが、シールズに付く事でしょう。恩がある、という事も御座いますが、恐ろしき”力”というものを、この目で見た者としては敵対する気にはなりませんな。我が街が港町で栄えているにも拘らず、辺境伯と言われるのはひとえに武力なしでは治められなかった故。それでも平定できなかったものを、シールズの誰、とは申しませんが、一人の者がそれを成した。という事だけは、此処に居る貴族達にもお教えしておきましょう。簡単に言えば・・・・」
唾をのみつつ、話を聞いていた貴族が、
「簡単に言えば?」
メルゼール伯へと真剣に問いかける。それに、
「沖にある海賊達がいた島が、更地と化し今現在は壊滅しているという事です。一人の者の手によって。それを直に見ていた我が兵たちにその者と争えと言っても無理というものでしょう」
笑顔でそう皆えと答えると、その後にも一言、
「王よ、これも不敬罪にはして欲しくはないのですが、セオス殿には、我が娘リーシャをと思っております故」
王に向け、挑戦的な笑顔を向けると、王も笑顔を向けつつ、
「考えるのは構わんが、セオス殿はマリカの許嫁を認めてくれておるのでな。こちらが優先であろうな」
高笑いが聞こえそうな勝ち誇ったような声が響いた。そこへ間髪いれず、
「いえいえ、うちは隣街同士で仲が良いので、大人になる頃には判りませんぞ」
二人して熱い言い合いを始めそうな所へ、宰相であるベトルスが、咳払いをしつつ、
「ゴホン、あ~お二方、国の代表たるお二人のお話は後にして、皆へのお話を先に」
諭す様にそう言うと、普段の威厳ある王に戻り、
「皆、すまなかった。王家個人の話になってしまったことを詫びる。で、今までの話が今日言うべき事の一つと、もう一つは、先の事件に関してなのだが、最近貴公らに弛みが見える。なので各領へと内密に使者を送り街の住民よりの話を聞く事を、ここに告げておく。ひどい話が出た領主たる貴族にはそれ相応の、処置をしていく事を此処に告げる。爵位があるから永代などとは今後夢にも思わぬ様、民の為に尽くす様に」
騒然とする貴族達へとそう告げると、
「今年の拝礼の儀式は此処までとする。大儀であった」
響く威厳ある声でそうつげ、皆一斉に礼を執り頭を下げると、王家の者は奥へと先に下がって行くのだった。で、残った貴族達の方に向けベトルスが、
「アルギュロス家の方々は、この後、王がお話があるそうなので残られるように」
こちらに向けそう告げて来る。その言葉を聞き、羨ましそうな者、縁を作ろうとする者、蹴落とそうとする者、色々な考えの者がいるようだが、いつまでも残るわけにもいかず、言われた我が家の者を残し去ってゆくのだった。
まだおわらなかったのにゃ^-^;




