ー再びの冒険者ギルドへー
次の投稿は6月17日月曜日です
ユーグたちが朝食を食べていると食堂に[熊の腕]の皆もやってきた。
「聞いたわよ。今日もユーグ君をギルドまで案内してあげるのよね?」
「はい、そうです。ちょっとここからだと道が分かりづらいかなって思って。
ははは……」
「あら?それはこの宿が辺鄙なとこにあるって言いたいのかな?」
「いやいや、そんなことないですよ。いやー素敵な場所にある素敵な宿だなー」
「ふふ、冗談よ。確かにちょっと奥まった場所にあるからね。
まぁそのおかげで宿泊料は大通りのところより安くできるんだけどね。
それにあなた達がギルドまで案内するのはそれだけじゃない気がするけど」
ニルスの迂闊な発言に、マリーは冗談で返した。そのマリーも[熊の腕]がただギルドにユーグを案内するだけではないことに勘づいていた。
「まぁそうっすね。そこまで深い理由があるわけじゃないですけど
ただ俺たちがユーグの戦いを見てみたいってだけですね」
「そうなんですよ。
森の中で合流してからそこまで強い魔物も出てこなかったんで、一度もユーグ君たちの戦いを見てなかったんでちょっと興味があって。でもユーグ君が嫌なら戦闘試験の見学は遠慮するわよ」
「いや僕たちは大丈夫ですよ。昨日も言いましたけど、森の中では[熊の腕]の皆さんの戦い方を見せてもらったんで。
ただ僕たちは皆さんほど強くはないですけど」
ニルスはマリーにただユーグたちの戦いを見てみたかっただけだと白状する。それにロッテも説明を加えた。そしてユーグに拒否しても良いと尋ねるがユーグも森の中で[熊の腕]の戦いを見せてもらったからと[熊の腕]の戦闘試験の見学を許可する。
「そうなのね、私も見に行きたいけど仕事があるからね。
そうだわ、ユーグ君もしあなたたちが良かったらアンネを見学させても良いかしら?それにマリブも」
「えっ?アンネさんとマリブをですか?」
「そうよ、一応この子には私たちが訓練つけてそれなりに戦えるのよ。
それにマリブも長くこの街で生活してるから一緒にいれば人の街での従魔の生活がわかるでしょ?」
「アンネさんも戦えるんですか?宿の仕事もできるのに凄いです!」
「ユーグ君、アンネはマリーさんが言うような”それなり”に戦えるどころじゃないぞ」
「そうね、私たちもあまり見たことないけどね。
その歳であそこまで戦えるのは流石アダマンタイトランクの娘ってところかな」
「それでどうかな?ユーグ君」
マリーは[熊の腕]の皆がユーグの戦闘試験の見学をする話を聞き、自分は仕事があるから行けないため代わりにアンネとマリブを見学させてくれないかユーグに訊く。アンネはマゼルとマリーから戦闘の手ほどきを受けておりマリー曰くそれなりに戦えると言う。
しかしニルスやロッテが言うにはそれなりに戦えるというには語弊があり、その実力は高いという。
「もちろん、大丈夫です!僕も強くなりたいんで、是非僕の戦い方を見てアドバイスが欲しいです!
それにマリブも一緒に来てくれるのは心強いです。僕たちはあまり街での生活に慣れてなくて」
「そう、ありがとうね。
アンネ、このあとユーグ君たちが冒険者ギルドに行くから、一緒にユーグ君の戦闘試験を見学してらっしゃい」
「えっ?私がユーグ君たちと?」
「そうよ、[熊の腕]のみんなも見学するからあなたもしてらっしゃい。マリブも一緒にね」
「そういうことね。わかったわ!
ユーグ君よろしくね!」
食堂でユーグや[熊の腕]に食事を運んだあと、すでにご飯を食べ終えていたマリブとブリューと遊んでいたアンネはマリーの呼びかけに答えた。
「はい!よろしくお願いします!」
「それじゃあ、俺らの食事が終わったら行こうか。それまで少し待っててくれ」
・・・・・
「じゃあ行ってきます!」
「ぐるぅ!」 「ゴヴ!」
「はい、行ってらっしゃい。気を付けて行くのよ。
アンネもマリブもユーグ君たちのこと気にかけてあげるのよ」
「わかってるよ、それぐらい。じゃあ行ってきまーす」 「がう」
「それじゃあ俺らも行きますね」
「ええ、行ってらっしゃい。皆の事頼んだわよ」
「……行ってらっしゃい」
食事と出かける準備を終えたユーグたちは『嵐豹』から冒険者ギルドに向け出発した。
「そういえば、アンネさん1つ聞いてもいいですか?」
「うん?なーに?」
宿から出てすぐにユーグはアンネに質問した。
「マリブはマゼルさんの従魔なんですよね?
それなのに街の中をマゼルさんなしで行動しても平気なんですか?」
「ああ、そのことね。それはですね、私がお父さんの娘だからですよ。
街の中は基本的には、従魔とその主は連れ立って動かないといけないんですけど、例外があってそれは従魔の家族と一緒なら主がいなくても行動しても大丈夫なんですよ」
「もしくはその街の領主が認めたものがいれば大丈夫だな。
だいたいは街の治安を取り締まるものや冒険者ギルドの職員のこともそうだな」
「この国はね、テイマーやそれに関連する人たちのことをよく考えているのよ。
だから従魔の行動をなるべく妨げないようにしてるの」
「まぁそれでも従魔が何かしてしまったら、主に責任があるんですけどね」
ユーグの疑問は従魔が主なしでも行動しても大丈夫なのかということであった。ドライツェン王国では【ジョブ】に対して比較的差別がないように国づくりが行われており、その影響で従魔たちも街の中で住みやすいよう法律が決まっていた。今回のように従魔は主の家族が共にいれば主なしで街の中を行動できるといった、従魔の不利益をなるべくなくすような法律が多々あった。
「おー、それならマリブも街の中で行動しやすいですね。
でもブリューたちは難しいかな。この国に僕の家族はいないしね」
「まぁそうだな。
でもしばらくはユーグたちも忙しいから、それにブリューたちも付き合うことになるから大変だぞ」
ユーグは1人と従魔たちでドライツェンに来た。そのためユーグにとっての家族はここにいるソタたち従魔が家族であった。しかし宿屋『嵐豹』のマゼルたちの家族を見て、普通の家族というものに憧れというものを持つようになった。
寂し気に家族はいないというユーグにニルスは場を明るくしようとユーグたちがこれから忙しくなると話す。
「そうですね!
街に来たばかりだから、街を見て回らないといけないし、それに冒険者のランクを上げて魔境の森の探索もしたいですしね!」
「そうでしたね、ユーグさんはこの街に来たばかりだしたね。
もし時間が合えば私も街を案内しますよ。それにマリブも」
「ぐーがう!」
「ありがとうございます!アンネさん、それにマリブも!
あっそうだ!アンネさんは僕に敬語は使わなくても大丈夫ですよ。さっき食堂のところで言ってたように君や呼び捨てで大丈夫です。
なんか年上の方に敬語使われるとむず痒いっていうか」
「わかったわ!ユーグ君これからもよろしくね!」
「はい!」
ニルスのおかげでその場の雰囲気は明るくなり、ユーグたちはそのまま話しながら冒険者ギルドへと向かって行った。
・・・・・
「おはようございます!ナディネさん!約束通り戦闘試験を受けに来ました!」
「ユーグさんおはようございます。それに[熊の腕]の皆さんも。
あら今日はアンネさんもいるんですね、マリブもいらっしゃい。ということは昨日は『嵐豹』に泊まったんですね」
「おはようございます、ナディネさん!」 「がう!」
「おはようございます!そうです、『嵐豹』は俺たちの常宿なので」
「そういえば、そうでしたね。
私も最近は忙しくて『嵐豹』には顔を出せてないので今度行こうかしら」
「ぜひ来てください!今ならトリ形のシチューが安く提供してるのでお得ですよ!」
「あら、それはいいですね!」
月曜日も21時に投稿します。
しばらくの間は平日の5日間は投稿で、
土日はお休みさせていただきます。




