第6章 建国 3
第6章
建国 3
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僕が、「じゃあ、リティラもグレーヴェもネクジェーも、此れからは僕を公私共に全て支えて欲しい」と、言うと目に僅かに涙を浮かべて、元気良く返事をしてくれた。
多分、僕とティニーマが相談していた間、不安にさせてしまったのだろう。
丁度良いので、「ちょっと休憩にしようか」と言って、少しお茶にする事にした。
その間は、好きな食べ物を教え合ったりして、他愛無い話しをしていたのだが、ティニーマが爆弾発言をぶっ込んで来た!!
「…………じゃあ、此れからは家事の分担とか順番を決めないといけないわね。
あ!!もっと大切なコトがあったわ!!
ちゃんと、夜の順番を決めておかないとね!!」
「な?!」
「そうですね!!」
「え?!」
「よ、夜の順番?!」
「「ええ?!」」
「はい!!」
「そ、そうだよね?!」
「ええ、そうですね」
ティヤーロ、サウシーズ、リティラ、レアストマーセ、ディティカ、イデティカ、ペアクーレ、グレーヴェ、ネクジェーの順のリアクションだ。
驚く者も多く居るのに、ティニーマはそのまま、話しを進める。
「やっぱり、みんな若いから不安もあるだろうし、此処は年齢順にする?」
「!!お母さん、其れはズルい!!
絶対自分が一番だからって!!」
「そう言えば、ティニーマさんって何歳なの?」
リティラはまだ11歳だ。
女性の年齢も平気で聞く!!
実は僕も気にはなっていたが、紳士として、聞くことが出来ないでいた。
体調が良くなってからのティニーマはとても若く見える。
見た目的には、20代半ばくらいだ。
だが…………
「リティラ。女性に年齢を聞くのは良くないわよ。
でも、言い出したのは私だから仕方ないか…………
35歳よ」
「「「35歳ぃ〜〜〜…………!!!!」」」
ティヤーロ以外の全員が驚いた!!
僕もだ。
まあ、ティニーマはティヤーロの母親で、ティヤーロは成人しているのだから、当然そのくらいなんだろうが、驚きだった。
グレーヴェとネクジェーなんかは、
「ティニーマさんって、ティヤーロさんの本当のお母さんだったんだ」
「そうみたいだね。育ててくれたとかで、お母さんって呼んでるのかと思ってた……」
なんて会話もしていた。
そんな流れで、全員の年齢発表会へと突入した。
ティニーマが35歳、ティヤーロが17歳、サウシーズが20歳、ついでにハンジーズが3歳で、リティラが11歳。
レアストマーセが25歳で、ディティカ、イデティカが双子で17歳、ペアクーレが15歳、グレーヴェとネクジェーが14歳。
ただ、グレーヴェは来週、ネクジェーは再来週が誕生日で、2人とも成人するそうだ。
「だったら、ネクジェーが成人したら2人の成人パーティーをしよう」と、言うとグレーヴェとネクジェーは涙を浮かべて喜んでくれた。
2人とも成人を祝う事など諦めていた様で、予想外のサプライズプレゼントの様に感じたみたいだ。
と、此処で僕の年齢も聞かれた。
丁度良いので、アレも言ってしまおう!!
「……ところで、ノッド様はお幾つなんですか?」
「僕は一応22歳だよ。
でも、僕は不老不死だから、歳は取らないんだ」
「「「……………………え?」」」
「不老不死?」
「歳を取らない?」
「どういう…………」
「…………意味ですか?」
「そのままの意味だよ。
僕は歳を取らないし、殺されても死なないんだ。
まあ、直ぐには信じられないかもしれないけど、何十年かしたら、『ああ、本当だったんだなぁ』って思うと思うよ」
「冗談じゃ無いんですね?」
「うん、本当の事だよ。
そうそう、ずっと“結婚は出来ない”って言ってたのはコレが理由なんだ。
僕は、不老不死だから王位を受け継ぐ必要が無いからね。
だから、王妃は迎えないつもりなんだよ」
「だから、誰とも結婚はしないとあんなに頑なに仰られていたんですね」
「うん。でも、此処に居るみんなは、キミ達が死ぬ迄、大切にするからね」
「「「はい!!」」」
みんな元気に返事をした。
多分、色々と驚き過ぎて、『もう、受け入れちゃえ!!』と思っているんじゃないだろうか……
「じゃあ、休憩は終わりにして、キミ達の役割りについて話そうか」
と、言って仕切り直す。
全員、気持ちを切り替えて、真面目な表情に戻った事を確認して、話しを再開する。
「さっきも言った通り、キミ達の役割りは2つ。
1つ目は、僕を支えてくれる事。
公私共に、僕を全面的に支えて欲しい」
多少、恥ずかしそうな表情も見えるが、みんな大きく頷いてくれる。
僕も頷き返すと、話しを進める。
「そして、2つ目は、ルベスタリア王国の国民全てが1人の例外も無く、僕に感謝して、僕を敬い、僕を崇拝する様に導いて行く事だ。
さっきの話しの時にも言ったけど、もしも、この国の事がアルアックス王国や他の国に知られたら、戦争に成りかねない。
だから、1人の裏切り者も許さない。
1人の裏切り者も出ない完全な支配体制が必要だ。
ただ、僕は力や暴力で抑え付けるだけの支配をしようとは思ってない。
誰もが幸福に暮らして、その幸福が僕から与えられた幸福だと理解して感謝する事で、国民が自ら僕に従って、自分の意志で裏切る事の無い国にしたいと思っているんだ。
だから、キミ達にはその支配体制作りと管理をして欲しいんだ」
「誰もが幸福に暮らして…………」
「幸福だと理解して感謝する…………」
「自分の意志で…………」
「裏切る事の無い国…………」
「そう。夢や妄想のつもりは無いよ。
計画的に進めて行く、目標だ。
だって、この国の王様は僕で、その次に偉いのは、人の痛みと命の大切さを知っているキミ達だ。
無法を赦す愚かな王族も、欲望の限りを尽くす貴族も居ない。
生まれによる差別も、見た目による偏見も無い。
力無く苦しむ者は、僕とキミ達が救えば良い。
力に溺れて人を傷付ける者は、僕とキミ達が裁けば良い。
僕とキミ達なら、僕の望む理想の国は辿り着ける目標だよ」
僕の言葉を噛み締める様に、みんな、真剣な顔のまま一言も発さない…………
少し、間を置いて、僕はみんなに気持ちを声に出して貰う為にこう言った。
「みんな、僕の理想の国作りに着いてきてくれるかい?」
「「「はい!!」」」
全員が力強い意志を声に込めて、応えてくれた。
こうして、僕のルベスタリア王国は最初の国民を迎えたのだった…………
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リビングでみんなの意志を確認した僕は、秘蔵のキングエアゲーターガーの肉と大量の酒やジュースを持って来て、そのまま、パーティーをする事にした。
僕は食材を持って来てからは、みんなが調理や準備をするのを眺めながら、ハンジーズの相手だ。
因みに、先程、僕が真面目な話を始めた直後からお腹がいっぱいになったからか、眠っていた。
ハンジーズの相手と言ってもハンジーズは基本大人しい。
テンションが高いのは“エアーバイク”に乗っている時くらいだ。
今も僕の膝の上に座って僕の読む絵本を大人しく聞いている。
絵本を最後まで聞き終えたハンジーズが不意に僕の方を見て、ジッと見詰めて来た。
僕には子供は居ないが、4人の甥と姪が居る。
だから、何度も経験して来たので分かる。
…………コレはアレだ。
子供が、答え難い事を聞いて来るヤツだ!!
案の定…………
「……ノッド様。ノッド様はママ達の中で誰が一番好きなの?」
…………やっぱり…………
今読んでいた絵本が良く無かったのだろうか…………
幼馴染のハーレムパーティーを率いた勇者が、魔王を倒して、パーティーメンバーでは無く、お姫様と結婚すると云う物語だった。
しかし、そこでこの質問をぶっ込んで来るとは、子供の感性は本当に恐ろしい…………
驚いたり、期待を込めていたり、余裕のある振りをしたりとリアクションは、様々だが、全員が注目して聞き耳を立てている…………
母親であるサウシーズもハンジーズの質問を止めるつもりがない様で、期待を込めた笑顔を向けて来ている…………
そんな周囲の様子を眺めたが、僕は秘策を思いついた!!
なので、とりあえず正直に本当の事を答える。
「ハンジーズ。僕はみんなが同じくらい、とっても大好きだから、誰が1番かは決められないんだよ」
「そうなの?でも、勇者様はお姫様と結婚したよ?」
そう、きっとこう来るだろうと思っていた。
予想通りだ。
「……ハンジーズ。ちょっと、別の本を取って来るから待っててね」
そう言って僕はハンジーズをソファーに降ろして部屋を出て行く。
もしかしたら、僕が質問に答え兼ねて逃げたと思われたかもしれないが、そうでは無い。
僕にはちゃんと秘策がある!!
戻って来た僕は、「お待たせ」と、言ってハンジーズをまた膝の上に乗せた。
そして、持って来た本をペラペラと捲る。
僕の余裕のある雰囲気に少し訝しんでいる娘達も居るが構わずページを捲って目的の内容に辿り着いた。
その本は先程迄の絵本とは違って、文字だけの分厚い本だ。
しかし、ストーリーは絵本と同じで、絵本より詳しく且つ今回持って来た理由の、“絵本の続きのストーリーがある”のだ。
僕は、ハンジーズにその続きのストーリーを読んで聞かせる。
内容は、勇者がお姫様と結婚した後に王様となって、その後、パーティーメンバーを第二妃、第三妃と迎え入れて行って、更に近隣のお姫様や、貴族の娘とも次々に結婚して行くと云うモノだ。
途中から、みんなが僕がハンジーズの質問に対して誤魔化す為の作り話をしているんじゃないかと、本の内容を見に来るが、本当に僕は書いてある内容を読んでいるだけだ。
そして、ハンジーズに、
「僕も勇者様と同じ様に、みんなと仲良くして一緒に暮らしたいと思っているんだよ」
と、言った。
「そうなんだね!!」
と、ハンジーズが笑顔で応えてくれたので、其処で読み聞かせは終了した。
因みに、この勇者の話しはまだ続く。
最終的には、勇者が子沢山過ぎて後継者騒動で国が滅ぶと云うストーリーだ。
一応、古代魔導文明時代の史実だと伝えられる物語だ。
そして多分、本当に史実だろうと思う。
絵本では魔王は悪魔の様に描かれているが、僕の読んだ本の中では、悪政を行っていた人間の王様で、極悪非道な人体実験を行っていた魔導士となっている。
魔王討伐を依頼するお姫様も、魔王の娘だ。
要はクーデターの物語で、極悪非道な国王の暗殺をお姫様が頼んで、其れを行った男が、色ボケの王様になって国が滅んだお話しだ。
僕は反面教師とすべく、この物語を覚えていたと云う訳だ。
そうこうする内に準備も整って、パーティーの開始となった…………
「……では。今日、僕達が揃ったこの日をルベスタリア王国の建国の日として祝うと共に、みんなを歓迎する歓迎会を始めます!!
乾ぁ〜杯!!」
「「「乾ぁ〜杯!!」」」
僕の簡単な乾杯の音頭と共にパーティーが始まった。
先程言った通り、今日、9月9日を建国記念日にした。
理由は、国民第一号の彼女達が来たからと云うのと、9月9日が覚えやすいと云う事で決めた。
僕の誕生日の7月11日や、このルベスタリア盆地にやって来た初夏頃も考えたが、その時期は当面、移民集めをする時期になりそうなので止めて、9月9日なら、将来、お城の外でも農業を開始したら、収穫祭も兼ねて出来るだろうと思ったからもある。
そして……
「僕とキミ達が一緒に暮らし始める、今日こそが、この国の始まりに相応しいと思ったからだよ」
と、彼女達にちょっと甘い言葉を言う為でもあった。
因みに、僕の持って来たキングエアゲーターガーはみんな大喜びで食べていた。
荒野や砂漠の多いアルアックス王国出身の彼女達にとっては魚自体が高級品だ。
その上、キングエアゲーターガーは極上の味だから当然と言える。
其れから、暫く飲み食いしていると、レアストマーセが、
「……ところで、ノッド様。明日からの予定はどの様にすれば良いだろうか?」
と、聞いて来た。
真面目なレアストマーセは、きっと酔いが回る前に確認して置きたかったのだろう。
現状、特別な事が無い場合は、レアストマーセが指導役として、剣の訓練を行ってくれている。
僕が殆ど居ないので、ちゃんと1人1人に合わせて訓練メニューも組んでくれているのだ。
なので、トレジャノ砦からの移動が終わった事で今後の訓練のカリキュラムも含めてどう云う予定なのか聞きたいのだろう。
料理の味付けなど、各々で話していたみんなが此方を向いた。
みんな気になっているみたいだし、お酒もまだそこまで進んで居ない様だったので、ついでに説明する事にした。
「とりあえず、明日から2、3日はこのお城の施設を案内しながら、キミ達にセキュリティの権限を与えて行く予定だ。
みんな、僕に着いて来て貰ったから普通にこの部屋まで来たけど、現状僕が一緒に居ないと他の場所どころか、この部屋から出る事も出来ないから」
「え?!じゃあ、今夜はノッド様と此処で一緒に寝るんですか?」
と、ティヤーロが裏返る寸前の様な声を上げた。
先程の母の話しをまだひこずって、色々と想像した様だ。
他にも数名、挙動不審になり掛けている…………
「うん、そのつもりだけど、ハンジーズの教育に悪い事はしないよ」
と、笑って答えた。
「で、ですよね!!」と、安心と残念が混ざった様な返事をティヤーロはしていたが、僕は後になってこの発言を後悔する…………
「と、云う訳で、先ずはお城の観光をして貰う。
その時に、1人1人の部屋にも案内するから。
其れからは、僕が一緒に着いて、訓練と勉強をする。
その中で、得意な武器や得意な学問を見付けていって、其々に合った訓練や勉強の割り振りをして行こうと思う。
みんなの基礎が出来る迄は、レアストマーセには僕の補佐的な感じで武術指導を手伝って貰うから、暫くの間は宜しくね」
「はい!!お任せ下さい」
「あと、ティニーマには、みんなの家事の分担とか役割りなんかを割り振って纏めて欲しい」
「はい。任せてください」
「其れから、来年の春迄は、そうやって過ごす予定だけど、訓練や勉強の合間には、街を作ったり、釣りに行ったり、定期的にお休みしたりするから、地獄の猛特訓みたいな事は無いよ、安心してね」
そう笑顔で言うと、張り詰め掛けていた雰囲気が和らいだ。
地獄の猛特訓パターンだと思わせてしまったのかもしれない。
その後も、色々と話しつつ過ごしたのだが、徐々に酔いと睡魔に負ける者が現れ始め、最後に残ったティニーマも眠ってしまって僕だけが起きている状態になってしまった。
最後まで僕の右隣に座ってお酌をしてくれていたティニーマは、僕の股間に覆い被さる様に腰に胸を押し当てて眠ってしまった…………
そして、スキンシップの積極的なペアクーレは僕の左腕に全身で抱き着いて、色々当てて結構前から眠っている…………
更に、目の前には霰もない格好で、女性達が眠っている…………
グレーヴェとネクジェーは寝る時は下着派らしい……
サウシーズはハンジーズに掛けてあげた毛布に一緒に入っているが、彼女は全裸派だった。
毛布に入り切れていない背中側が丸出しだ…………
僕は後悔していた。
自分だけは寝室に行けば良かったと…………
こんな空間で我慢させられるくらいなら、1人で寝た方がよっぽど健康的だ…………