行き先を決めない日常
気がつけば、
子どもの頃は持っていなかったものを、
たくさん抱えるようになりました。
目標。正解。将来への不安。
そして、いつの間にか忘れていたものがありました。
空を見上げること。
風を感じること。
心が動くままに歩くこと。
これは、
そんな「忘れていた何か」を思い出していく物語です。
わたしは今、
どこへ向かうのか分からない。
いや、
正確には違う。
人生の方向が分からないわけではない。
ただ、
その日の流れが分からないのだ。
朝、目が覚める。
その日にやることは決まっている。
けれど、
その日をどう楽しむかは決まっていない。
空を見上げる。
雲が流れている。
鳥が飛んでいる。
風が吹いている。
その景色を眺めているだけで、
心が満たされる。
そして、
予定と予定のあいだにある余白の中で、ふと心が動く。
あそこへ行ってみよう。
この道を通ってみよう。
あれを食べてみよう。
そんな小さな直感に従って歩き出す。
すると、
不思議なことが起きる。
今まで気づけなかった景色に出会う。
思いがけない発見がある。
雲の隙間から差し込む光にみとれる。
鳥が木の枝をくわえて飛んでいく。
いつも通る道なのに、
まるで初めて歩く道のように感じる。
昔のわたしは、
目的地ばかり見ていた。
早く着かなければ。
時間を無駄にしてはいけない。
そう思っていた。
けれど、
今は違う。
旅の途中が好き。
移り変わる景色が好きだ。
その瞬間にしか出会えない発見が好きだ。
気がつけば、
夢もなくなっていた。
なりたい自分もない。
叶えたい未来もない。
それなのに、
不思議なくらい満たされている。
昔は、
未来に幸せがあると思っていた。
だから、
追いかけていた。
いつか、
辿り着く場所があると思っていた。
けれど、
探していたものは、未来になかった。
今、
この瞬間の中にあった。
本当の始まりとは、
どこかへ向かうことではなかった。
本来の自分に還ることだった。
空を見上げる。
雲が流れている。
その隙間から、
太陽の光が差し込んだ。
わたしは、
今日も、
その日の地図を持たずに歩き出す。
この物語は、何かの答えを伝えるために書いたものではありません。
答えを探し続けていたわたしが、
少しずつ探すことをやめていった記録です。
空を見上げたとき。
風を感じたとき。
ふと心が動いたとき。
そんな何気ない瞬間の中に、
本当に探していたものがありました。
もし、
この物語が、あなた自身の「本当の始まり」を
思い出すきっかけになったなら、
とてもうれしく思います。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
この出会いに、
心から感謝しています。




