ー戦闘試験ー
ユーグたちが冒険者ギルドに入るとギルド内は昨日の夜と同様閑散としており、カウンターでナディネが仕事をしていた。しかし昨夜と違い数人の冒険者は残っており、各々何かをしている。
「さて、ユーグさんの戦闘試験なんですがギルド内の訓練場で行います。
準備は出来てるのでもう向かっていただいても構いませんよ。訓練場は左手の扉の奥にあります」
「わかりました!
じゃあ行こうかソタ、ブリュー、ブラブ!」
〈もちろんじゃ!〉 「くるぅ!」 「ゴブ!」
「じゃあ約束通り俺らは見学させてもらうからな。頑張れよ、ユーグ君!」
「頑張ってね!」 「がう!」
「はい!頑張ります!」
ユーグの戦闘試験はギルドの訓練場で行われるという。その訓練場はカウンターの左側にある扉の奥にある。[熊の腕]の皆やアンネ、マリブの応援の声を受け、ユーグは訓練場へ向かった。
・・・・・
「うわー、広い!」 「くるー!」 「ゴブ―!」
左の扉の奥には広大な運動場みたいな広場があった。広場の奥には巻き藁が立ててあり、武器の修練に使われているようにみえた。
「よー、来たなユーグ君よ。ここが訓練場じゃ。今日はわしが試験官をするからのう」
訓練場にはすでにハンスがおり、今日の戦闘試験の試験官をするという。
「わかりました!よろしくお願いします!」
「うむ、見学をする[熊の腕]は、うん?なんじゃアンネとマリブも見学するのか。
見学するものは入口の方におるのじゃよ」
「わかりました。支部長」
「よし、さっそくじゃが始めるとするかのう。まずは魔法の試験からじゃの。
今から出す土柱に何か攻撃魔法を当てるのじゃよ。これはどの程度の魔法を使えるかの試験じゃ、なので己が使える高威力の魔法を打つが良い。……アースピラー……」
ハンスはそう言うと魔法で土の柱を出した。
「まずは僕から行きますね。……よし、行きます!ウォーターランス!」
ユーグは水の槍を出す。その槍は真っすぐ進み土の柱にぶつかる。水の槍はそのまま土の柱を貫通し、その先で霧散する。
「ほう、中々の威力じゃな。それに魔力の操作も十分じゃな、いやその歳でここまでできれば大したものじゃな。
他には魔法を使うものはおるか?」
「はい、ブラブも使います」 「ゴブ!」
「よし、じゃあ行くぞ。……アースピラー」
「ゴブ!……ゴブブ!」
ハンスが再び土の柱を出すと、ブラブは魔力を土属性に変え、具現化させた。具現化された土の魔力は槍の形になり、その槍が土の柱に向かう。土の柱にぶつかった矢はそのまま柱に突き刺さり霧散する。
「ブラブも大したもんじゃな!わしの魔法に突き刺さるほどのランスを出すとは」
「凄いですね!ユーグ君もブラブ君も!
あの支部長のアースピラーにユーグ君は貫通させて、ブラブ君はランスを出せるなんて」
「やっぱ、凄いのか?ニーナ、あの魔法は?」
「ええ、凄いですよ。
ユーグ君は元々魔力の操作が優れていることは普段の様子からわかってたんですが、想像以上でしたね。
ランス系の魔法は難しいものじゃないんですけど、普通は支部長のピラーを貫通するほどの威力はないです。
それをユーグ君は魔力操作で威力を上げて貫通させてます。貫通させるほどの威力を魔力操作だけで上げるなんて相当魔力の扱いが上手くないと難しいですよ。
ブラブ君の土の槍が基本的なランス系の魔法の威力ですね」
ニルスの問いにニーナが解説する。ユーグは普段の生活から魔力を操作し、余分な魔力を体から漏れ出ないようにしていた。そのため魔力の操作に慣れている魔法使い系のものがユーグを見ると年齢に似合わないその魔力操作の力量に感心する。ニーナはヒーラーとして回復やサポートを得意としている魔法使い系の【ジョブ】であるため、ユーグと出会った当初から彼の魔力操作の実力の高さに気づいていた。
しかし今までユーグが魔法を使っているところを見たことがなかったため、どの程度の魔法を使うのかはわからなかった。ランス系の魔法はニーナが言うようにそこまで難しい魔法ではなかった。アロー系よりは難しいが冒険者ランクで言えば中級のものたちなら扱えるもの魔法であり、一般的には中級魔法と呼ばれるものである。対するハンスのピロー系も同じ中級魔法に入る魔法ではあるが、ハンスは土属性に強い親和性がある上に魔力操作でアースピラーの強固さを上げていた。そのため通常の中級魔法程度の威力では貫通させることなんかはできないはずであった。ちなみにニーナやクラウスなどの魔法使い系の職をしているものは、今回のようにハンスのアースピラーを的当てにしたことがあるため知っていた。
「よし、魔法の威力はこんなもんでいいじゃろう。次は数と精度じゃな。柱を複数だすからそれにすぐに当てるのじゃ。
行くぞ……アースピラー×10」
「よし!それなら……ウォーターアロー×20」
次の試験は魔法の数と精度を確かめる試験だった。ハンスは土の柱を次々と順番ずつ立てる。まず最初の柱が出てきた時点でユーグは水の矢を20本出した。その20本の矢を2本ずつ土の柱に当てていく。水の槍の時とは違い、水の矢は土の柱を貫通せず突き刺さるだけだった。しかし先ほどのブラブの土の槍よりは深く突き刺さっていた。ユーグの20本の矢は見事に全ての柱に命中する。
「うむ、流石にこれくらいは出来るか。しかもアロー系でランス系の上の威力を出すとは。
よし次はブラブじゃな……アースピラー×10」
「ゴブ……ゴブブー!」
ブラブはユーグほど魔法に慣れていないため、複数個の魔法を同時に出したりすることはできなかった。そのため最も素早く具現化できる土の矢を出した。1本ずつ作られていく土の矢は、形成されるごとに土の柱に向かって進む。ユーグの矢よりは素早く進まないが、出てくるスピードが速いため低級のランクの魔法使い系よりは早く柱に当たる。
「なるほどのう。ブラブもよい魔法使いじゃな。
放出や操作は並じゃが、魔法の具現化が速やかじゃ。魔力操作は十分じゃな」
ブラブの魔法にハンスはそう評す。
「さっきの試験も凄かったが、今回のも凄いな!」
「ええ、ユーグ君は一度に20本のアローを同時に出せるとは、さっきのランスの威力と合わせて考えると凄まじい魔力操作ですね。それにあの様子からまだ余力はありそうです。
ブラブ君も1本1本のアローを具現化するスピードは速いですね。同時には出せなくてもあの速さなら十分ですね」
ニルスとニーナは純粋にユーグとブラブの魔法について褒める。ユーグが使っている魔法自体はそう特別なものではなかった。ランスは中級魔法であり、アローは初級魔法といった多くの魔法使い系の職に就くものも使う一般的な魔法である。しかしユーグは卓越した魔力操作でランスの威力を上げ、アローも数を増やした。それは13歳の冒険者ギルドに登録したてのものができることではなかった。
「うむ、これで魔法の試験は終わりじゃな。あとは武技試験と模擬戦闘じゃな。
よし、武技試験を始めるぞ!これも今から出す土柱に武器で攻撃を当てるのじゃ。
この試験を受けるのはブリューだけか?ユーグ君は何か武器を使っているかの?」
「はい!まだちゃんとしたものは持っていないですけど、これを使います」
そう言うとユーグは保管庫からいつも使っている枝の長剣を取り出した。
「んな!それは……
ユーグ君、ちょっと見せてくれないか?」
「はい?
いいですけど……普通の枝ですよ、少し剣っぽくしてますけど」
明日も21時に投稿します。
しばらくの間は平日の5日間は投稿で、
土日はお休みさせていただきます。




