女子マネージャー選挙
4月最後の週の月曜日
遂に全校集会の日がやってきた。生徒たちはこの日までに投票を済ませ、この集会の後行われる、女子マネージャ選挙で甲子園を目指すマネージャーが決められるのである。
推薦枠で圧倒している、すずみとあきら以外の立候補者は投票前に辞退をし、二人の決戦となったが、新聞部の行った投票の出口調査ではまさに五分と五分。2年生に人気のあきらに対し、実績を知っている3年生に人気のすずみ。勝敗のゆくえは1年生の投票如何によると思われたが、データではこちらも五分と五分。一年生候補が辞退をしたこともあり、1年生にとっては二人とも初めて見る顔。どちらが勝っても良いと考えたのだろう。
GW前の校長の挨拶が終わると今年の女子マネージャーの候補が読み上げられる。
「ふふん、読み上げられるのは私」
と勝利を確信しているすずみ。
「やるだけはやった、あとは結果のみ」
とあきら。
「本年度の、女子マネージャー候補は」
「3年4組、名取すずみ!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「2年2組、二階堂あきら!」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
体育館は熱狂の渦となり、そして静まり返った。
「そして、本年度の野球部、女子マネージャーは!」
シーンと静まり返る、場内。何人かが咳をしている。
「両者、二人を本年度の女子マネージャーとする!」
ええっ!
少し間をおいて
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「な、なんですって!」
とすずみ
「ふふふ、まだまだ勝負は続くわけね」
とあきら。
校長が汗を拭き吹き、再登場し、今回の選定理由を説明した。
「あー、名取くんは2年前の甲子園出場の実績もあり、我が校を甲子園を導くのに最適な人材と誰もが思うところである。しかしながら、二階堂くんの目標、甲子園優勝にも生徒たちは大いに魅力を感じ、票はっ二つに割れた。名取くんの332に対し二階堂くんは318。推薦は、名取くんの14に対し、二階堂くんの17。この結果からしても、一人を選ぶよりも、二人をマネージャに選定した方が、我が校にとってより良い結果が出ると判断した」
「さぁ、明日から甲子園を目指し、全国優勝を目指し、我が校に一丸となって挑もうではないか!目指すは高野の頂!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「わからない、わからないわ、あたしが選挙に勝ったのよ!なぜ、なぜ私一人にならないの?」
すずみが混乱して、幹部の女性体育教師に言い寄った。
「名取さん、女の階級、’女子ヒエ’とは辛く、厳しい戦いよ。貴方にはもっと上を目指して欲しい、そんな願いも校長にはあるのだと思うわ」
壇上に登ったあきらが手を差し伸べてきた
「すずみさん、これから甲子園までの道のり、一緒に乗り越えて行きましょう。私達なら絶対にやれるわ」
「いやよ!あたしが、あたしが……」
すずみは泣き崩れそうになった。高校最後の思い出を独占することは叶わなかった。この先、甲子園に出場をしても、甲子園で優勝をしても、自分が単独でトップに輝くことはない。一人で頂点に達することはないのだ。あきらのにこやかな笑顔に対し、すずみの落胆は予想以上に大きかった。
「すずみさん、僕たちはすずみさんが一番だと思ってますから」
「そうだ、すずみん、ぼくらのすずみん、みんなを甲子園へ!」
すずみ派の生徒が勇気付けると、ようやく立ち上がり、そして宣言した。
「こうなったら、優勝を狙うわ!たとえこの身がどうなろうとも!絶対に甲子園優勝よ!、全てにおいて一番を取るわ!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
すずみのこの高らかな宣言で冥王星高校の夏は始まったのである。