第10話:帝国の夜会と、独占欲の炎
累計1,000PV突破、心より感謝申し上げます!
多くの「もの好き」……いえ、熱心な読者の皆様に支えられ、エルサの物語は大きな節目を迎えました。
第10話は、エルサの美貌が完全に開花する夜会編。
王国では泥にまみれていた彼女が、帝国の至宝として輝く姿、そして皇帝ゼノスの独占欲が限界を突破する瞬間を、じっくりとお楽しみください!
帝国アステリアの皇城は、今夜、かつてない熱気に包まれていた。
年に一度の建国記念夜会。例年であれば軍事色の強い厳かな会合だが、今夜に限っては、貴族たちの間で一つの「噂」が嵐のように駆け巡っていたからだ。
『冷徹皇帝ゼノスが、他国から連れてきた地味な小娘を、最高の賓客としてお披露目するらしい』
「……ゼノス様、やはりこの格好は落ち着きません。私のような者が、このような煌びやかな場所に立ってもよろしいのでしょうか」
控室の大きな鏡の前で、私は自分の姿を見て呆然としていた。
鏡の中にいたのは、王国で泥にまみれ、首輪を嵌められていた「地味な薬師」ではなかった。
身に纏っているのは、帝国の最高級の絹を使い、私の瞳の色と同じ深い青から白へとグラデーションがかかった魔法銀のドレス。歩くたびに、生地に織り込まれた細かな魔石が星屑のように瞬き、私の周囲に淡い光の粒子を振りまいている。
「……。ああ、そうだな。俺も今、猛烈に後悔している」
振り返ると、漆黒の正装に身を包んだゼノス様が、苦々しいほどに真剣な顔で私を凝視していた。その視線があまりに熱く、私は思わず頬を染める。
「やはり、似合っていませんか……?」
「逆だ。美しすぎる。……こんなに美しいお前を、他の男たちの目に晒すなど、最初からすべきではなかった。今すぐにでもこの扉に鍵をかけ、お前を連れて離宮へ戻りたい」
ゼノス様は大きく溜息をつくと、私の手を取り、その指先にそっと唇を寄せた。騎士のような跪きに、心臓が跳ねる。
「いいか、エルサ。今夜、お前は帝国の『聖女』として正式に紹介される。だが、それは形だけのものだ。お前はただ、俺の隣で笑っていればいい。……それ以外の男とは、一言も口を利くな。分かったか?」
「……はい、ゼノス様」
会場の重厚な扉が開かれ、私たちが一歩足を踏み入れた瞬間。
喧騒に満ちていた大広間が、まるで魔法で時を止められたかのように、静まり返った。
「——美しい。あれが、あの『呪われた離宮』を一晩で浄化したという女性か?」
「聖女というより、まるで降臨した女神のようだ……」
感嘆と畏怖の溜息が波のように広がっていく。
しかし、その視線が私に向けられるたびに、私の腰に添えられたゼノス様の腕に、ミキミキと力がこもるのが分かった。彼は周囲の貴族たちを威圧するように、氷のような冷徹な眼差しを放ち、私を引き寄せる。
「エルサ。少しでも離れるな。お前を狙う狼どもが多すぎる」
その時、一人の若い侯爵家の子息が、魔圧に耐えかねながらも勇気を出して私に声をかけようとした。
「あ、あの……エルサ様。宜しければ、一曲私と——」
「——断る。彼女の最初のダンスも、その後のすべての大切な時間も、すべて俺が予約済みだ。貴公に割いてやる一秒など、この国には存在しない」
ゼノス様の声は、地響きのように低く、会場全体を凍りつかせた。
冷徹皇帝のあまりの独占欲。そして「彼女は俺のものだ」という明確な宣戦布告に、貴族たちは顔を真っ青にして後退りする。会場の空気は一瞬にして
「この女性に手を出せば一族ごと滅ぼされる」
という、恐ろしい理解に塗り替えられていった。
私は驚きながらも、その強引すぎるほどの優しさが、冷え切っていた私の心を温めていくのを感じていた。
一方その頃、王国の地下深く。
「……エルサ……俺の、エルサ……。今すぐ戻ってこい、命令だ……」
すべてを失い、ボロボロになったカイル王子が、カビ臭い暗闇の中でうわ言のように私の名前を呼び続けていた。
だが、その声が届くことは、もう永遠にない。
今の私は、世界で一番強く、そして私を狂おしいほどに愛してくれる皇帝の腕の中にいるのだから。
ついにゼノス皇帝が「予約済み」宣言という暴挙(?)に出ました。
冷徹と言われた男が、エルサの前でだけ余裕をなくすギャップ、書いていて本当に楽しいです。
ここまで読み進めてくださった皆様!
累計1,000PVという素晴らしい数字に見合うよう、これからもエルサの幸せを全力で描いていきます。
もし「もっとゼノス様に暴走してほしい!」と思われた方は、ぜひ【★】での評価や感想で、背中を押していただけると嬉しいです!




