ー『嵐豹』での夜ー
今週も20時に投稿していきます。
「あら?そんなに驚くことかしら?
私たちも昔からこの街で活動しているんだし、現役の期間も被ってるわけだから、シグルズとは知り合うに決まってるわよね。
それにお互い従魔がいるパーティーなんだし」
[熊の腕]のメンバーが[嵐豹]とシグルズとの関係に驚いてる中、マリーは給仕をしながら話をする。
「いや、それはなんとなく言われたらわかりますけど、マリーさんたちはシグルズさんに冒険者のことを教えてたんですよね?
そのことに驚いてたんですよ」
「ああ、ニルス君、そっちのことだったのね。
それはでもかなり昔のことよ」
「そうだな、俺がマゼルさんとマリーさんに教わってたのはアイアンランクに成りたての時だな。
今からおよそ20年前くらいのことだ」
「すげー羨ましいな。
低級の時に上級の冒険者に教えを授けてもらえるなんて。
どんなことを教わったんですか?」
クラウスは羨ましそうにシグルズに訊く。
「そうだな、俺は冒険者になる前から魔物の討伐をしてたから最初は技術的なものじゃなく、冒険者としての心構えを教えてもらったって感じだな。
それと調子に乗ってた鼻を折られたことが重要だったな」
「調子に乗ってた鼻を折られた?」
「ああそうだ、今はまぁアダマンタイトランクだからソロでの活動が多いんだが、まだ低級ランクの頃は他の冒険者との連携や情報の取り方も知らなくてな。
それでなまじ実力もあったもんだから自分以外の冒険者を馬鹿にしていたんだよ、俺なら余裕でアダマンタイトランクになれるってな。
だけどなひょんなことからマゼルさんとマリーさんと模擬戦をすることになったんだ。
あっもちろん二人同時じゃなく1人ずつだぞ。
そこでボコボコにされたな、冒険者の高みを見せつけられたんだ。
そこから色んなことを教えてもらって今に至るって感じだな」
シグルズの独白にユーグと[熊の腕]は耳を澄まして聞いていく。ちなみにシグルズの話をブラブだけが聞いており、ブリューとソタは自分の食事に集中していた。
「なんか凄い話を聞いちゃったみたいだな、それにマリブさんたちもやっぱり凄い冒険者だったのか」
「うん?お前らはマゼルさんたちの現役時代を知らないのか?」
ニルスの言葉にシグルズが反応する。
「アダマンタイトランクであったのは知っているんですけど、現役時代の話はほとんど知らないですね。
常連さんがよく[嵐豹]はすごい冒険者だったんだぞっていう話は聞くんですけど、具体的なのは知らなくて。
マリーさんも、もちろんマゼルさんも現役の時の話はしてくれなくて」
[熊の腕]の面々はマゼルとマリーがアダマンタイトランクの冒険者であり[嵐豹]というパーティーであったのは、宿によく来る彼らの冒険者時代を知る常連客から聞いていたが、詳しい話は誰も教えてくれなかったのである。
「そうか、それなら俺が話してやろう。
そうだな、まずマゼルさんは剣鬼という異名を持つ冒険者で俺の知る限り最高の剣士であったな。
俺も実際見たわけじゃないがどんな剣でも扱えたらしいぞ。
それでマリーさんだが、マリーさんも獄炎の魔女と呼ばれていて、主に火属性の魔法を使う魔法使いだったんだ。
火属性を持つ魔物にも同じ属性の魔法を使っていて討伐していく姿からその名がつけられたらしいぞ。
まぁキレたら地獄の鬼のようにキレるっていう意味もあるがな」
シグルズはマゼルとマリーの現役時代について語っていく。
「がる!」
「あっお前のこともちゃんと教えとかないとな。
マリブは俺と会ったときはもう成体で大きかったし、すでにストームパンサーという高ランクの魔物であったから、そのまま嵐豹って呼ばれてたな。
パーティー名と同じだったからその当時の冒険者はマリブを見ると近くにマリーさんもいると思って静かになっていたな。
まぁマリブは今もそんなに変わりはないか、当時からおとなしかったし」
「がるるぅ」
シグルズはマリブを撫でながらそう話した。
「あっそういえば、僕まだシグルズさんの従魔を見たことないんですけど何の魔物なんですか?」
「俺の従魔か、うーん……。
うん、内緒だ」
シグルズは悩んだ末に秘密にすると言う。
「えっ内緒?」
「そうだ、今話しても面白くないからな。
ユーグはもう少しで魔境の森に行けるようになるだろ、そしたら教えてやるよ。
お前らは知ってると思うがユーグに教えるのはダメだからな」
「えーそんな」
「そんな落ち込むな。
そうだな、じゃあその時にテイマーの秘技を教えてやるよ」
「テイマーの秘技!?
そんな凄い技を教えてくれるんですか?」
「ああ、もちろんだ。
この国のテイマーの中で見込みのあるものには先輩テイマーが教えるようになっているんだ。
ユーグは見込みがあるのはわかってるからな、俺が教えても問題ないだろう」
「僕が見込みあるってホントですか!?
でも僕はドライツェン王国の人間じゃない……」
「でもユーグは向こうの国に戻るつもりもないだろ?
なら大丈夫だ、この国で誠実に生きていこうとするものはもうこの国の住人だ。
たとえ出身が違ってもな」
「シグルズさん」
「ユーグ君、良いわね。
今日もシグルズに稽古をつけてもらって、また新しいことも教えてもらえるなんて。
よしシグルズ、[熊の腕]の皆にも稽古つけてあげなさい」
ユーグがシグルズの言葉に感動しているとマリーがやって来てシグルズに[熊の腕]にも稽古つけろと言う。
「なんで俺が?」
「何でってあなた最近他の冒険者との交流がおろそかになっているって聞いたわよ。
昔あれだけ注意したのにまだ直ってなかったのね、そのソロ気質は。
ただでさえテイマーは自分と従魔だけでパーティー組めちゃうんだから気をつけなさいって言ったわよね?」
マリーは叱り気味にシグルズに他の冒険者との交流を注意する。
「うっ、それを言われると……。
でも今はユーグに色々教えるつもりだからな、交流をしているだろ」
「ほぅ、私に逆らうつもり?
あなたさっき私の過去をこの子たちに話したわよね?
それなら私もあなたの昔の話を」
「ああ、わかったよ、わかりました、マリーさん。
今度[熊の腕]にも稽古をつけるよ」
「えっーと、俺らとしては嬉しいんですけど、シグルズさんに迷惑をかけるなら全然大丈夫なんですけど」
「いや、大丈夫だ。
1人に稽古つけるのも複数人につけるのもそこまで変わんないからな。
数が多ければ大変だが、お前らだけに教えるのはそこまで大変じゃないし」
「遠慮しなくてもいいのよ。
アダマンタイトランクの冒険者は下の冒険者を導く立場の人間でもあるんだから、全然甘えちゃったってかまわないのよ」
シグルズが、嫌々承諾したと思ったニルスはマリーの申し出を断ろうとしたが、それにシグルズは問題ないことを告げる。マリーもそれに加えアダマンタイトランクの冒険者の立場について説明する。
「えっ、じゃあ俺らも本当に稽古をつけてくれるんですか?」
「ああ、今すぐってわけじゃないがな。
そうだな、ユーグが魔境の森に行けるようになった頃くらいにするか、ユーグにテイマーの秘技を教えるついでに稽古をつけてやるよ」
「はい、シグルズさんに稽古をつけてもらえるなら、どんなに先になっても待ってられます!」
ニルスは興奮のあまり食い気味でシグルズに答える。こうしてシグルズと[熊の腕]との夜が過ぎていくのであった。
・・・・・
同日同時刻。
「くそ、何で俺らがこんなことをしなくちゃいけないんだ!」
「ホントだよな、少し急いでただけなのにな」
「ああ、それにテイマーは役立たずなのは本当のことなのになんであんだけ言われないといけないんだよ」
冒険者ギルドでユーグたちに絡んできた冒険者が罰としてウッドランクのものも依頼を受けない街の仕事をしていた。
「だが後から来たアイツが1番腹が立つ、噂だとアイツもテイマーらしいじゃないか。
なんでテイマーなんぞに圧をかけられないといけないんだ!」
「ああ、全くだ。
でもアイツの圧は中々のもんだったぞ」
「どうせ何かインチキでもしたんだろ?
この国は俺らの国より魔道具は発達してるからな」
「どうせそいつもホントは大したことはないんだろうさ、テイマーなんだし」
「ちょっといいかな?お兄さんたち」
「うん?何だお前?」
「いやー、お兄さんたちは見込みがありそうだからちょっと依頼をしたいと思ってね」
罰を受けていた冒険者たちに1人の青年が声をかける。その青年は蛇のような目をしていた。
明日も20時に投稿します。
土日はお休みです。




