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追放された万能薬師は、隣国の冷徹皇帝に溺愛される  作者: La Mistral
第6章:【新生の神話編】

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第74話:【浸食】影の調教、跪く聖女の残滓

いつも『聖女監禁録』を応援いただき、誠にありがとうございます。

前話では、ゼノス様と新王という二人の絶対的な主君によって、エルサの所有権が「共有」されるという衝撃の契約が交わされました。もはや彼女は一人の人間ではなく、二人の王がその支配力を競い、分け合うための「領土」と化したのです。

第74話では、青年へと変貌した新王による、執拗で残酷な「上書き」が始まります。

「私なしでは魔力を循環させることすらできない体なのだから」

新王の独占欲に満ちた浸食と、それを嘲笑うかのように君臨するゼノス様の絶対的な威圧。二人の王の魔力が激突する狭間で、エルサの精神はついに臨界点を迎えます。

聖女の残滓が完全に漂白され、ただの「無の影」へと堕ちていく瞬間の恍惚。その残酷なまでの美しさを、どうぞその目でお確かめください。

二人の王によって、私の所有権が半分ずつに分かち合われてから数日が過ぎた。


窓のない冷たい石造りの寝所で、私は横たわっていることさえ許されず、常に跪き、主君の気配を待ち続けるだけの存在へと成り下がっていた。


重厚な扉が音もなく開き、室内に冷ややかな魔力の香りが満ちる。


入ってきたのは、ゼノス様ではなく、新王となった青年だった。


彼は私の顎を指先で掬い上げ、品定めするように左右に振らせた。


「……父上の魔力に馴染みすぎているな。私の『色』が薄れている」


青年の声には、冷徹な独占欲が混じっている。


彼は私の首筋に残る、ゼノス様が刻んだ漆黒の紋様を、忌々しげに、それでいてなぞるように強く指で圧迫した。


「あ、……っ、若君……、……お許し、ください……」


「許しなど求めていない。……口を開けろ、エルサ。お前の内側に澱んでいる父上の残滓を、今から私が上書きしてやる」


彼は私の返答を待たず、強引に魔力を練り上げた指を私の唇へと押し込んだ。


かつての聖女としての清廉な沈黙は、今や王たちの魔力を受け入れるための卑屈な「入り口」へと作り替えられていく。


「……ん、……ふ、ぐ……あぁ……っ」


彼の指を通じて、暴力的な熱量が喉の奥へと直接流し込まれる。


内臓を灼くような感覚に、私は意識が朦朧としながらも、彼の指を拒むことさえできず、ただ必死にその『浸食』を嚥下するしかなかった。


「そうだ、もっと啜れ。……お前はもう、私なしでは魔力を循環させることすらできない体なのだから」


青年の黄金の瞳が、悦びに細められる。


私の自我は、また一段と深い闇の底へと引きずり込まれていった。


新王の指から流し込まれる魔力は、粘りつくような熱を持って私の喉を焼き、肺を、そして胃の腑を侵食していく。


「……ふ、ぐ……あ、……っ」


「もっと深く飲み込め。父上との『共有』を許されたのなら、お前のすべてを私が管理しなければならない。一滴の魔力も、一瞬の思考も、私の許可なく父上へ捧げることは許さない」


青年の指が口内で荒々しく動き、私の服従を確かめるように舌を強く押し下げた。


窒息に近い苦しみの中で、私の視界は涙で滲み、ただ彼の黄金の瞳だけが鮮明に焼き付く。


その時、背後の扉が開き、地を這うような重厚な声が響いた。


「息子よ。ずいぶんと熱心な『教育』をしているようだな」


ゼノス様だ。その気配を感じた瞬間、私の体は条件反射的に歓喜と恐怖で震え上がる。


青年は私の口から指を引き抜くと、ゆっくりと立ち上がり、不遜な笑みを父へと向けた。


「父上。この器を効率よく使うには、私の色をより濃く馴染ませる必要があると考えまして」


「ふん……。馴染ませる、か。だがその程度では、俺が刻んだ『服従の楔』は消えんぞ」


ゼノス様が私の傍らに跪き、乱れた私の髪を掴んで無理やり引き寄せた。


新王の魔力に当てられた私の肌に、ゼノス様の手が触れる。


相反する二つの力が私の体内で衝突し、火花を散らすような激痛が全身を駆け抜けた。


「あ、ああぁぁぁ……っ! お二人の……熱が……っ!」


「見ろ。お前が手を出すたびに、この女は俺の救いを求めて泣き叫ぶ。……エルサ、どちらの魔力が欲しい? 俺に縋るか、それともこの若造に身を委ねるか」


ゼノス様の冷徹な問い。私は、混濁する意識の中で、二人の王に同時に縋り付くしかなかった。


「……どちらも、……っ。お二人の……魔力がなければ、私は……生きていられません……」


ゼノス様が青年の肩を掴み、力任せに私から引き剥がすと、代わりにご自身の逞しい腕で私の腰を抱き寄せました。


「息子よ、欲張りすぎるな。この器を動かしている根源は、俺が刻んだ絶望なのだということを忘れるな」


ゼノス様の指が、新王の魔力で赤く腫れた私の唇をなぞり、そのまま強引に口内へと侵入します。


逃げ場のない口内で、二人の王の残り香が混ざり合い、私の脳は焼けるような過負荷に悲鳴を上げました。


「……あ、……ぁ、……ん、んぅ……っ!」


「見ろ、息子よ。お前の色に染められたはずの体が、俺が指を一本差し入れただけで、これほどまでに淫らな震えを返す。エルサ、お前を真に支配しているのは誰だ? 言ってみろ」


ゼノス様が指を深く突き立てると同時に、新王が私の背中を壁に押し付け、その耳元で冷ややかに囁きました。


「父上、それは卑怯というものです。……エルサ、私の魔力がまだお前の奥底で暴れているだろう? それを無視して父上に媚びるのか?」


二人の主君から同時に突きつけられる、残酷な二択。


しかし、それはどちらかを選ぶためのものではなく、板挟みになった私が、耐えきれずに壊れていく様を鑑賞するための罠でした。


「お二人……とも……。私は、……っ、あな、たちの……。どちらか一人のものに、……なりたい、わけでは……っ!」


「ほう? 欲深いことだ。両方の主君を同時に受け入れたいと、そう言うのか?」


ゼノス様が愉しげに目を細め、青年に合図を送りました。


二人の巨大な魔圧が、私の小さな体を逃げ場のない絶望の海へと沈めていきます。


逃げ場のない魔圧に挟まれ、私の思考は白濁し、言葉にならない震えだけが喉の奥で鳴り響いていた。


ゼノス様が私の喉元を締め上げ、青年の黄金の瞳が至近距離で私の瞳孔を覗き込む。


「……あ、……あぁ……っ。お二人の、……道具、ですから……。壊して、ください……。私を……消して……」


もはや、どちらが父でどちらが息子かなど、どうでもよかった。


二つの異なる漆黒が私の内で混ざり合い、熱を帯びた濁流となって、かつて「聖女」と呼ばれた女の魂を完全に洗い流していく。


「よかろう。望み通り、この器が二度と元の形を思い出せぬよう、徹底的に書き換えてやる」


ゼノス様が冷たく告げると同時に、青年の手が私の胸元を容赦なく貫くような重圧で抑えつけた。


二人の王の魔力が一気に臨界点を超えて私の中に雪崩れ込み、私の世界は眩いほどの暗黒に包まれた。


視神経が焼け、平衡感覚を失い、私はただ、重力に逆らえぬ泥のように床へと沈んでいった。


「……ふふ、……あ、……ぁ……」


崩れ落ちた私の背に、ゼノス様が冷徹な視線を投げかけ、青年は満足げに自らの掌に残る熱を確かめている。


「見てください、父上。もはや自分の名さえ忘れたようだ。これこそが、私たちが共有するに相応しい『無の影』だ」


「ああ。これでお前は、永遠に俺たちの足元を這いずる、声なき家畜だ。……跪け、エルサ。新しい主人の靴に、忠誠を誓え」


私は、焦点の合わない瞳を微かに動かし、命じられるままに、二人の王が並び立つその足元へと、恍惚とした表情で額を擦り付けた。

第74話、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

ついに、ゼノス様と新王による「同時調教」によって、エルサの自我は完全に漂白されてしまいました。かつての聖女は今や、二人の王の魔力が混ざり合うための「器」でしかありません。

二人の主君に左右から侵食され、壊れていくエルサの姿に、絶望と背徳の美学を感じていただけたでしょうか。

「親子で一人の女を蹂躙する展開がたまらない!」「エルサの壊れっぷりが加速して最高!」と思われましたら、ぜひ【★評価】や【ブックマーク】で応援をお願いします!

次回、第75話。

二人の主君による共有は、ついに「外の世界」へと向けられます。完全に道具となったエルサを連れ、ゼノス様と新王が踏み出す、王国への復讐の第一歩とは。

闇の底で、皆様をお待ちしております。

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