表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/44

第26景 保身に走る上級指揮官

 今朝ケサ、病院の受付に十三人の負傷した兵隊さんが並んでいました。


最後尾に並んでいる兵隊さんは、二人の兵隊さんの肩を借りて立っていました。

すると突然、肩を貸している若い兵隊さんの一人が、


 「軍医を呼べッ!」


と怒鳴ったのです。

外が騒がしいので河村看護兵が赤十字の暖簾幕ノレンマクを割って顔を出しました。


 「・・・どうしました」


河村看護兵は看護婦に尋ねました。

するとその若い兵隊は河村看護兵を見て再度、


 「おい、衛生兵! いつまで待たせるのか。上官は重傷だぞ。軍医を呼べッ!」


と怒鳴りました。

私は何事かと思い病院の窓から、暫く外を覗いて居りました。

見ると怪我ケガをした年配の体格の良い兵隊さんが憮然とした態度で河村看護兵を睨んでいます。

階級章はハズしてありましたが、一見して『上級指揮官』と云う事が分かりました。

その兵隊さんの後ろには『若い女性(慰安婦)』が立っています。


私は『女性を連れた兵隊』さんは初めて見ました。


 暫くして「崔 軍医」が外に出て来ました。

この崔 軍医は「朝鮮半島出身」の軍医だそうです。

私は今まで、その事に全く気付きませんでした。

普段の崔 軍医は非常に寡黙カモクな方で、必要以外の事をほとんど喋りません。

が、この崔 軍医がハッキリとした口調でその大柄な兵隊さんに、


 「順番が有ります。静かにお待ち下さい」


と言い放ったのです。

その「口調」を聞いて、負傷した階級章を外した上級指揮官は地面に唾を吐き、


 「何ッ! 『この朝鮮人が』・・・」


サゲスみました。

連れて来た若い女性は、その吐き捨てた様な『朝鮮人』と言う言葉を聞いて、ウツムいてしまいました。


どうやら、その女性も朝鮮人慰安婦の方の様でした。


私はその言葉に非常に憤慨して、心が痛みました。

この後に及んで、まだこの上級指揮官らしき体格の兵隊さんは、人間を「差別」して居るのです。

この莚の病院では、階級は名札に書いてあるだけで、亡くなってしまった場合の記録簿に残す為の目印であります。あまり意味など無いのです。まして私達は「赤十字の旗」を掲げている以上、全ての人間に「愛と平等」の精神を持って、接して居るのです。

ただし大きな陸軍病院との違いは、此処は適当な環境と薬、豊富な手術道具などが不足している事だけなのです。

すると崔 軍医は少し笑って、


 「待つ事が出来ませんか・・・」


と、その体格の良い兵隊さんに優しく尋ねました。

その兵隊さんは崔 軍医を睨んで、


 「キサマ~・・・、俺をバカにしたな!」


と言ったのです。

崔 軍医は、


 「そんなに、生きたいのですか?」


と冷静に聞きました。

体格の良い兵隊さんは怒りに震えています。

連れの二人の兵隊さんは、その「上官」を必死に静止しています。

暫くしてこの兵隊さんの順番が廻って来ました。


 此処から先は治療室に居た野嶋婦長のお話です。


『治療室で、渡部軍医に傷を治療してもらう際に、この兵隊さんはジブンで自分の足を撃ったと言ったそうです。弾は貫通していました。何故ナゼ、撃ったのかと渡部軍医が尋ねると、


 「責任を取って一命を奉じた」


と言ったそうです。

渡部軍医は、


 「急所を外してですか?」


と怪訝な顔で、体格の良い兵隊さんの眼を覗いたそうです。

するとこの兵隊さんは、


 「そんな事はオマエに話す必要はない。それより次の病院船の情報は入ってないのか」


と渡部軍医に聞いたそうです。

野嶋婦長は、ハラワタが煮えくりかえって、「この男」を蹴飛ばしてやろかと思ったそうです。

その兵隊の名前ですか?

それはちょっと・・・。

ただ、『陸軍の大佐』だと野嶋婦長は言ってました。


 この兵隊さんは、噂では帰国して元気に生存して居たと聞いています。


沢山、居たそうです。

こう云う急所を外し、『保身に走る上級指揮官』達が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ