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自由行動

--- 魔王ドラミスの視点 ---


 朝食をすませた後に、家の前に馬車が止まった。


「じゃあ、ディフセル城で剣術指導してくる。3百G渡すから、今後の昼飯代にしてくれ。家の中にいる必要はないが、くれぐれも危ない行動だけはするなよ」


 カルは、馬車に乗って城に行ってしまった。さて、危ない行動はするなと言われたが、何をしてはいけないのかよく分からない。そして、何もしないと退屈である。

 今やりたいことは、魔法の試用と魔導仕込み(ストレンギミック)の調査か。外にでて露店市場へ向かう。相変わらず、ここは人間が多い。いろいろ露店を確認しいく、武器の店を発見した。並べている武器を入念に見てみるが、魔力の匂いは感じない。


「ここに魔導仕込み(ストレンギミック)はないか?」

魔導仕込み(ストレンギミック)は高級だから、露店市場では、あまり売られてないね。買いたければ北の通り沿いを歩けば専門店があるぞ。赤色の看板で目立つから、すぐ分かるよ」


 私は、指示された方向へ向かい、魔導仕込み(ストレンギミック)専門店を見つけ、中に入る。店内には、5人ほどしかいない。


「なにか、お探しでしょうか?」

魔導仕込み(ストレンギミック)の武器で、風か土の属性はあるか?」


 店主は、壁に置いてある品物2本をテーブルに置いた。


「でしたら、こちらの風鈴剣(ウィンドソード)土剛剣(ノームダガー)はいかがでしょうか?」


 2本から魔力の匂いを感じる。この2本があれば、風と土の魔法も使えるようになりそうだ。


「この2本が欲しい」

「では、合計1万Gになります。」

「1万?!」


 私の手持ちの金額では、とても買えなかった。どうする、無理矢理奪うか? カルの危ない行動に該当するかもしれないのでやめた。以前、カルに調達を頼んだが、拒否された理由を納得した。


「金が足りない、また次回くる」

「お待ちしております」


 金が無いなら、稼げばいい。私は、ギルド施設へ移動することにした。だが、お腹から音がなる。気付けば、太陽が真上まで上っている昼どきだ。何処かで、昼飯を食べようと思ったが知らない飯屋は料理の値段があまりわからないので、無難に山猫飯屋にした。


「へい、いらっしゃい! 今日はティオさんだけかい?」

「そうです。"おまかせ"をくれ」


 店主に近い席にすわる。彼の料理する姿を注意深く見る。


「ティオさん、料理が珍しいかい」


 店主が、私の視線を気にしたようだ。


「私も、おいしい料理を作りたいなと思ってね。店主の観察させてもらうよ」

「ははは、見て盗めるほど、わしの料理は簡単じゃないぞ」


 確かに、店主の料理の腕は早く簡単に盗めそうではなかった。


「どうすれば、料理の腕が上がるの?」

「そうだな、身近な人に教えてもらうのが良いが、カルさんは料理下手そうだからな。料理の本とか買って勉強すれば良いじゃないかな」


 本か、魔法の本は大量に読んだことがあるのだが料理の本もあるのか。


「へい、おまちどさん! ミノタウロスのティーボーン焼き!」

「店主、"おまかせ"が前のと、違うけど」

「"おまかせ"は、日によって変わるものなのだよ」


 そういうものなのか、料理を食べる。口の中に肉汁が狂乱してうまい。


「昨日、街の中心にある城で料理食べたけど、ここの料理の方がおいしいかな」

「ははは、ティオさんは、お世辞がうまいね」


 お世辞ではなく事実を述べたのだが、ここの店の料理は自分の手で再現できるようになりたい。

 食事をすませた後、ギルド施設に入り案件の紙を眺めてみる。よくわからない案件だらけだ。この前と同じバウウルフの案件を見つけた。今回は、1人で案件をこなすため、慣れているものを選ぶことにした。


「おい、お嬢ちゃん1人かい?」


 野暮ったい格好の男達が声を掛けてきた。


「ギルド案件は危険だぜ、俺達のグループに加わらないかい? 俺は、B級グループ"デスレーション"所属のゲウェイというのだが、お嬢ちゃんの名前なんて言うのだい?」

「ティオだよ」


 男達の表情は急に凍った。


「ティオ?! 切り裂きの女戦士ティオ=ラングか?!」

「ゲウェイ、逃げるぞ! こいつに近づくと装備品を切り裂かれちまう!」


 男達は、何処かに行ってしまった。なんだったのだろうか。


 街の外にでる。これから、バウウルフを探さないといけないが、懸念がある。今回はカルが、盾になってくれる者がいない。バウウルフの素早い攻撃を、魔法を詠唱しながら戦うのは危険である。

 アイデアが閃き、水冷剣(コールブレード)の鞘を抜く。


「あらわれよ、氷の守護者よ氷巨人(アイスゴーレム)! 私を守れ!」


 水魔法から、アイスゴーレムを召還する。この土地はあったかい気候のためアイスゴーレムを維持するには、かなりの魔力が必要そうだ。本来は、ストーンゴーレムが良いのだが土魔法がつかえないため代替えである。

 さっそくアイスゴーレムを引き連れ周りを探索する。

 だが、バウウルフどころか他の魔物も姿を現さない。アイスゴーレムの存在が威圧的すぎたのだろうか。無駄に体力を消費していく。


 「そういえば、私の鞄に誘導香とやらが入っていたな」


 誘導香を火魔法であぶりだす。この匂いは、人間が作るうまい料理と似ている。

 匂いに引き付けられ、周辺から様々な魔物が襲ってきた。アイスゴーレムが私を守るように迎え撃つ。私は、魔法で迎撃する。アイスゴーレムを維持しながら、魔法を使うのは、体力の消耗が激しく感じた。


 やがて、誘導香が炭になり効果が無くなり魔物も近づかなくなった。私の周辺には、様々な魔物の死骸が転がっている。


 ――魔王である私が、魔物を殺戮か。


 皮肉的だが、罪は感じなかった。バウウルフの死骸は5匹程度。魔物の死骸の数と比べて少ない。耳を切りとり、街へ戻る。途中、アイスゴーレムの維持を解除し、ゴーレムはただの氷塊になった。

 街のギルド施設へ戻った。バウウルフの耳とギルド会員証を見せると50Gを入手した。魔導仕込み(ストレンギミック)を入手できるのは、気が遠くなるほど先になりそうだ。


 家に戻ると、カルが帰宅済みで夕飯を用意していた。

 カルの料理は相変わらずまずい、やはり私の手で料理を作成できるようにならねば。


 ***


 次の日も、カルが馬車に乗って城へ行った。

 私は、露店市場の武器屋のとこへいく。


「料理本はないか?」

「また、あんたか……そんなもの、ここの露店市場にないね。東の通りを進むと青い看板の本屋があるよ」


 私は、教えてもらった方向に進み、本屋を見つけて中に入る。店内には、本棚が所狭しに並べられていた。

 魔法、武器、道具、魔物……

 どれもこれもが目移りしそうなジャンルとタイトルの本が置いてある。だが、今回の目的は料理の本を見ることであるため、料理本の棚を探った。棚には、70冊ほどの料理本が収められている。


「人間は、こんなにも料理を研究しているのか」


 全ての本を立ち読みしきるのは難しそうだ。なるべく分かりやすく内容の濃い本を見つけて、購入し、ゆっくり家で読むとしよう。様々な内容の本を速読しながら購入する本を決める。


「"基礎からの料理レシピ大全"これにしよう」


 本には、文字だけでなく絵も記入されており、これが決め手であった。店員に本を見せて会計を済ませる。

 家に戻り、パンで簡単な昼食をしながら、料理本を読んだ。

 食材、調理法、調理後の食材のもりつけ方やいろどり……。だいぶ、料理の方法が頭の中に入ってきたが、実践もした方がいいだろう。

 今夜の夕飯は、私が作ることにした。早速、露店市場へ行き夕飯の食材を探す。前は、露店市場で売られている食材が見知らぬものばかりであったが、本のおかげでだいぶ分かるようになった。


「じゃがいも、にんじん、ほうれん草……」


 夕飯は、スープを作成することにした。早速、家で調理をする。まず、包丁で野菜のかわを剥く、力が余って我の指も剥いてしまった。血しぶきがとぶ。

 急いで、水冷剣(コールブレード)を鞘から抜き詠唱する。


「我が傷よ、聖なる水で癒されよ、聖水生成(ポーションヒール)


 傷が癒えた。この後も何回も指を剥ぎ回復魔法を使うのを繰り返した。

 食材を切り終えたので、全部鍋にほうりこんで茹でる。ある程度、煮終わったところで塩や胡椒を入れる。

 スープを試しに呑んでみる。カルよりおいしいが、プレシアほどではない。

 まだまだ、改善の余地がある。


「ただいまティオ、何この匂い?!」


 夕方近くにカルが帰ってきた。


「おかえりカル、今日から私が夕飯を作成することにした。」


 テーブルにスープとパンを置く、料理した私でも貧層に感じる食事である。


「ティオの料理、おいしいな!」


 カルは、口にしたものが何でもおいしいと言っている。貧乏舌なのだろうか? カルが味の違いが分かるまで、料理の腕を磨く事を目標に決めた。

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