第16章 — 「エルフの国の名前」
第16章 — 「エルフの国の名前」
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朔継は目を開けた。
朝の光が部屋の木の壁の隙間から差し込み、床に細い線の影を落としている。外からは、町が動き始める音が聞こえる——商人たちが店を開き、馬が石畳を歩き、人々が大声で話している。
四日目。
彼はベッドの端に腰を下ろした。
息を吐く。
身体は普通だ。疲れていない。痛くもない。昨夜の睡眠——わずか数時間ではあったが——思考をリフレッシュするには十分だった。
彼は立ち上がった。
部屋の隅の水差しの水で顔を洗う。
収納から清潔な服を取り出す——白いリネンのシャツに黒いズボン、革靴。簡素だ。目立たない。
そして——彼は部屋を出た。
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彼はアウラリアの部屋のドアをノックした。
「アウラリア。」
返事はない。
もう一度ノックした。
「アウラリア、入るぞ。」
ドアを開けた。
アウラリアはまだベッドに横たわっている。目は閉じている。呼吸は規則的だ——昨夜よりも規則的だ。顔は以前ほど青白くない。頬に少し血色が戻っている。
彼女は眠っている。
回復している。
朔継は静かにドアを閉めた。
休ませてやろう。
彼女にはそれが必要だ。
彼は宿屋の階段を下りた。
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太い白い髭を蓄えた老人が、まだ机の後ろに座っている。半開きの目で朔継を見つめる。
「おはよう。」
「おはよう。」
「あの女性は?」
「まだ寝ている。」
「昨夜より顔色が良さそうだ。」
朔継はうなずいた。
「休ませる必要がある。」
老人はうなずいた。
「台所に食事がある。パンとスープだ。無料だ。」
「ありがとう。」
朔継は台所へ歩いていった。
温かいパン。簡素な野菜スープ。豪華ではないが、腹は満たされる。
彼は静かに食事をした。
食べながら、計画を考えた。
アウラリアには回復の時間が必要だ。
俺にはこの世界の情報が必要だ。
エルフについて。
世界樹について。
ハイエルフについて。
彼女が学んだ闇の魔法について。
知らないことが多すぎる。
そして俺は、知らないことを知らないままでいるのが嫌いだ。
彼は食事を終えた。
机に銅貨を数枚置いて、感謝の意を示した。
そして——宿屋を出た。
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町はすでに活気づいていた。
市場は人で溢れている。商人たちが商品を叫びながら売っている。子供たちが大人の足元を走り回る。老女が道端で花を売っている。
朔継はそのすべてを通り抜けた。
彼は何かを探していた。
図書館。
この世界について学べる場所があるとすれば、それは図書館だ。
彼は商人に尋ねた。
「すみません、街の図書館はどこですか?」
商人は不思議そうに彼を見た。
「図書館? 大通りの突き当たりだ。白い石造りの建物で、大きな木の扉がある。見逃すことはないだろう。」
「ありがとう。」
彼は教えられた方へ歩いていった。
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図書館は確かに見つけやすい場所だった。
白い石造りの建物に大きな木の扉——木と星の彫刻が施されている。扉の上には、この世界の言葉で刻まれている。
「市立図書館 — 1423年設立」
朔継はドアを開けた。
内部の空気は冷たく感じられる。高い木製の棚が天井まで伸び、革装丁と金文字の背表紙を持つ本で埋め尽くされている。高い窓から陽光が差し込み、石の床に光の模様を作り出している。
丸い眼鏡をかけた老人が、部屋の隅の机の後ろに座っている。鋭い目で朔継を見つめた。
「初めての来客か?」
朔継はうなずいた。
「この世界の歴史について読みたい。種族について。エルフについて。」
老人は眉をひそめた。
「エルフ? エルフに興味があるのか?」
「学びたいのだ。」
老人はしばし沈黙した。
そして——うなずいた。
「一番奥の棚、左側だ。エルフの歴史についての本が何冊かある。ただし注意しろ——いくつかは人間によって書かれたものだ。彼らの視点が常に客観的とは限らん。」
「ありがとう。」
朔継は教えられた棚へ歩いていった。
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その棚は分厚い本で埋め尽くされていた。
緑、青、茶色の革装丁。背表紙の金文字がタイトルを示している。
「世界史 — 第1〜5巻」
「主要種族とその起源」
「エルフ王国と世界樹」
「ハイエルフ — 永遠の貴族」
「ダークエルフ — 追放と復興」
朔継は数冊の本を手に取った。
部屋の隅の机に持っていった。
腰を下ろす。
読み始めた。
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「世界史 — 第1巻」
この世界は、創世女神ゲネシスヴァによって創造された。彼女は大地、海、空、そしてそのすべてのものを形作った。彼女はまた、ダンジョン——この世界の生命と危険の源——も創造した。
創造の後、様々な種族が現れ始めた。人間。エルフ。ドワーフ。獣人。ドラゴニュート。魔族。彼らは世界中に広がり、文明を築き、戦い、そして平和を結んだ。
この世界には単一の統治体制はない。多くの王国、帝国、スルタン国、共和国が存在する。大きく強いものもあれば、小さく弱いものもある。それらすべてが、様々な形で競争し協力し合っている。
彼は読み続けた。
「主要種族とその起源」
人間は最も広く分布する種族である。彼らはどこにでも住んでいる——平原、山脈、海岸。目立った身体的特徴はないが、最も適応力のある種族である。ほぼすべての環境で生き延びることができる。
エルフは長命の種族である。彼らは大森林に住み、自然と深い繋がりを持つ。彼らは三つの主要なグループに分かれる:ハイエルフ、エルフ、ダークエルフ。
朔継は読み止まった。
ハイエルフ。エルフ。ダークエルフ。
彼はアウラリアの言葉を思い出した。
「私は普通のエルフです。」
「私の家族は代々ハイエルフの宮殿に仕える使用人でした。」
「ハイエルフが私を追っているのは、禁忌の魔法を学んだからです。」
彼は読み続けた。
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「エルフ王国と世界樹」
エルフは独自の王国に住んでいる——大陸中央部の広大な森林地帯。その王国の中心には、世界樹と呼ばれる巨大な木がある。世界樹はエルフの生命の中心である。根から頂上まで、世界樹はエルフ文明のすべてを支えている。
ハイエルフは世界樹の上部に住んでいる。彼らは貴族、王族、神官、そして古代の知識の守護者である。彼らは世界樹を自分たちの権力の正統性の源と見なしている。
普通のエルフは世界樹の幹や枝、周辺の森林に住んでいる。彼らは戦士、農民、狩人、工匠、森林守護者である。彼らはエルフ王国の人口の大部分を占める。
ダークエルフは世界樹の地下、主に洞窟と根のシステムに住んでいる。彼らは歴史的に追放された集団である。一部は過去の反逆者の子孫である。他の一部は禁忌とされる魔法を学んだために追放された者たちである。
朔継は読み止まった。
禁忌の魔法。
ダークエルフは禁忌の魔法を学んだために追放された。
アウラリア——普通のエルフ——が禁忌の魔法を学んだ。
そして彼女はハイエルフに追われている。
ここにパターンがある。
彼は読み続けた。
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「ハイエルフ — 永遠の貴族」
ハイエルフは自分たちを最も純粋なエルフの種族だと考えている。彼らは血統を厳格に守る。彼らは普通のエルフとは結婚せず、ましてや他の種族とは結婚しない。彼らは血の純粋さが自分たちの力の源であると信じている。
ハイエルフはまた、エルフ王国の宗教も掌握している。彼らはエルフの女神——永遠と自然の女神——の神官である。彼らは、女神が調和と永遠を望んでおり、ハイエルフがその調和の守護者であると教えている。
彼らは変化を好まない。彼らは革新を好まない。彼らは新しい魔法を脅威と見なす。彼らは特定の魔法——特に闇、死、または進化に関連する魔法——をしばしば禁じる。
禁じられたそれらの魔法は『禁忌魔法』と呼ばれる。
禁忌魔法を学んだ者は誰でも罰せられる。罰則は追放、投獄、または処刑である。
朔継はその本を閉じた。
目の前の壁を見つめた。
禁忌魔法。
ハイエルフは特定の魔法を禁じている。
ダークエルフはそれを学んだために追放された。
アウラリアはそれを学んだために追われている。
ここに一貫性がある。
ハイエルフは変化を好まない。
彼らは新しい魔法を好まない。
彼らは自分たちの支配外で強くなろうとする者を好まない。
彼は別の本を手に取った。
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「ダークエルフ — 追放と復興」
ダークエルフは世界樹から追放されたエルフの子孫である。最初の追放は数千年前に起こった。エルフの一団がハイエルフに反逆したのだ。その反乱は失敗し、反逆者たちは世界樹の地下へと追放された。
それ以来、ダークエルフは地下、世界樹の根の間に住んでいる。彼らは独自の文化と魔法を発展させた。彼らは過酷な環境で生き延びることを学んだ。彼らはより強く、よりたくましく、より自立した。
ハイエルフとダークエルフの関係は依然として悪い。ハイエルフはダークエルフを裏切り者であり追放者と見なしている。ダークエルフはハイエルフを圧制者であり暴君と見なしている。
しかし、すべてのダークエルフが邪悪なわけではない。彼らの多くはただ平和に暮らしたいだけだ。彼らは追放されることを選んだわけではない。彼らは単に先祖の運命を受け継いだだけだ。
朔継はさらに読んだ。
ダークエルフはまた、独自の魔法を持っている——ハイエルフの魔法とは異なる魔法だ。ダークエルフの魔法はしばしばハイエルフによって『闇』と見なされるが、実際には他の魔法よりも闇ではない。ただ、ダークエルフは新しいものを探求することを恐れないだけだ。
ダークエルフの魔法には以下が含まれる:
・影魔法
・幻影魔法
・死霊魔法(限定的)
・呪術(限定的)
・進化魔法
進化魔法はハイエルフによって最も禁じられている。この魔法は変化に関係する——身体を変え、能力を変え、運命を変える。ハイエルフはこの魔法をエルフの女神への冒涜と見なしている。
朔継はその本を閉じた。
進化魔法。
アウラリアは禁忌魔法と言った。
おそらく彼女は進化魔法を学んだのだろう。
それがハイエルフが彼女を追う理由かもしれない。
彼は息を吐いた。
まだ知らないことがたくさんある。
しかし少なくとも、今はより多くのことを知っている。
エルフについて。
ハイエルフについて。
ダークエルフについて。
世界樹について。
禁忌魔法について。
彼は目の前の本を見つめた。
これは始まりに過ぎない。
他にも学ぶべきことがたくさんある。
この世界について。
その政治について。
王国について。
ダンジョンについて。
魔物について。
経済について。
文化について。
すべてがいつか役に立つだろう。
彼は別の本を手に取った。
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彼は数時間読み続けた。
情報が、空の容器に水が流れ込むように彼の思考に流れ込んでいく。王国の名前。都市の名前。種族の名前。神々の名前。
この世界は広い。
彼の想像以上に広い。
多くの王国がある——大きく強いものもあれば、小さく弱いものもある。北には帝国、東にはスルタン国、南には共和国、西には小さな王国がいくつかある。
人間が最も支配的な種族だが、彼らだけではない。エルフは独自の王国を持つ。ドワーフは独自の山脈を持つ。獣人は独自の草原を持つ。
すべてが互いに交流している——交易し、戦い、協力し合っている。
すべてが独自の利益を持っている。
そしてそのすべての中心に——始原島がある。
彼は読み止まった。
始原島。
この本の中で始原島についての情報は見つからなかった。
おそらく誰もその場所を知らないのだろう。
あるいは意図的に隠されているのかもしれない。
彼は最後の本を閉じた。
棚に戻した。
老人の机へ歩いていった。
「ありがとう。多くのことを学んだ。」
老人はうなずいた。
「いつでも来ていい。この図書館はすべての人に開かれている。」
「また来る。」
朔継は図書館を出た。
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外では、太陽はすでに高く昇っていた。
日はもうすぐ正午だ。
朔継は宿屋へと戻った。
頭の中は新しい情報で満ちている。
ハイエルフ。
ダークエルフ。
世界樹。
禁忌魔法。
進化魔法。
そして始原島——どの本にも記録されていない場所。
彼は宿屋に到着した。
ドアを開けた。
アウラリアが食堂のテーブルに座っている。その目——淡い青色——が彼が入ってくるのを見つめた。
「出かけていたのですね。」
「図書館に行っていた。」
「何のために?」
「この世界について学ぶために。エルフについて。ハイエルフについて。ダークエルフについて。」
アウラリアはうつむいた。
「……何か見つけましたか?」
「ハイエルフは変化を好まない。新しい魔法を好まない。禁忌魔法を学んだ者は誰でも追放する。」
アウラリアは静かにうなずいた。
「……その通りです。」
朔継は彼女の向かいに座った。
「お前は何を学んだんだ?」
アウラリアは顔を上げた。
「……進化魔法です。」
「思った通りだ。」
アウラリアは驚いた目で彼を見た。
「ご存知だったのですか?」
「本で読んだ。ハイエルフに禁じられた魔法だ。変化に関係する魔法だ。」
アウラリアはうなずいた。
「私は強くなりたかった。普通のエルフでも何かを成し遂げられることを証明したかった。でも……」
彼女はうつむいた。
「失敗しました。」
朔継は答えなかった。
ただ静かにアウラリアを見つめた。
「これからどうするつもりだ?」
アウラリアは顔を上げた。
「……わかりません。」
「逃げることもできる。隠れることもできる。世界樹に戻って罰を受け入れることもできる。」
アウラリアは首を振った。
「戻りたくありません。」
「なら、俺と一緒に来るか?」
アウラリアは目を見開いた。
「何?」
「ある場所へ行くつもりだ。ここから遠く離れた場所。誰も知らない場所。」
「どこですか?」
朔継は小さく微笑んだ。
「始原島。」
アウラリアは眉をひそめた。
「……その名前は聞いたことがありません。」
「俺もだ。だが、探すつもりだ。」
アウラリアは沈黙した。
そして——うなずいた。
「……一緒に行きます。」
朔継はうなずいた。
「明日出発だ。」
アウラリアはうなずいた。
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【次章 第17章 — 「ダンジョンは神が作った」へ続く】
朔継は宿屋の前に立っていた。
太陽が頭上で輝いている。
遠くに、寺院の塔が見える——人々が神々に祈りを捧げる場所。
神々。
ゲネシスヴァ。
火の神。水の神。地の神。風の神。
時の神。空間の神。魂の神。
地方神。人間の神。エルフの女神。魔族の神。
この世界には多くの神々がいる。
そしてダンジョン——ゲネシスヴァが創造した場所。
明日、彼はダンジョンについてもっと知るだろう。
しかし今は——
寺院を見に行きたい。
彼は遠くの寺院の塔へ向かって歩き出した。
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【第17章へ続く……】




