ーブリザードボア2ー
何とか今日も投稿できました!
「攻撃は避けるしかないのか……。
こっちの攻撃は当たっても何の意味もないから迂闊に出来ないし、どうすればいいの……」
〈ユーグよ、倒すのは到底無理じゃ、じゃから逃げることを考えよ言うたじゃろ。
攻撃を耐え、なんとか隙を伺うのじゃ!〉
ユーグはブラブの土の壁は一瞬で壊されたのを見て呆然としていた。そしてブリザードボアの攻撃を防ぐ手当はなくなり、攻撃は避けるしかなく、自分たちの攻撃は相手にとって何の痛痒も与えることがないという事実に戦慄する。そこでソタは改めてユーグに今のユーグたちにはブリザードボアを倒す手段はなく、隙を見つけ逃げることを考えろと言う。
「そうだね、まだ攻撃は喰らってないし、身体も動けるんだから逃げることも出来るんだ。
あきらめる理由はない、皆でここを切り抜けるんだ!」
ソタの言葉で勇気づけられたユーグは気持ちを奮い立たせる。それに合わせたようにブリザードボアも動く。
「…………、…………」
ブリザードボアは再び氷を生成しユーグたちに飛ばしてくる。スピードは変わらず数は2つと前の攻撃と全く同じものであった。
「なめるなよ!
さっきと同じ攻撃なんて!」
ユーグはブリザードボアが同じ攻撃をしてきたことにいきり立つ。氷のスピードは魔法を生成する時間があるくらいのものなので一直線に向かって来る氷を余裕を持って避ける。しかしブリザードボアはそれを予期してたように次の動きをする。
「……!」
「えっ!?これは?」
〈ユーグ!そこから動くのじゃ!
地面から攻撃されるぞ!〉
ユーグの氷を避けた先の地面が白くなり始める。それは地面が凍りだしたためになったことだった。
「うっ!?」
完全に凍った地面から氷柱が生えユーグを襲った。ソタの声を聞き急いでその場から動いたユーグであったが、一足遅くその氷柱に足を傷つけられる。
〈大丈夫か!?ユーグ!〉
「急に違う攻撃を仕掛けてきたから避けるのが遅れちゃったけど、このくらいのダメージなら問題ないよ。
ポーションもあるしね、それによく考えたら当たれば一発で終わりだけど僕たちでも避けられる攻撃だけしかして来ないよね?
ブリザードボアってこんなものなの?」
ユーグはブリザードボアの魔力を感知してからその強大さに怯え、そして戦闘が開始してからは自分たちの攻撃が全くブリザードボアに効かない事実に心が折れかけていた。しかしソタの激励で気を取り直していた。そして今までのブリザードボアの攻撃が威力は高いもののユーグたちでも避けられるほどの物であったことに気づいた。
〈わしも実際に戦うのは初めてじゃが、このクラスの魔物はこんなぬるい攻撃をしてくるとは思えんのじゃ。
わしらが死ぬ気で動かないとすぐにやられてしまうような戦い方じゃと思う。
こんな話す暇もないようなものじゃ、でもあやつは今、一切仕掛けてこんしこちらを伺うだけじゃ。
果たしてそれはどういう思惑でいるのか……〉
ユーグを氷と氷柱で襲ってからブリザードボアは変わらずそこで立ったまま動かずにいたが、その目はユーグたちを見つめていた。その間にブリューとブラブはユーグの元に移動していた。
「このまま逃げるのはマズいよね?」
〈うむ、それは危険じゃろ。
攻撃は全く仕掛けてこないわけじゃないし、奴の目はこちらを向いておる。
何を考えているかはわからんが逃げようとしたら今まで以上の攻撃を仕掛けてくるかもしれん〉
「それなら目くらましに何かしないとダメか。
でもダークフォグで効くかな?
それ以外だと目くらましに使えるものもないし」
〈それにじゃ、高位の魔物は魔力を感知する力も相当なものがある、あやつもそれは変わらんはずじゃ。
でもわしらが逃げれるとしたらあやつの目をつぶし、魔力を隠して全力でここから去ることだけじゃろ。
そういう作戦で行くしかないのう〉
「うん、わかった。
ブリュー、ブラブ連戦で大変だと思うけど、僕とブリューで攻撃を仕掛けて注意をこっちに向けるからブラブはダークフォグを最大出力で放って、それがブリザードボアにかかったら魔力を全力で抑えてここから逃げよう」
「ぐるぅ!」 「ゴブッ!」
「じゃあ行こうか!
……ウォーターアロ―×50!」
「ぐるぅああぁ!」
ユーグは自分で操れる最大本数で水の矢を出現させた。それはまるで矢の雨のようにブリザードボアに飛ばす。そしてブリューは先の冒険者との闘いで使えるようになった全身に纏う氷を着けブリザードボアに突撃する。
「……」
しかしブリザードボアはそれに対して回避行動や防御態勢も取らず、ただその場で待ち受けるだけであった。水の矢が50本ブリザードボアに当たるが、毛皮の防御を突破できず霧散し消える。続いてブリューもブリザードボアに体当たりをする。それはブリューの前の爪の攻撃が全く通用しなかったことから、少しでもブリザードボアに効く攻撃を見つけるためにしたことであった。けれども毛皮による防御に加えその体格差もありブリザードボアは微動だにもしない。
「…………、…………」
「また同じだけど、今度は油断しないぞ」
ブリューの体当たりを跳ね返すと同時にブリザードボアはユーグに再び氷を2つ飛ばして来るが今まで変わらない攻撃にユーグは楽々と回避する。その次にユーグが回避した先の地面が凍り始め氷柱が生じる。それも予期していたユーグは地面が凍り始める前にその場から移動し氷柱を回避する。
「……ゴブブゴ!」
ブラブはユーグが氷柱を回避したタイミングで魔法の準備を終え、黒い霧を生成しブリザードボアに飛ばす。黒い霧はブラブが今持てる最大出力の魔力で創られたため今までの魔法の霧と違い範囲も広く、そしてより濃くなっていた。スピード自体は変わらなかったためランスやアロー系の早さよりは遅くブリザードボアに飛来する。
「ぐるぅがあぁ!」
「うおぉぉー!」
ユーグとブリューはブラブの黒い霧をブリザードボアに避けさせないように接近戦を挑み、注意を引き付けようとした。ブリューは先と同じ氷を纏いながら氷爪で何度もブリザードボアを攻撃する。ユーグはショートソードに魔力を流しその剣で斬撃を与える。しかし彼らの攻撃は今までと同様にブリザードボアに何の影響を与えなかった。
「…………」
ユーグとブリューの攻撃はブリザードボアにダメージを与えることはなかったが、その場に留まらせることは成功しブリザードボアに黒い霧が当たる。
「よし!
それなら最後にこれを!」
ユーグはそれを確認するとショートソードを鞘に納め、保管庫から”世界樹”の枝を取り出す。そしてその枝に魔力を流しブリザードボアを斬りつける。
「グワァァーー!」
「えっ?」
今までの攻撃と違い”世界樹”の枝での斬撃はブリザードボアを深く斬りつけることに成功した。ブリザードボアはその痛みに叫び声を上げ、ユーグはあまりの威力に呆然とする。
〈いかん!ユーグよ!
早くその場から去るのじゃ!〉
斬撃の痛みでその場で激しく動くブリザードボア、そしてその周囲にブリザードボアから魔力が漏れ出し急激に温度が下がる。地面が凍り始め空は晴れているのに雪が降りつもる。ユーグはソタの声に反応し、その場から離れた。しかしブリザードボアの脅威はそのくらいで逃れられるものではなかった。
「ゴワァァ――!」
気温の低下や雪がどんどん酷くなり、ブリザードボアの周囲だけでなくそのまた周辺にまで範囲が徐々に広がり始めた。そして暴れていたブリザードボアは動きを止め、何かを全方向に放った。
「うわぁぁーー!」 「ぐるぅぅー!」 「ゴブーー!」
それはブリザードボアが魔力を氷属性へと変化させたものであった。今までブリザードボアが出していた氷と同じものであったが、今までのように一塊で放たれずに周囲全方向に放たれユーグたちは避ける余地もなく直撃した。
次回の投稿は金曜の20時にします。




