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大好きって、言うね。

「つ、剛君」

「なんだよ、改まって」

「質問があります」

「……なんで敬語?」

「いいから、はい座ってー」

「もう座ってる」


 よくわからないが良子は真面目な顔をしているので、俺も表情を堅くさせる。

 良子はきりっとした顔で俺を正面から見つめ、一瞬ふにゃっと笑ってからすぐまたきりっとする。なに今の。すげー可愛い。


「あの、私ってさ、剛君から見てどんな人?」

「え? どんなって言われても……可愛い」

「そ、そうじゃなくて、嬉しいけど、えっと……私を知らない剛君の友達に私を説明する時どういう? 純粋な疑問だから私が気を悪くするとか考えないで、思ったまま言って」

「えー? なんなんだよ今日。恥ずかしいんだけど」

「お願い。すごく大事なことなの」


 本人に向かって本人の評価をするとか、しかもそれが可愛い恋人とかのろけを本人に聞かせるみたいなもんだ。できれば遠慮したいけど、良子は妙に真剣だし、応えないわけにもいかない。

 よし、とりあえずここに友達がいて、そいつに彼女ってどんなやつだよーと聞かれた想定でいこう。


「……。そう、だな。んー……俺の彼女は、真面目で、小さくて俺より2ヶ月年下だけどお姉さん風をふかせてくる。言ってることはだいたい正しくて、ちょっと口うるさいとこもあるけど、照れ屋ですぐむきになる子供っぽいとこもあって、すごく可愛いんだ」

「……」

「も、もういいか?」


 は、恥ずかしい。それに友達にいう感じで結構失礼な言い方になってしまったかも知れない。大丈夫か?


「つ、剛君、私、子供っぽい、かな?」


 うっ。そ、そこか。うーん。やっぱり。良子ってむやみに大人ぶって姉貴風ふかせてるから、子供っぽいって言われるのはショックだよな。でもそれがあからさまで、逆に微笑ましいというか、可愛いし。むしろそのちょっと偉ぶってるとこがいい。


「あのな、良子。良子はお姉さんぶっててしっかりしてるけど、だからこそたまに無邪気なとこが可愛くてだな」

「剛君っ」

「おっ」


 おおお!? 良子が俺に抱きついてきたああ!? やばい、あったかくて柔らかくてなんかほんのり髪からかいい匂いする!?


「よよよよよしこ!?」

「私のこと、好き?」

「好きだ!」


 たまらず抱きしめる。うわぁ、ほんとに柔らかい!









 剛君が私のことをどう思っているのか。考えれば私はそれを知らない。というか、お姉さん的に認識してくれてるものだとばかり思いこんでたから、改めて考えたことなかった。

 もし、剛君が私のふりを見破ってて、そのままの私のことを好きだって、言うなら、無理に照れ隠しをして、キャラを守るために好きというのを我慢する必要はない。


「照れ屋ですぐむきになる子供っぽいとこもあって、すごく可愛いんだ」


 子供っぽい、とか。私が意図してるイメージと、正反対なんだけど。


「私、子供っぽいかな?」


 ちょっと悔しいけど、でも、それってつまり、大人っぽい無理した私じゃなくて、ホントの私を見ててくれたってこと、だよね?


「良子はお姉さんぶっててしっかりしてるけど、だからこそたまに無邪気なとこが可愛くてだな」


 私の期待と裏腹に、とんちんかんなフォローをいれる剛君の必死な姿に、私は胸が熱くなる。きゅうきゅうしめつけられるみたいに苦しい。ドキドキして、なんだか泣きそうだ。


「剛君っ」


 たまらず、剛君に抱きついた。こんなに密着するのは何年ぶりだろう。一緒にお風呂に入らなくなったころには、そんなことしてなかったと思う。記憶の中より、剛君はずっと大きくて逞しくて、ドキドキが加速する。


「よよよよよしこ!?」

「私のこと、好き?」


 動揺する剛君はなんだか可愛い。顔をあげて間近で見つめながら聞くと、剛君は口を大きく開けてから、私を強く抱きしめる。


「好きだ!」

「私も好き!」


 背中に回された強い腕が私をしめつける。それがすごく嬉しくて、好きだって気持ちが胸の奥から溢れてきてとまらない。


「大好き! 剛君大好き!」

「俺も大好きだーー!」


 私も大好きだーーー!!









 何だかよくわからんが、好きだ好きだと言い合っていると、しばらくそうしてると、良子は我に返ったように恥ずかしそうに俺から離れた。

 もうちょっとくっついてたかった。残念だが仕方ない。


「あ、あのね、剛君」


 それから良子は、今まで俺の好みのタイプになりたくてあえてお姉さんぶって知的でクールで大人キャラをしていたと薄情した。なんじゃそりゃ。

 いや、こういっちゃ悪いけど、それ全然成果でてないぞ? それにそれする前、ていうか幼稚園ぐらいからお前お姉さん風ふかせてたじゃん。変化してたとか全然気づかなかった。


「でね、剛君に好きって言うの、恥ずかしすぎて、照れてるの隠せなくなっちゃうから、言わなかったの」


 言いながら真っ赤になる良子が可愛いから、前からしょっちゅうまっかになってたし、隠せてなかったぞ、なんてことは言わないでおく。

 隠せてると思ってたとこも、そもそも俺に好かれるために、全然できてなくてもキャラを変えようとしたことが可愛い。あまりに可愛すぎる。このまま勘違いして、できてるつもりでいてもらってもよかった。


「でも今ならもう、私が照れ屋なのもばれてるし言えるね。剛君大好き!」

「俺も大好きだ!」


 いやこれでよかったんだ! そりゃ良子の気持ちは十分伝わってるけど、直接言われた方が嬉しいに決まってる!









「つー、よーし、君っ!」


 剛君に近寄って、腕をとる。無理をする必要はなくなったとはいえ、元々ふりをする前からちょっとばかり見栄っ張りでお姉さん風をふかせていた私だったけど、せっかくなので素直になることにした。

 ちょっと恥ずかしいけど、剛君が嬉しそうだし、私も嬉しいのでよしとする。


「良子、今日の放課後暇か?」

「うん。どうしたの?」

「いや、暇ならついでに駅前ぶらっとしようかと」

「うん、いいよ。じゃなくて、はい喜んで!」

「無理に素直ぶらなくても、普通でいいぞ。元々良子、上から目線タイプじゃん」

「そ、そんなつもりはないけど」


 うーん。まぁ、昔は剛君の世話係なつもりだったし、無意識に名残で上からになってたのかな。


「落ち込むな。そういうとこが可愛いんだから。それに、わざわざ言わなくても、喜んでるの丸わかりだから」

「むー」


 それもなんか複雑だ。私はクールに平静を装ってるつもりだったのに、実際には全部顔にでてるとか。

 いやまあ、だからこそ上から目線にしてても許されたのかな? 本心ばればれだからか。うーん、ならいいか。そのおかげで最終的には誤解なく私自身を好きになってもらってたわけだし。


「ていうか、さっきの返事はなんか違うしな。普通に好きなように反応してくれればいいよ」

「うん、わかった。じゃあ、仕方ないから付き合ってあげるね!」

「いや、そういう、まぁ、いいか。おう。じゃあ放課後はデートだな」

「うん!」


 わーい。デートだデート。


「えへへへ」

「今日はいつにもまして機嫌がいいな」

「勿論。わかってて言ってるでしょ?」

「おう! 機嫌がいい理由をひとつ、恋人の俺に教えてくれよ」


 言わせたがりだなぁ、剛君は。全く仕方ない。ならば恥を忍んで言ってあげよう。私の機嫌がいい理由はもちろん


「剛君が大好きだからだよ」










 おしまい。




完結です。

読んでくださりありがとうございました。

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