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悪役令嬢はお姉様と呼ばれたい!  作者: 春乃春海
第二章 悪役令嬢は次期当主を目指す
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39. お嬢様のプレゼン会③


 私はバンとテーブルを叩いて身を乗り出し言った。


「広告塔を立てればいいのよ!」


 勢い良く提案する私に対して、ハインツとセドリックはポカンとした顔を見せる。


「広告塔?」

「有名人に宣伝してもらうってことよ!」


 私が説明するとセドリックは「ああ」と頷いた。


「確かに貴族の中には自分で開いたサロンやパーティで自領の商品を広めたりしておりますね。しかし、お嬢様。どなたにそれを頼むですか? どなたかツテでも?」


 セドリックの質問に私はニヤリと笑った。


「ツテなんか探さなくても、うちには目立つ広告棟が二人もいるじゃない」

「……なるほど、旦那様と奥様ですか」

 

 すぐにピンと来たハインツが答える。


「その通り! 二人には社交界で商品をガンガン勧めてもらいましょう。無駄に社交場で遊び惚けている、顔の広いお二人ですもの。使わない手はないわ!」

「確かに、旦那様も奥様も顔と話術だけは上手い方。良い案かもしれませんね」

「お二人とも、あまりに口が……」


 私とハインツがここぞとばかりにお父様達の影口を織り交ぜると、セドリックが眉を顰めて諌めた。


「いいじゃない。セドリック。事実を述べているだけよ!」

「そうです。こんな時に役に立ってもらわなければ、ただの穀潰しです。お二人には宣伝に協力して貰いましょう。交渉は私にお任せ下さい。売り上げ金をチラつかせて乗せて見せますよ」

「素晴らしいわ、ハインツ!さすがお祖父様の右腕ね」

「お嬢様こそ、中々頭のキレる方で嬉しく思います」


 私とハインツは不敵な笑みを浮かべて頷き合う。


「……はぁ。こんなところで意気投合なさるとは思いませんでした」


 セドリックは諦めたように肩を竦めた。


「それで、ハインツ。お嬢様へのテストは合格ですか?」

「結果次第と言いたいところですが。良いでしょう。商品のアイデアだけでなく、販路に関する案も提案してくださいましたことですしね。グレース様は運営に関する素質があるのかもしれません」

「やったー!」


 私は素直に喜びの声を上げた。


「これで私も領地運営に正式に関われるのね!」

「おめでとうございます。お嬢様」

「ありがとう、セドリック」


 セドリックと喜びを分かち合っていると、ハインツは「ふむ」と私の顔をマジマジと観察する。


「もしかしたら、先代に似ているのは目つきだけではないのかも知れませんね」

「お祖父様の顔にソックリって、嬉しくないのだけど?」


 褒められているのか、貶されているのかよく分からない言葉だった。


「おや、力強い目で良いではないですか。私も何度、あの猛禽類のような目で睨まれたことか。今思い出しても背筋が凍りそうになります」


 その割にはうっとりと恍惚とした表情でハインツは言う。


 余程、お祖父様に心酔しているのだろう。

 行き過ぎていて、ちょっと怖くもあるが……

 ひょっとしてハインツってお祖父様フリーク?


 私が若干引いていると、ハインツは真顔に戻す。


「グレース様。確認ですが、この事業を進めるに当たって、お嬢様の名前を出さなくてよろしいのですか? もし、これらが上手くいったとして、現状では手柄は当主である旦那様のものになりますよ」

「ええ、そうね」


 彼が言うことはわかっている。

 例え私のアイディアだとしても、私が運営に関わっていることを明言しなければ、全ての手柄は当主であるお父様のものだ。

 しかし。


「……今はまだ時期ではないから。パトリシアお継母様に警戒されたくないもの」


 そう。まだ彼女に私の意向を示すにはまだ早い。

 子供の私がでしゃばっているといるとわかったら、彼女は速攻私をこの屋敷から追い出す準備を始めるだろう。

 私はゲームでの非情な性格を見せるパトリシアの本性を知っている。

 今の私にはまだ彼女に太刀打ち出来る手数はほとんどないのだ。

 

 その為にも、今は水面下で力をつけなければいけない。

 勉強をし、実力と功績を積み上げ、味方を増やす。

 そして、時を見てパトリシアと真っ向から対決するのだ。


 全ては愛するミラのため。

 そしてレトナーク領を支える領民のために。

 

「かしこまりました。グレース様にもご事情があるのですね」

「ええ。でも、きっと私は領主として表に立つわ。その時は、お祖父様みたいな領民から慕われる領主になりたいものね」

「それは随分と高い目標ですな」


 ハインツは澄ました声でそう言うが、その目は面白がっていた。


「そうね。だから私には優秀な相談役が必要なの。これからよろしくね、ハインツ!」


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