第17話:『亡霊たちの挟撃(ボトルネック)』
1. (起)
【マフィアの血煙を抜け、出口の灯りが見える通路。キヨシが香織を庇いながら進むが、ハルが不自然に足を止める。】
キヨシ 「どうしたんだ?……ハルさん」
ハル 「……思った通り。つけられています」
キヨシ 「つけられてる!?マフィアの生き残りか……?」
ハル 「……いえ、これは……」
2. (承)
【前後の闇から、総勢10数名の軍服を纏った一団が姿を現す。リーダーはキヨシの元「後輩」の将校(注1)。】
将校 「マフィアに食い殺されるのを待っていましたが……さすがは『首席』だ。だが、ここまでですよ、先輩」
キヨシ 「お、お前はっーー!!」
【キヨシが最後の弾丸を込めたコルトを構えようとした瞬間、ハルがその前に一歩踏み出し、キヨシの腕を制する。】
3. (転)
ハル 「キヨシさん、ここは私が引き受けるわ。あなたはお嬢様を旦那様の元へお連れして!」
キヨシ 「無茶だ!ハルさん。相手は軍人だぞ」
ハル 「狭い通路にお引き寄せるわ。大丈夫、ひいお爺様直伝の柔術の技は伊達じゃない。それにお嬢様の安全が最優先の筈よ。あなたは私より脚力がある」
キヨシ 「……ハルさん……まさか、知っていたのか……軍が俺のことを……」
ハル 「……ある程度は……ですけど、まさか、このタイミングとは……」
【ハルが旧会津藩の情報網で、刺客の動向を最初から掴んでいたことを明かした。】
キヨシ 「会津藩……!?……ハルさん……きみは一体……」
4. (結)
将校 「どうした?先輩。向かってこないな。……さすがに観念したか?」
【雲から月が顔を出した瞬間、ハルが手鏡の角度を微調整する。反射した鋭い月光が、出口で待ち構える兵士たちの目を正確に灼く。】
将校の部下数人 「……ぐわっーーっ!」
ハル 「今です!」
キヨシ 「しかしーー!」
ハル 「行って!! 合流地点に救命ボートが用意されているはずです!」
【ハルがキヨシの背を力強く押し出す。出口の兵士たちが混乱する中、キヨシは香織を抱えて最短ルートのボートへと走り出した。】
将校 「ちいーっ!小賢しい女だ」
キヨシ 「(必ず戻る……お嬢様を届けたら、すぐに!待っててくれ、ハルさん!)」
【振り返るキヨシの瞳に映るのは、月光のような冷たさを湛え、古流柔術の構えを取るハルの横顔であった。】
※ (注1) 将校=軍の階級名称




