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悪役令嬢はお姉様と呼ばれたい!  作者: 春乃春海
第一章 悪役令嬢からの目覚め
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18. お父様の爆弾発言




「グレース、ミラ。話がある」


 メインディッシュを食べ終え、デザートのフルーツが出されたタイミングでお父様がにっこりと微笑んで私たちに言った。


 ……子供たちに無関心なお父様のお話なんて嫌な予感しかない。


 私はお父様の後ろに控える執事のセドリックにそっと目をやる。

 案の定、話の内容を知っているのであろうセドリックはなんとも言えない渋い顔をして立っている。


 ……うわぁ、聞きたくない。


「お話とはなんでしょうか」


 まだ父親のクズクズしい正体を知らないミラが、まるでプレゼントを貰う子供のように目を輝かせて、お父様に訊ねる。

 普段、自分たちに積極的に話をしない父親から話を振られて喜ぶミラが不憫だ。


 お父様はミラの言葉を受けて、勿体ぶるようにこの場にいる人間を見渡し、皆が自分に注目していることを確認すると、満足そうに口を開いた。


「うむ。私は新しい妻を迎え入れようと思う」


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 当主の爆弾発言に、私とミラのみならず、この場にいた侍従たちもが驚きに息を呑んだ。

 シンと静まる食堂で笑顔でいるのは、お父様のみだ。


「…………お父様? リリーお継母様が亡くなって、まだ半年も経っていませんよね?」


 私は怒りに震えそうになるのを堪えながら、一人浮ついた笑みを浮かべている父親に言った。


「それはそうだが……。しかし、お前たちも早く新しい母親が必要だろう?」


 まったく悪びれる様子もなく、子供をダシにしようとするのが、クズな所以だ。

 

 ははー。さすがは〇〇(ピー)〇〇(ピー)〇〇(ピー)な最低な〇〇(ピー)だ。ホント、〇〇(ピー)すればいいのに。この〇〇(ピー)っ!(あまりの汚い言葉に自主規制中)


「……新しいお母様?」


 向かいの席でミラがボソリと呟く。

 私はハッとミラに顔を向けた。

 状況がまだわからないかのように、キョトンとしたミラの顔が徐々に曇りだす。


「ミラっ! 部屋に戻るわよ」


 私はバンとテーブルを叩いて席を立ち、ミラの侍女のアイリに目配せする。

 状況を察したアイリは急いでミラを席から立たせた。


「グレース? ミラ?どうしたんだ?まだ話が途中だ。デザートも残っているぞ」

「部屋でいただきます!」


 何が問題なのか全くわかっていない父親に吐き捨てるように叫ぶと、私はミラの手を取って、食堂から飛び出した。



――――――



「全くっ! お父様たら、なんてデリカシーがないのかしら!」


 私が叫ぶと、マリアとアイリの侍女たちは無言でコクコクと頷く。


 食堂を出て、私たちはまだ混乱状態のミラを連れて、彼女の部屋へと移動していた。


 一人静かに俯いているミラをちらりと見る。

 母親を亡くしたばかりのミラに新しい母親の話なんて、あまりにショックなことだろう。

 きっと、お父様に失望したに違いない。


 ーーこれはもう正直に話すしかないわね。


「……ミラ、あのね。残念だけど、私たちのお父様はああいう人なの。特に女性関係にダラシなくて、私のお母様もそれで家を出たくらいなの」

「お嬢様。身も蓋もないことを……」

「マリアは黙ってて。これは私たちが受け入れなくてはいけない真実よ」

「……お姉様」


 ミラが不安そうに顔を上げる。


「私、まだ新しいお母様なんて考えられなくて……」

「いいのよ、ミラ。それが当然よ」

「お姉様。私、どうすれば?」

「無理しなくていいのよ。まだ貴女には心の整理の時間が必要だもの。でも貴女ならきっと乗り越えられるわ。それにね。もし、何があってもミラはお姉様であるこの私が守るわっ! だから安心して」

「……はい」


 私の言葉にミラは頷くも、その表情は暗いままだ。

 無理もない。

 今は何を言っても励ましの言葉にならないだろう。

 あまりにも突然すぎる再婚話だ。


 ーーああ、もうっ!

 私の可愛いミラにこんなに悲しい顔をさせるなんて!

 全く! わかっていたけど、お父様って本当に最低っ!!



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