ー世界樹ー
「……!まさか!これは!
ユーグお前はこれをどこで手に入れた?」
ユーグが枝の長剣に魔力を流し、その魔力が枝を覆った様子をグスタフは見て非常に驚きユーグに問いかける。
「えっ、これですか?
これはソタにもらったんですけど……」
ユーグは戸惑い気味に話しながら、ソタのことを見る。
「ユーグ、よく聞け、この枝は俺の見立てが正しければ”世界樹”の枝だ」
「”世界樹”?」
「「「「「「”世界樹”!?」」」」」」
グスタフはユーグの枝の長剣を”世界樹”の枝だと推察する。
「そうだ、世界樹の枝だ。ユーグは”世界樹”のことは知ってるか?」
「いえ、初めて聞きました」
「そうか。ならもし詳しい話を知りたかったら、神殿に行って神話について調べてみろ。
とりあえず今は”世界樹”はもう存在しないということを覚えておけばいい」
「えっもうないんですか、その”世界樹”っていうのは?」
「いや正確に言うと”世界樹”本体はたぶん人の中では確認したものはいないだろう。
”世界樹”は神話の中でしか出てこないおとぎ話みたいなものだ。
しかしこうやって枝などの素材が世に出てきていることがごくまれにあるんだ。
それで”世界樹”は実際に存在していたというのが今の説だな」
”世界樹”はドライツェン王国の教会に伝わる創世神話に出てくる自然の象徴たる大樹、または母なる大樹と呼ばれている。神話の中でしか登場せず、実物の確認は人の世ではされたことはないが、ユーグの枝の長剣のようにその痕跡は残されていることから実際に存在していたとされている。
「”世界樹”の枝のだったのか……。そりゃ支部長も口止めするわけだ」
「ああ、そういうことか。俺もそうだが多分ハンスさんも確信を持ってそれを”世界樹”の枝だと断定できているわけじゃねぇんだ。
ただその疑いが強いってことと魔力との親和性が他の素材とは比較にならないほどあることから口止めしたんだろ。それで武器も買いに来たってことか、迂闊な場面で使える代物じゃねぇからなそれは」
グスタフはユーグが持つ枝の長剣は確実に”世界樹”の枝だと特定できたわけではなかった。それはハンスも同じであるが、しかし枝の長剣は比較できるものがないくらい魔力との親和性が高いものであり、”世界樹”との関係が疑われる代物であるため、人前では使うなという忠告があったとクラウスは話す。
「これはそういうものなんですね……」
ユーグは息をのみながら自分の持つ枝の長剣を見つめる。
「まぁ出所は今更聞かんが、ハンスさんの言う通り気をつけた方がいいぞ。
それで、どう見ても剣のように扱う感じだが、ユーグが探しているの剣の類で大丈夫か?」
「はい、そうです。でもまだ迷ってて。
今までちゃんとした武技を習ってないので、これからはそれも勉強しようと思っているんです。
だから新しく始めるなら武器もそれに合わせた方が良いかなって」
グスタフは枝の長剣を見て、ユーグが剣を探しに来たことを察し、そのことを訊ねる。それにユーグはまだ決めかねていることを告げた。
「なるほどな、まぁでもユーグが使いたい武器がなければそのまま剣でいいんじゃないか?
何か使いたい武器とかあるのか?」
「いや、それも特にはないですね。むしろ剣には少し憧れはあります」
「そうか、なら剣でいいんじゃないか?
とりあえずいくつか初心者向けの剣を持ってくるから、そこの中で選んでみてくれ」
グスタフはそう言うと奥の方に剣を探しに行く。
「それにしても”世界樹”か。
ちょっと話が壮大すぎてついてけないな」
「そうだな、まさか伝説の代物を拝めるなんてな」
「ええ、ホントよね。神話ではすでに折れてもうこの世には存在しないっていう話だけど」
「”世界樹”って存在しないってグスタフさんも言ってましたけど、折れているんですか?」
グスタフが奥に剣を取りに行き、いなくなってすぐにニルスとクラウスが”世界樹”が驚愕すぎて話についていけないと言い始める。そしてロッテがその”世界樹”がすでにこの世には存在しないものだと話し、それにユーグが食いつく。
「ええ、そうらしいわ。
さっきグスタフさんも言ってたけど、誰も見たことないからホントかどうかはわからないのよ。
でも神話では大戦のせいで折れてなくなったって言われているわ」
「大戦?」
「ええ、そうよ。それも神殿に行けば教えてもらえるわよ。
この国では最初に教わる神話だから」
「おう!戻ったぞ。
とりあえず3つほど初心者向けの剣があった」
”世界樹”は大戦でなくなった。そうロッテは話し、詳しくは神殿で教えてもらえると言う。その話をしているとグスタフが3つの剣を持って戻ってきた。
「まず最初は普通の長剣だな。素材は鋼鉄で作られている。まぁ普通の剣だな。
2つ目の剣は短剣だ。素材はこれも鋼鉄だな。基本的にはサブウェポンとして使ったり、解体用に使うものだな。
そして最後のは、ショートソードだ。これは他のとは違い、鉄に魔物素材を混ぜて作ってる。だから魔力の親和性は他の2つより高いな。
値段は長剣とショートソードが同じ10000ドーラだな、短剣はその半額の5000ドーラだ」
「あっ高い……今2900ドーラしか持ってなかったの忘れてた」
「ぐるぅ」 「ゴブ」
グスタフが持ってきたのは3種類の剣であった。長剣、短剣、ショートソードと基本的な初心者に向いている剣であった。長剣と短剣は鋼鉄で作られており、鈍色をしていた。ショートソードは魔物の素材を鉄と混ぜているため少し色味が2つの剣より黒くなっていた。グスタフはその値を短剣が5000ドーラ、長剣とショートソードを10000ドーラと新品の武器としては比較的安くつけていた。しかしユーグの今の所持金は2900ドーラと全く手が届かないものであり、そのことを忘れていたユーグにブリューとブラブはあきれ顔で見る。
「ああそうだった。
冒険者ギルドに入ったばかりの低級ランクは普通中古品から手を出すんだったな。
ユーグがあんな代物を出すから大丈夫だと思ったぜ」
「でもこのショートソードは良い剣ですね。魔物素材使っているのに安くないですか?」
鉄などの魔力の親和性が低い鉱物素材より、魔物素材を混ぜた魔法合金や魔力の親和性が高い鉱物素材の方が価値が高かった。しかしグスタフが出したショートソードは魔物素材が混ぜてあるのに鋼鉄の長剣と同じ値であった。どんなに低級の魔法合金で作られていても本来はこの値の1.5倍はするものであるためアンネはそれに疑問を持った。
「これはな、まだ研究段階の代物だからな、魔法合金って呼ばれるほどのものでもないんだ。
それに魔力の親和性が鉄よりかは高いが、そこまでのものでもないし、使ってる魔物素材も低ランクのものだから安くできるんだ」
「低ランクの魔物素材で魔法合金を作ろうとしてるんですか?
それってけっこう凄いんじゃ?」
グスタフの説明にニルスが反応する。通常魔法合金を作る際、使われる素材の魔物はシルバーランク以上のものであった。それに対してグスタフが新しく創ろうとしている魔法合金はその下の低級ランクで創ろうとしていた。これができたら冒険者や兵士などの戦闘職以外のものでも狩れる魔物で魔法合金が作成でき、安価な魔法合金製の武器を作成できるようになる。そのことに気づいたニルスはグスタフに訊く。
「まぁな、でもまだまだ完成には遠いな。
魔法合金とは呼べるほどの魔力の親和性がないし、それに魔物の素材も思ったより必要だしな」
「あ、あのー、中古の剣って何かないですか?」
明日も21時に投稿します。
しばらくの間は平日の5日間は投稿で、
土日はお休みさせていただきます。




