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序 景
帰れない兵隊が居る。
沢山の帰れない兵隊が居る。
戦争が終わって八十余年経っても、
あの洞窟の中には船を待っている兵隊達が居る。
『恋山の詩集』から
この作品を戦後八三年、未だ帰れない『軍服を纏った若き英霊達』に捧げます。
あの時・・・。
私(従軍看護婦・杉浦仁美 十八歳)は、大きな蝶(極楽蝶)に導かれて、ジャワの第5陸軍病院から東部ニューギニア、『ラエの第3野戦病院』に赴任して来ました。
そこは赤十字の旗が翻る、椰子の葉で屋根を葺いただけの病院でした。
兵隊さん達は全員、筵の上に寝かされて居ました。
病院の中は、死ねない、降伏できない兵隊さん達ばかりでした。
吐き気をもよおす様な異様な匂い・・・。
手が無い、足が無い、顔が半分無い。
それでも兵隊さん達は生きているのです。
二度と故国に帰る事は出来ないだろう『壊れた兵隊』さん達でした。




