ー待ち伏せー
21時にも投稿します。
「ふぅ手ごわかったな、魔力の感じはダブルホーンラビットやブラックバットと変わらないのに全然攻撃が利かなかったよ。
ロックリザードよりも強かったかも」
〈ふむ、お主の実力であればこんなに時間かからず倒せると思ったのじゃが。まだ発想が足りんようじゃの。
まぁロックリザードは体躯が大きいからのう。あの枝を使った剣ならお主の下手な剣術でも当たれば倒せるのじゃから、攻撃が当たらん小っこいウッドオウルは強く感じるじゃろう〉
「そうだね、今度からはもっと魔法のスピードも上げるように鍛錬しないとな。
今回はブリューにホントに助けられたよ。ありがとう、ブリュー!」
「ぐるぅ!」
「ブラブはまだ当面、魔力操作の鍛錬かな。
魔力量ももう少し必要だし、魔法の具現化も早い方が得だしね!」
「ゴブ」
「よし、それじゃあとりあえず解体を進めようか。ウッドオウルからはどんな素材が獲れるのかな」
・・・・・
「……こんなものかな。ウッドオウル解体は楽だったけど素材はこんだけなんだね」
ウッドオウルの素材は肉と魔石だけなので、そこまで丁寧に解体をする必要がなく、すぐに終わった。
〈羽は重いからのう、矢羽根には向かんし、この大きさじゃからの他の用途もないのじゃよ。
もう少し上位種の魔物じゃと、魔力の浸透も利いてて色々な用途があるのじゃがな〉
「ふーん、そうなんだ。
それにしてもこの森の異変ってウッドオウルが原因なのかな?けっこう強かったし」
〈うーん、ウッドオウル自体は別にこの辺に生息してもおかしくはない魔物じゃ。
じゃから異変の原因ではないと思うのじゃがな。まだ3匹としか出遭ってないのじゃから判断がつかんのう〉
「じゃあほかの原因があるってことか、とりあえずまた進もうか」
ユーグたちは解体を終えて、またすぐに北の辺境都市があると思われる方向に向かって進み始めた。
*****
その日ユーグたちは、ウッドオウルだけでも10体以上の魔力反応を確認した。幸いウッドオウルは積極的に襲い掛かってくる魔物ではなかったため、ユーグたちが遭遇したのは戦った3体だけであった。しかしフォレストオウルも数体出てきたため、進行の邪魔になるものだけ倒していった。
〈ふむ、やはりこの数は異常じゃの、それにウッドオウルの数が急に増えた。
これはいよいよ異変に近づいてきたのかもしれんの〉
「えっ、何で異変に近づいたかわかるの?」
〈普通は強い魔物がいる領域に近づいたとしても、徐々になるものなんじゃよ。
今回の場合、ウッドオウルと出遭ってからすぐにその周辺もウッドオウルだらけになったじゃろ。
通常なら徐々にその数が増えていくのが自然なんじゃよ、ウッドオウルとフォレストオウルが同時に出てくるようになり、徐々にウッドオウルの遭遇比率が高まるといったような感じじゃな〉
「なるほど。ってことは急にウッドオウルだけになったのは異常なことで、それが鳥形の魔物しかいないって異変と関わってるってことだね」
〈うむ、ウッドオウルも鳥形の魔物じゃからな、そう考えるのが自然じゃ。
まぁ万が一の確率で別の異変ってこともあり得るのじゃがな。まぁ魔物の位置は魔力感知で把握できておるのが不幸中の幸いじゃ、これからは遠回りでも魔物を避けて進むのじゃ〉
「わかった、それならこの方向だね」
***
ユーグたちは、魔力感知を使い魔物の位置を確認しそれを避けながら森の中を進んでいた。すでにフォレストオウルは見られなくなり、ユーグの魔力感知にはウッドオウルの魔力反応しか出てこなくなった。その数も奥に進むにつれて増えている。
〈どんどん進むにつれて魔力の反応が増えてきとるな。
これは休む場所もちと考えんと大変じゃぞ〉
「それじゃあ一度少し戻って魔物が少なそうなって!
ウォーターウォール!……急に魔力反応が出て、何で!?」
ユーグたちが歩きながら会話をしている途中、今まで反応がなかった魔力が急に現れ魔物が襲ってきた。魔力の反応が現れすぐに気づいたユーグが水の壁を具現化させギリギリで防御する。
〈これはウッドオウルじゃが、この数が1度にしかも気配や魔力も隠蔽されて気づかなかったとは
……これは変異種などではないぞ!どこかにウッドオウル以上の上位種もおるようじゃ、気を付けるのじゃぞ!〉
現れた魔物はウッドオウルであり、しかもその数は5体もいた。
「上位種が!?
よしまずはブリュー、ブラブ、こないだと同じように防御優先でウッドオウルを仕留めるときはブリューの攻撃で」
「ぐる!」 「ゴブ!」
水の壁に突っ込んだウッドオウルたちは、そのまま動きが遅くなりながらも突っ切ってきた。
「……ゴブブブゴ!」
ウッドオウルたちが水の壁を抜けてくるタイミングで、その壁の内側にブラブが土の壁を具現化させた。ウッドオウルたちはその壁に当たる直前に上手く上空へ回避した。
「こっちにもウッドオウルが、ウォーターアロ―×5!」
1体のウッドオウルは水の壁を迂回してユーグたちへ近づいていたが、それに気づいたユーグが水の矢を具現化させ牽制として放出する。その矢は近づいてくるウッドオウルに刺さることはなかったが、ウッドオウルの攻撃を防ぐことはできた。ウッドオウルは上空に滞空しているブリューたちと対峙したウッドオウルと合流し、そのまままた突撃攻撃を仕掛けてきた。
「まとまって来るなら狙える!ウォーターピラー!」
5体が編隊飛行を組みながら突撃をして来たため、そこに向かってユーグは水の柱を具現化した。その水の柱は上手くウッドオウル3体を捕らえることに成功した。
「よし、この隙にブラブも魔法で狙って。ウォーターランス×3!」
「ゴブブブララ!」
ユーグの手元に水の槍が3本、ブラブの元には土の槍が1本具現化され、その槍たちはウォーターピラーに捕らえられたウッドオウルたちに向かって飛ぶ。
「ホーホーフォ!」
しかし槍がウッドオウルたちに当たる直前、闇の霧が突如ウッドオウルたちを囲むように現れた。その霧のせいでウッドオウルを視界にとらえることが出来ず、ユーグたちの魔法は狙い外した。
しかしまとまったところをユーグたちも狙っていたため、3体いた内の1体には槍が直撃し、血を流していた。
〈やっぱり上位種がいるようじゃ!
ダークフォグを使っておるようじゃから闇魔法を使える魔物じゃろう、それに魔力の隠蔽と姿を隠すことにも長けておるようじゃぞ!〉
「魔力の隠蔽!?姿も見られないからどこにいるのかわからないよ!
ブリュー、ブラブ、とりあえずウッドオウルに集中して、上位種は攻撃だけ注意しといて」
「ぐるぅ!」 「ゴブ!」
ユーグたちは姿や魔力が見えない上位種の魔物を無視し、ウッドオウルの対処に集中した。それは上位種の魔物自体の攻撃では自分たちの守りを突破できないと判断したためだった。もし上位種の魔法が強力なものでユーグたちの防御に使っている魔法を突破できるのならすでに使っていたと思われるからであった。
それでも防御の魔法が間に合わず、素の状態で攻撃を受ければ危険なことには変わらないため、目視できているウッドオウルを先に排除しようとユーグは考えたのである。またユーグの魔力量は年齢の割には膨大にあるため、長期戦に向いているというのも相手の魔物より優位に立てるとこの作戦を取ったわけでもあった。
「……ウォーターピラー!よし、ウォーターランス×3!」
「ゴブブブララ!」
また同じような展開になったので、水の柱でウッドオウルの動きを止め、魔法の槍を放った。
しかしその槍が当たる寸前に、今度は闇の柱がユーグたちが放つ魔法の槍の動きを鈍らせた。その隙にウッドオウルたちは水の柱から逃げる。
「ぐるぅわぁ!」
ユーグたちが放った魔法の槍を闇の柱で邪魔をされ、ウッドオウルたちが水の柱から逃げ出した直後に今度はユーグたちに向かって、闇の槍が飛んできた。けれどもその槍は警戒をしていたブリューの氷爪が直撃し、霧散する。




