ー魔境の森〜浅層~3ー
ストックが切れました。
〈ほれ、ニルス、クラウス、カール、ロッテ、ニーナしっかりするのじゃ。
もう魔境の森まで着いたのじゃぞ〉
ユーグたちと[熊の腕]は魔境の森まで来ていた。途中のソタのカミングアウト以後[熊の腕]の皆は喋らず黙々とユーグたちに続いて歩いていた。
「はっ!?
ここは魔境の森か、いかんいかんこのまま入ったらやらかすな。
皆、そろそろちゃんとしろ、じゃあないと魔物にやられるぞ」
「うわっ!?
なんか悪い夢を見たような、ユーグ君の従魔のソタ君が話した気がしたんだけど」
〈夢じゃないのじゃよ、わしはしっかりと話せるぞ〉
「ですよねー、はぁー、やっぱり夢じゃない」
「ほらロッテもそんなこと言ってないで、魔境の森に入るのだからしっかりしろよ。
他の皆もな」
「はぁ~、あのかわいいソタ君がこんなおじいさんの声してるなんて」
「なんか1人だけ違うことに反応してる気が……」
「ああユーグ、ニーナのことは気にしなくていいぞ。
こいつはこれが平常運転だからな。
俺ももう大丈夫だ、話すことができる魔物は高位な魔物だって聞いたから驚いていただけだから、心配はいらないぜ。
もう受け入れたよ、高位な魔物でもユーグの従魔には変わりはないからな」
「クラウスさん……。
でもソタは高位な魔物ではないと思うんですけどね、ただ物知りで長生きなだけで」
「「「「「(絶対違う)」」」」」
「よしもう皆も落ち着いたみたいだな。
とりあえず森に入ってからの予定を確認するぞ。
浅層ではユーグの依頼であるマジックフォックスを最低でも10体狩る。
そして中層では俺たちの依頼のアイスボアの狩りだな、これは3体ほどで十分だ。
依頼の魔物に関してこのくらいで、そのほかの魔物は浅層ではなるべく避けて行くぞ、ユーグも自分で来れるから依頼の魔物だけでいいだろ。
中層の魔物はまず依頼の魔物を探すとして依頼分を終わらしてから遭遇する魔物は積極的に狩るようにしよう。
そうしたほうがユーグたちの経験になるだろう、他に聞きたいことはないか?」
「特にないな、要するに依頼を先に終わらせてから売り物になるか問わずどんどん狩るってことだろ?
それなら無駄に隠れたりしなくてもいいから楽だぜ」
「私も特にはないよ」
「私も大丈夫です」
「俺も問題ない」
「僕も大丈夫です」
「よし、それなら魔境の森に入ろうか
皆、気をつけて行動していくぞ!」
ユーグたちは[熊の腕]と共に魔境の森へと入っていくのであった。
・・・
「ぐる?ぐるぅぅ」
「ブリュー、何か見つけた?
うんうん、多分マジックフォックスの臭いだって、僕の魔力探知では出てないけどどっちの方向?
あっちの方?ニルスさんブリューが向こうの方からマジックフォックスの臭いを見つけたみたいです」
魔境の森に入って少し経った頃、ブリューがマジックフォックスらしき魔物の臭いを捉える。
「そうか、それならそっちの方に行こうか。
それにしても従魔がいるとこんなに探すのが楽になるとはな。
まぁユーグの魔力探知もかなり凄いんだが」
「本当にそうね。
さっきから魔物の避けて通るのもユーグ君とブリュー君のおかげでいつもよりだいぶ楽だわ」
「南西の森で一緒にいたときよりも探知の技術が上がってるんじゃないか?」
「そうですかね?
でもあの森にいたときよりも毎日魔力操作の鍛錬はしてたんで技量は上がってますよ」
〈それもあるのじゃがあの森にいたときはお主たちのことを知らんかったしのう、実力を隠すようわしが言ったのじゃよ〉
「すみません、あの時はまだ皆さんのことが分からなかったので……」
「まぁそれはしょうがないわよね。
私たちでも森の中で初めて会った冒険者たちと行動を共にするってなったら実力を隠すわ。
あの後出てきた魔物も実力を出さずに倒せるものばかりだったから私たちも隠していたようなものだしね」
南西の森で[熊の腕]と出会ったのは偶発的なものであり、お互い信頼も信用もないむしろ異変が起きた最中だったため若干マイナスよりの心象があった。[熊の腕]から見てユーグは真面目そうな少年であり問題を起こすような感じではなかったのとその実力を推測し自分たちで対処可能と判断したため行動を共にしていたのであった。
「そうだな。
ユーグ、それはむしろ正しい判断だから気にしないで大丈夫だ。
これからも初対面の冒険者と行動を共にするときはその人がどういう人か判断できるまで実力は隠した方がいいぞ」
「はい、わかりました!
あっ僕の魔力探知にも反応がありました。
この魔力はマジックフォックスのもので合ってますね、こっちです」
「俺もあったぞ、ユーグの示す方向で間違ってないな」
「カールとユーグが同じ反応ならマジックフォックスで間違いないだろう。
よし、じゃあ反応があるとこに向かうか」
ユーグたちと[熊の腕]は魔力の反応があった場所へと向かう。
・・・
「マジックフォックスだ。
数は3体と少ない方だな、これはユーグたちだけで大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です。
ダンジョンでももっと数が多いのを倒したことありますから」
「なら大丈夫だな。
じゃあ俺らは手を出さずに狩りをしているところを見させてもらうわ」
「わかりました。
じゃあ今回は中層にも行かないといけないことだし、時間をかけずに魔法で一気に倒しちゃおうか。
僕とブラブはランス系の魔法を使うからそれで倒せなかったらブリューがお願いね」
「ぐるぅ!」 「ゴブッ!」
「じゃあ行こうか!
……ウォーターランス×4」
「……ゴブブゴブ×2」
ユーグとブラブの目の前に水の槍と闇の槍が現れる。通常より魔力が多く込められた魔法の槍は揃ってマジックフォックスに向かって飛んだ。
「キュアアア!」
魔力の動きに気づいたマジックフォックスは魔法の槍を避けようとするが、魔力が多く込められているため通常のスピードより速く魔法の槍は進みマジックフォックスたちを捉える。
「キュア!」
6本の魔法の槍は2体のマジックフォックスに直撃したが、最初にユーグたちの攻撃に気づいたマジックフォックスには避けられた。そのマジックフォックスはユーグたちに勝てないと思い、その場から逃げ出す。
「ぐるぅわぁぁ!」
ユーグたちはマジックフォックスが逃げ出すとは考えておらず、自分たちに向かってくるのを迎え撃つ構えの態勢をしていた。その中でもブリューがいち早くマジックフォックスの逃げに対応し後を追いかける。
「ぐるぅ!」
「キュアァァ」
種族の差、魔物の位階の差があり、ブリューはマジックフォックスに追いつき自身の爪でマジックフォックスの身体を切り裂く。致命傷を与えられたマジックフォックスはそのまま動きを止める。
「ビックリしたー。
まさか魔物が逃げ出すなんて」
「うん?ユーグは初めてなのか?
魔物が戦闘中に逃げ出すことは?」
「はい、初めて見ました。
こんなこともあるんですね。
今までの魔物は最初の攻撃で取り逃がしてもこっちに向かって来ることしかしなかったのに」
「多くのシルバーランク帯の魔物は好戦的で不利な状況でも逃げたりはしないわ、でも高位な魔物になるほど知能が上がり状況を見分けることができるようになるのよ。
マジックフォックスはシルバーランクの中でも高位ではないけど知能は高いわ、だから戦況を見極めて逃げを選択することもあるわ」
「それと逃走するのは自然にいる魔物たちだけだ。
ダンジョンの魔物は何故か不利な状況でも向かって来るからな、だからと言って高位な魔物も戦術的な行動をしないということはないけどな。
逃げを選択しないというだけで知能ある魔物はダンジョンでも普通に戦術的な戦いをしてくるから気をつけろよ」
「そうだったんですね。
だからダンジョンのマジックフォックスは同じ状況でもこっちに向かって来たのか」
ストックがなくなりました。
もしかすると来週の投稿をお休みさせていただくかもしれません。
再来週には投稿できると思うのでよろしくお願いします。




