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女子マネ甲子園  作者: ふじふじ
3/15

あの手この手の人気取り

「あ、あ、あああ」


すずみはなすすべもなく、野球部練習にて自らの戦況を見つめるだけとなってしまい、おもわず声を上げた。


4月も半ばだ。しかし2週間も経たないうちに、二階堂あきらは野球部員の半数と彼女になってしまった。毎日のように違う選手と偶然登校、手作り弁当、下駄箱待ち伏せ、下校プリクラなど、王道のイベントをこなし、部員どうていの心をガッチリとつかんでしまった。彼女契約をした部員は十数人に及ぶが、スマホのアプリを使った完璧なスケジュール管理で、まるで平行世界の住人のように次々とイベントをこなしていくあきら。


部員は自分一人のためにこの女が尽くしているわけではないと知りながらも、彼女の部員の好みを分析した仕草に、次々と陥落してしまう。


マネージャー選挙まで二週間、全校生徒の人気は圧倒的にすずみにあるが、マネージャーになるには野球部の半数以上の同意が必要である。今までは圧倒的な民意でプレッシャーをかけて部員全員の同意を強引に得ていたのであるが、このままでは二階堂に内部から崩されれてしまう。


今は味方している、エースの加賀にしても陥落するのは時間の問題である。


「こうなったら」


すずみはチアリーダー部を訪れると、練習場を野球部のベンチ前にするように交渉し、あきらになびいていない選手の名ざし応援をするように指示した。無論、報酬は甲子園での特別待遇である。チア部に敵対する応援団より前の位置での応援を約束し、好みの部員がいれば紹介サービスをするというデート斡旋も取り入れた。


チア部はキャーキャー言いながらぶいんを選定していった。


「あたしー、一年の井田くんがいい、かわいいの」

「筋肉の加賀くんね、触ってみたい、映画でしがみつきたい〜」


「ふふふん、どれもこれも叶えてあげるわ」


すずみ自らは部員全員とデートはできないが、サービス利用する立場で外注しようという作戦は見事にハマり、二階堂の彼女侵略は頭打ちになった。


「ぐぬぬぅ、名取すずみぃぃ〜、自分はヘタレなくせに大量のビッチを寄こして対応するとはぁ」


へたすると地味ファッション一本のあきらの容姿では今の彼氏達も横取りされかねない。


「こうなったら」


「今はプリクラ止まりだけれど、こ、甲子園に行ったら、あたし達、い、一線を超えてもいいわ」


眼鏡を外し、黒髪ロングのウィッグを被って制服を改造し、まだ4月だというのに布面積を少なくしたいでたちの二階堂あきらは、自らが支配している全部員かれしに上目遣いで宣言した。


チアガールになびきかけていた部員も、これにはやられてしまった。


「ちいい、チア部、あんた達も少し淫らになれないの?」


チア部は意外にも反抗してきた。


「だめよ、すずみさん、ユニフォームを着崩したりしたら、活動停止になってしまうわ」

「そうそう、しかもわたしたちは男の子と遊びたいだけ。真剣にお付き合いたいわけじゃないの」

「お付き合いするならやっぱり自立してるお金持よね、マネージャの下僕みたいな野球部員ではなく生徒会とか」


「ちっ、の、脳筋のくせに余計な知能を…」


横目で見ていたあきらは勝ち誇ったようにすずみに言った。


「ふふふん、すずみさん、あなたには覚悟がないわ。甲子園に全てを賭けるという覚悟がね」

「何よ、絶対にゆずらないわよ、全校生徒の人気はこちらが上なのだから」

「はたしてそうかしら、最近野球部の威圧的な態度と暴力が減ってきたという噂が立っているわ。何でもマネージャに対抗馬が立ってきたからだとか。あっはっはっは。やはりあなたの強引なやり方に疑問を持つ者も多かったってことね」

「こっちは実績があるのよ、一昨年甲子園出場という実績が」

「あら、野球ルールもわからず、史上最短試合で一回戦負けした実績なんて実績のうちに入らないわ。それに私は甲子園での優勝を狙ってるの」

「ゆ、優勝ですって!」

「そうよ、毎試合毎試合、相手チームの部員の彼女になって、彼らをいいように扱って圧勝するのよ。そのプランはもう着々と立ってるのよ」


だめだ、この女は冥王星このがっこうのみならず、全国の高校球児まで同じように吸収して、大会を支配するつもりなのだ。甲子園出場で学校の有名人になる止まりで考えていたすずみとスケールが違う。


どうする、すずみ、マネージャー選挙まではあと一週間である。


「ふっ、どうやら覚悟を決めるときがきたようね」

「あら、諦めるのかしら」

「あ、あたしも」

「ふふふん、あなたになにができるのかしら?」



「野球部員全員の’幼馴染’になる覚悟があるわ!」


「なっ、お、幼馴染…」


すずみの意外な一言に、そこにいる全員が凍りついたのであった。

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