ー北の辺境都市へー
明日も19時と21時に投稿します。
「そろそろ夜も遅くなってきたから寝るとするか、クラウス、魔除けの石を置いてくれ」
「ああ、わかった!」
「魔除けの石?」
「ああ、そうだ。森の中など魔物が多いところで野営するときは必需品なんだが、ユーグ君は持って……いないよな。
詳しくは知らないが魔石を使って錬金術で作るものらしい。魔除けの石のグレードにもよるが、魔物を近寄らせないものだな」
「おお!錬金術!ソタは知ってた?」
〈うーむ、これは知らんな。あまり難しい術理が入っているわけではないが、詳しくは分解してみないとわからんな。街に行く楽しみが増えたわい〉
「ソタって言ってたっけ?
そのモモンガ形の魔物、その子は錬金術がわかるの?」
「はい!ロッテさん、ソタは錬金術や魔法とか色々なことを知ってて、教えてくれるんです」
「へぇー(錬金術は人の手で成ったものだったはず、この子はユーグ君と会う前に人と関わってたことね、それを人に教えられるほどってことは相当長生きしてるのね)」
「ほれ、そろそろ寝る準備をしないと見張りが辛くなるぞ。
ユーグ君は今夜は疲れてるだろうから見張りは大丈夫だ」
「えっ!?いいんですか?」
「ああ大丈夫だ、いつもは5人で分担してやっているからな。そこは問題ないよ」
「ありがとうございます。
一応ブリューやソタは近づいてくる魔物の気配があれば教えてくれるので、僕も何かあればすぐ起きます」
こうしてユーグたちは冒険者たちと初めての野営をしたのであった。
・・・・・
「おはようございます!」
「おう、おはよう!
今、朝飯を作ってるところだからな。皆が起きたら食べよう」
ユーグが起きると、[熊の腕]のマジックアタッカーである、クラウスが朝食の準備をしていた。
「わかりました。
じゃあ僕もブリューとブラブの分のご飯を用意してますね」
「ああ、そうか。
従魔の分もあったのをすっかり忘れてたよ。すまんな、ユーグ君」
「いえ、大丈夫ですよ。
いつも僕がやってることなんで」
「ブラブはゴブリンだから俺らと同じ食事でも大丈夫だけど、ブリューは何を食べるんだ?」
「えっ、ブリューの食事ですか?
僕が普段食べるものとあまり変わりませんよ」
「そうなのか、魔物は元となった動物が好む食べ物を食すっていうからな、生肉とかが好きなのかと思ったよ」
「へぇー、そうなんですね。
今でも生肉を食べるときはありますけど、特に焼いた肉とか料理がダメってわけじゃないみたいですね。気分で食べるものを変えてますねブリューは」
魔物はその生命を維持するには魔力が必要である。そのため極論を言えば食事は必要不可欠なものではない。
しかし従魔を含めた多くの魔物は狩りなどを行い狩った獲物を食していた。その答えは魔物を研究している学者の中でも出ていなかった。あるものは元となる動物の食性を引き続き持ち合わせているからだと言う。またあるものは食事から摂取する栄養も魔物の成長には必要だとも言う。その答えはまだなく、共通の認識として魔物も食事をするというものだった。
また魔物の中では食事を必要としない種族もいるため、魔物の職というのは多くの学者を悩ませる問題であり、引いては魔物という種の起源まで研究の対象に入れなければいけないものであった。
「ふぁわ、おはよう~」
「おはようございます、ロッテさん!」
「おう、おはよう、ロッテ!
起きて早々悪いんだが、そろそろ飯ができるから皆を起こしてくれんか?」
「わかった~、ふぁわわぁ、眠い」
*****
「よし、そろそろ出発しようか」
「わかりました、ニルスさん。
僕の方はもう準備は終わりました」
朝食を終えたユーグたちは、少し食後の休憩を入れてから出発することにした。[熊の腕]によるとだいたいここから北の辺境都市グリムノーデンまでは2日くらいの距離であった。
ユーグたちがいる森は魔境の森と繋がっているため、3日以上かかる距離を北に行くと魔境の森に着いてしまう。ユーグたちと[熊の腕]が出会ったのはそのギリギリの場所であった。
そのため俗に言う森はベテランの冒険者以外でも入る範囲のことを指し、その中でも奥地の方を中心に[熊の腕]は調査していた。
「でもここから2日の距離で辺境都市に着いちゃうなんて、案外近かったんですね」
「そうなんだよ。
だからこの森に異変があるとすぐにグリムノーデンのギルドに報告が来て、俺たちみたいな冒険者が調査に来るんだ。ここは基本的に低ランクの冒険者と普通の人が訪れるところだからな」
「なるほど、ということはこの異変自体は最近起きたことだったんですね、ニルスさん。
僕らがこの森に入ってから10日は経っていなかったと思うので」
「普通はそうなんだがな。今回は少し事情が変わっててすぐには冒険者ギルドに報告は来なかったんだよ。
浅瀬には食用の鳥形の魔物だけだったからな。近くの村も肉の供給は通常ならほとんどないからな。こういう時はということでかなり多く狩ってたらしい。グリムノーデンの低ランク冒険者もそういったことが起きてな、グリムノーデンでは今、鶏肉で溢れている状態だ。村で余った肉がグリムノーデンまで来てようやく気付いたわけだ。
まぁ今回はそこまで強くない魔物だったから良かったもんだが、これが高位の魔物だったらヒヤヒヤしたぜ」
「へぇー、そうだったんですね。
でもあの先が魔境の森に繋がっていたなんて。僕らは森に入ってからとりあえずの方向に進んで来たんで、もしかしたら魔境の森に入ってたかもしれなかったです」
「ああ、そっか。
俺らはグリムノーデン近くの村出身だから忘れていたが、普通は魔境なんて見たことないもんな」
「ん?それはどういうことですか?クラウスさん?」
「うん?ああ、魔境はだた魔力の濃い場所というわけではないんだ。
何て言ったらいいのかよくわからないんだが、まぁ行ってみたらわかるとしか言えんな。明らかにここから魔境というのがわかるから間違って入ることはあり得ないんだよ」
「おー、なんか凄そうです!」
「そのままグリムノーデンで冒険者になってランクを上げてけば嫌でも行くことになるからな。その時を期待して待っとけ」
「はい、わかりました、クラウスさん!」
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「うん?これは?」
「どうした?カール?」
「ああ、この先少し行ったところに生命反応があった。この感じだとやはり、狙い通りミミックオウルもいるみたいだ」
ユーグたちは話しながら森の中を進んでいた。出会ったときとは違い、ユーグたちと合流してから半日が経過しており、その間ミミックオウル以上の魔物と出会わなかったため[熊の腕]はこの異変の原因をミミックオウルと見て、そのレベルの魔物なら最低限の警戒で倒せると判断したためだった。
その判断通り出会った場所から少し経ったところでカールがミミックオウルを含めた魔物を見つけていた。
「カール、数は?」
「ウッドオウルが3にミミックオウルが1だな」
「その数なら俺たちだけでいけるな。
よし、ユーグ君たちは周りを警戒して見ていてくれ、今回の魔物は俺たちが討伐するからな」
「わかりました!」
〈ほう、ユーグよ、良く見てみるのじゃよ、冒険者の実力を〉
ソタはユーグの人との関わりのなさを心配していた。ユーグの幼少期は男爵家でほとんど隔離されたように育ち、また天職の儀のあとは放逐され森の中で過ごしていたため、冒険者の常識やその戦い方などを知らなかった。
そのためソタはユーグがこれから冒険者になるにあたって、その常識のなさが難点になると考え今回のグリムノーデンまでの道案内とこの戦いを見ることで最低限の冒険者の常識をユーグに身に着かせようと思っていたのであった。
2話投稿は明日までで
土日はお休みして、月曜6月3日から1話ずつ投稿します。




