1話 白い部屋
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
1話
白い部屋
目を開けると。
俺は、真っ白な空間に立っていた。
壁がない。
床もない。
天井もない。
どこまでも続く白。
「……ここどこだ?」
声が反響する。
不思議なことに体は動く。
痛みもない。
そのとき。
気づいた。
周りに人影がある。
二十人ほど。
だが——
普通の人間ではない。
半透明だ。
輪郭だけがぼんやりと浮かんでいる。
まるで幽霊。
「……お前ら」
思わず呟く。
すると。
一人の影が震えた声で言った。
「ここ……死後の世界?」
その瞬間。
全員が理解した。
俺たちは。
死んだ。
あの火災で。
沈黙が落ちた。
誰も言葉を出せない。
だが。
次の瞬間。
空間の中央に——
木箱が現れた。
古びた箱。
だが、表面には奇妙な紋様が刻まれている。
そして。
どこからともなく声が響いた。
『魂の回収を確認』
機械のような声だった。
男でも女でもない。
感情がない。
『例外処理を開始する』
ざわめきが広がる。
「例外ってなんだよ……」
「俺たちどうなるんだ?」
声は続いた。
『転生希望者は箱からカードを二枚引け』
全員が凍りつく。
転生。
つまり。
生き返れる?
『カードは新しい人生のギフトとなる』
『引かない者は輪廻へ戻る』
沈黙。
やがて。
一人の影が前に出た。
恐る恐る箱に手を入れる。
光るカードを一枚引いた。
次の瞬間。
その体が光に包まれた。
「お、おい!」
呼び止める間もなく。
影は消えた。
転生したのだ。
その瞬間。
空気が変わった。
次々と魂が箱へ向かう。
カードを引く。
そして消える。
やがて。
俺の番になった。
箱の中を見る。
無数のカードが浮かんでいる。
どれも光っている。
俺はゆっくり手を入れた。
二枚掴む。
一枚目。
光る文字。
ギフト:空間収納
物を保存できる能力。
そして二枚目。
三つの紋章。
風。
水。
火。
文字が浮かぶ。
三代魔法:風・水・火
カードが砕けた。
光が体に流れ込む。
『適合者確認』
声が言った。
『転生処理開始』
そして。
ほんのわずか。
声の調子が変わった気がした。
『選ばれし者よ』
『仲間を救え』
「……仲間?」
俺が呟いた瞬間。
世界が崩れた。
光が溢れる。
意識が遠のく。
そして——
次に目を開けたとき。
俺は草原に倒れていた。
青い空。
広い大地。
知らない世界。
頭の中に声が響く。
《空間収納 解放》
《三属性魔法 適合》
俺は理解した。
本当に。
異世界に来た。
だがこの時の俺はまだ知らない。
この世界での旅が。
仲間の魂を救う戦いになることを。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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