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魔物達

 ルックウト平原に、ギルドB級グループ"デスレーション"所属の2人がいた。彼らは、いつもどおりのギルド案件をこなすために動いていたが、いつもと違う雰囲気に違和感があった。


「なあゲウェイ、今日はやけに魔物の姿を見ないな」

「ああカース、この世から魔物が消えちまったんじゃないか?」

「それなら、俺達の仕事も消えちまったな」


 すると、遠くで巨大な砂煙が上がっているのが気付いた。


「おいカース! 向こうから魔物の集団がやってくるぞ!」

「なんだと、3千匹はいるぞ! あんなの相手できるか、逃げるぞ、ゲウェイ!」


 2人は、街の方角へ走って行った。


 *


 魔物の軍勢の中に、ひときわ存在感を放つ2匹がいる。3魔将のティガルとウィレムである。

 ティガルは、獅子の顔を持ち他の魔物よりも際立ってでかい。口の呼吸が荒く煙が噴き出ている。

 ウィレムは、全身が羽にまとわれており姿がよく分からない、炎をまとっているようにも見える。


「部下共よ、目的は威嚇攻撃だ。無理に街内に攻め入る必要はない!」


 ティガルが魔物達に指示を吠えた。


 ドゴォン


 魔物の軍勢に巨大な爆撃が発生する。進撃の足を止める軍勢、彼らの前には3人が立塞がっていた。

 勇者カル=ハルファン、魔法使いプレシア=ジェファー、重戦士ステファン=ジミーである。


「勇者達か? まさか我が軍の進行を予想していたか?」


 ティガルが、また口から煙を吹き出す。


「だが、それでもかまん、迎え討て!」


 ウィレムの指示に従い、3人に魔物の軍勢が襲いかかる。


「風の防衛をまとえ加護風(ウィンドセルフ)」


 プレシアが唱えた魔法は、強力な風圧が近接戦を仕掛けてきた魔物に風圧があたり、動きを止める。さらに、その隙を逃さずカルとステファンが魔物を斬っていく。

 魔物達は距離を置き、カル達に遠距離攻撃を仕掛ける。カルとステファンは魔物達へ突攻していき、プレシアが後方で支援する。再び魔物が距離を置き遠距離攻撃を仕掛けてきた。


 ――何かが、おかしい


 魔物達の行動に違和感があった。もし、魔物達が本気で街に攻撃をしかけたのなら、勢いを殺すどころか、後退してまでカル達を攻撃するだろうか?

 軍勢の奥に2匹の巨大が見える3魔将だろうか?

 カルは、あることに気付きディフェルの街の方角を見る。そこには、黒煙が1本あがっているのが見えた。

「プレシア、大変なことに気付いた3魔将と思えるやつらのうち1匹がいない。もしかすると、1匹は別働隊で街に攻めているかもしれない」

「わかりました。カル、ここは私とステファンが殿をつとめます。カルは、街に戻り状況を把握してください」

「ここは、任せたぞ!」


 カルは街の方角へ駆け出した。


 **


--- 同日 レイアの視点 ---


「報告します。ディフェルの街に向けて、3千匹程の魔物の軍勢が街へ攻めてきています!」


 ディフセル城内にある領主の間、父上グレイの前で兵士が、状況を報告した。

 父上グレイ含め貴族の者達も、戦争に臨める服装に着替えている。


「ブリンクマン殿の予言が確定されたか。流石は、王宮の魔法使いだ。兵士達は城壁で迎え撃てるように待機させて正解だったな。勇者カル達は?」

「勇者達3人は、街外で迎え撃つそうです」


 動揺する私、街外ということは、兵士達と連携せずに戦うことを意味している。


「街外で? たったの3人で3千匹の魔物の軍勢を迎え討つのか?」

「はい、カル殿達は以前も同規模の魔王軍の城を攻め入り、魔王ドラミスを打ち取ることに成功しています」

「あらためて、頼もしい。だが、我が軍も緊急の事態に対応できるよう外側城壁の防衛姿勢をくずすな」


 父上は、毅然とした態度で、兵士達に指示をだしていく。

 私は、ディフセル城3階の展望フロアに移動して、ルックウト平原の方角を見る。ときおり、轟音が聞こえる。もう戦闘は始まっているのだろうか? 私は、カル先生との剣の稽古で使っていた木剣を強く握りしめていた。


「カル君が心配ですかね」


 声の先には、ブリンクマン殿がいた。


「リーム王子と共に首都へ避難されなかったのですか?」

「うむ、何者かが乗り移っているティオ君が、何処に潜んでいるか分からないのが気になってね。私だけ、ここに少し滞在することにした」


 ティオさんに、何者かが乗り移り失踪したという件は、3日前に知った。


「ブリンクマン殿は、占いができるとお聞きしました。この戦いどうなるか分かりますか?」

「それなのだが変だ。この展望フロアの一部が燃えるのが見える」


 ブリンクマン殿は、片目を閉じて辺りを見回す。


「ここにおいででしたか、お嬢様! 領主がお探しでしたよ」


 展望台フロアのドアから兵士が私に声をかける。父上が私を探していた? それに、この兵士の顔には見覚えがない。


「レイアお嬢様、下がっていてください。こいつは、人間ではない!」


 ブリンクマンは、杖を構える。

 兵士は、こちらに向い走り出したかと思いきや、距離を一瞬にして縮めて、右手を巨大な爪に変化させて振り払った。


「むう、我を守れ氷心盾(アイスシールド)」


 鈍い音と共に、爪を弾き返す。


「ちっ、まさか俺様の正体に気付くのがいるとはね。もう少し、手際よく貴族共を皆殺しにしたかったのだけどなあ」


 そう言うと彼は、姿を急激に変化させる。その姿は巨大なトカゲだが、さらに眼は異質な大きさである。次の瞬間、爪でドア付近を破壊した。


「これで、邪魔はこないだろう。まずは、あんたらをなぶり殺しにするか」

「魔王ドラミス直営配下3魔将の1匹のカルメオス!」

「お、知っているのか? 俺様も有名だね。なら、俺様の能力は知っているかい? 知っていてもどうしようもないけどね」


 カルメオスの表面は風景と同化した。


「むう、あの巨体を消しただと!」


 次の瞬間、ブリンクマンの右腕が杖ごと吹き飛んだ。カルメオスが姿をあらわし、ブリンクマンにとどめをしようと左の爪を振り下す。私は、木剣で受け止めた。


「おっと、俺様の1撃を受け止める女の子がいるとはね。どうする鍔迫り合いになったけど、振り払えるかい?」


 右爪が私の首に近づいていく。


「あなたを殺した後、あなたに変身して領主を殺しに行きましょう。娘に殺される彼はどんな表情をするか楽しみだわ」


 右爪は私の喉元にふれかける。このままではやられる。


「風の断裂よ、障害を切り裂け! 風刃(ウィンドブレイブ)!」


 詠唱に反応して、カメレオスは攻撃を避ける。床に亀裂がはいった。


「相変わらず姑息だな、カメレオス」


 カメレオスは声の先、城の屋根を向く。


「……おまえは、確か勇者メンバーの1人?!」


 城の屋根に4つの剣を抱えたティオがいた。

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