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悪役令嬢はお姉様と呼ばれたい!  作者: 春乃春海
第二章 悪役令嬢は次期当主を目指す
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40. 商品開発!


 早速、私のアイディアの元、農村では来年に向けて新しいブドウ作りの準備が始まったらしい。


 当初の予定では農村で干しブドウを使ったお菓子やパンを作る予定だったが、小麦やバターといった材料費がかかること、また輸送の問題から、加工品は農村ではなく、市場のある町で作ることとなった。

 町の菓子工房で作った方が材料も豊富で、貴族向けのより本格的な商品が作れる上に、町であれば屋敷からも比較的近く、お出かけと称してパトリシアの目から逃れ、私も試作品作りに参加することができた。

 農村から干しブドウを卸し、町でお菓子を販売すれば、農村だけでなく領地全体が潤うことにも繋がるので良いことづくめの提案であった。


 何度目かになる打ち合わせで、いつものように店の二階の個室に案内された私は、テーブルに広げられた試作品を前に料理人と話し合いをしていた。


「当初より見た目も華やかになったじゃない」

「はい。お嬢様の意見を取り入れて、干しブドウ以外にオレンジやベリーといった乾燥した果物を生地に入れてみました。細かく切って混ぜ込んだので、食感も気にならないかと思われます」


 菓子工房で協力してくれている料理人が熱心に説明する。

 貴族向けの新しい菓子作りとあって、工房も気合が入っているようだ。

 普段は町民から裕福な商人など、相手によって金額の見合ったお菓子の販売を行なっているが、貴族向けの商品となると格が違う。

 試作品作りには伯爵家から材料費を融資していることもあり、それはもう熱意を持って開発に力を注いでくれていた。

 

 私も何度か試食に来店しているが、その度に助言した改良点やアドバイスを取り入れ、ほぼ商品が完成しつつあった。


「うん。確かに口当たりも良いわ。ここまで細かいと、果物の柔らかい食感も気にならないわね。むしろ良いアクセントになっているわ」

「甘さはいかがでしょう」

「だいぶ甘くしたのね」

「ええ。ハインツさんから貴族の方々は甘い方が好まれるとお聞きしたので」

「確かにクリームとか使わないなら、このくらいの甘さの方が良いかしら。でも、ちょっとくどい甘さに感じるわ。…………そうね。甘くしたいのなら、生地に甘みを加えるんじゃなくて、上に砂糖のコーティングを付けるのはどう? 砂糖を粉砕したものを水に溶いて、焼いた生地の上にかけるの。見た目も白くて華やかになるし、甘いものが苦手の方は砂糖がついていない所を切り取れば、食べ分けることもできるわ」

「ほほう。なるほど。そんな技が。早速やってみましょう!」


 料理人は私から詳しい作り方を聞くと意気揚々に部屋から出て行った。それと入れ替わりに今度は店のオーナーが顔を出す。


「グレースお嬢様。ハインツさんが到着致しました」

「ここに通して」

「はい。かしこまりました」


 しばらくして、オーナーと共にハインツが現れる。

 相変わらず青白い無愛想な顔は変わりなく、笑顔の一つ浮かべることなくハインツは挨拶をして、席に着いた。


「試食の途中でしたかな」

「ええ。貴方も食べてみて」


 私がハインツに勧めると、オーナーが「今、皿を用意します」と言って部屋を出て行った。

 待っている間、近況を訊ねる。


「お父様達はどう?」

「ええ。宣伝に協力して下さるそうです。奥様なんかは『私が社交界の流行を作るチャンス』と、それはもう息巻いておりますよ」

「……上手く乗せたわね」


 張り切るパトリシアの様子が目に浮かぶようだ。


「私が関与していることはバレていない?」

「はい。農村と私の方で考えた案だと伝えてあります。ここの工房に通われていることも気づいておりません」

「そう。良かったわ」


 話の区切りがついたタイミングでオーナーが食器を持ってきたので、ハインツに試食の感想を訊くことにした。

 ハインツは幾つかの商品を食べて問題ないと頷く。


「商品化は間近ですね」

「ええ。皆頑張ってくれたわ。貴方もあちこち飛び回ってくれてありがとう」

「いいえ。仕事ですから」


 澄ました顔でハインツは言うが、農村やら菓子工房、商工会に話を通すために働いてくれたのはハインツだ。

 お祖父様が目のつけた相談役というだけあって彼は優秀だった。

 ここまで早く事が運んでいるのもハインツのおかげだ。


「あとは張り切っているお継母様達に任せましょう。上手く宣伝してくれるといいけれど」

「これだけお金もかけていますから、売れてもらわなければ困ります」

「フフ。それもそうね」




 こうして、レトナークの干しブドウを使った商品は完成し、冬の社交界から出回るようになった。

 それが貴族の間でちょっとしたブームを見せるのは少しだけ先の話である。

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