悪魔な娘がお風呂でワッショイ
お風呂回。
倫理規定コワイコワイ
「たっだいま、っと」
「す~~、す~~」
久々に一人じゃない休日を過ごし満足してうちに到着。
腕の中で気持ちよさそうに眠る少女を起こさないように部屋へと入る。
明日からまた仕事だ。
ほのかを一人家に残して仕事に行くのも不安ではあったけれど
仕事に連れて行くわけにもいかないからなぁ。
どうしたもんかね。
「ふぅ、一人じゃないってのは忙しいけど、やっぱり楽しいな」
布団に寝かせたほのかを眺めながら今日一日の事を思い返す。
……主に俺のせいで職質にあった記憶ばっかりだな!
熊か相撲取りみたいな独身の大男が外人風の幼女連れて歩いてたら
通報されまくっても仕方ないかもしれないが。
俺がTシャツにナップサック、カーゴパンツで
ほのかがお洒落なワンピースだったのもいけなかったのかもしれない。
今度出かける時はペアルックは無いにしても、
格好は近づけよう……そう心に決めた。
次も通報祭り喰らったら本気で心が折れると思う。
それにしても、落ち着いて考えると
やらないといけないことはすっごく多い気がする。
まず明日の朝ごはんだろ?
今日ほのかを風呂に入れられなかったから入れないとだし、
そうすると着替えの用意とか洗濯もしないとだ。
ほのかが一人で留守番するなら晩御飯も作り置きしないとだし
何かあった時にどうするかも教えないといけない。
……それに、生活面だけじゃない。
部屋の中にドカンと置いてあるあのケースについてとか聞かないとだし
ハルマゲドンについてとか、悪魔についての話も
分かる範囲で聞いておかないと絶対不味い気がする。
天使も悪魔みたいに肉体求めてうろうろしてるわけだろ?
何も知らないでいきなり鉢合わせましたとか洒落にならないし。
「うぅ、絶対忘れること多そうだ。
メモしとこう、メモメモ……」
忘れないように用事全般メモを残しつつ
明日の朝ごはんを仕込んだり片づけしたりしていると
あっという間に0時近くになってしまう。
「……風呂は起きてからでいいか」
何時ものだらけ癖で何となく流してしまった入浴。
後になって激しく後悔したのは言うまでもない。
◆
「…………ん」
尿意を感じて目が覚める。
ふらふらと起き上がり腕時計を見ればまだ時刻は朝の3時半。
仕事は15時からで、14時すぎくらいに家を出れば余裕だ。
近所のコインランドリーも8時からだし、2度寝しよう…。
トイレを済ませて再び床に横になる。
布団で気持ちよさそうに眠っているであろうほのかを
起こさないように少し離れたところで丸く…
「……ねぇ、パパは何でほのかと一緒にお布団で寝てくれないの?」
「う、起こしちゃったか」
照明を落とした部屋の中、不満げにこちらを睨みつける娘さまの気配を感じ
(さて、なんて答えたもんか)と内心で汗をかく俺だった。
「で、パパは何でほのかと一緒に寝てくれないの?」
灯りをつけた部屋の中、ちょっとふくれっ面のほのかが俺を詰問する。
女の子と一緒の布団で寝るとか、犯罪チックだから気後れしているだけ
なのだが、それ以前に乳幼児ならともかく小学生くらいの女の子が
父親と一緒に寝るなどと言うのは流石に風聞が悪い。
だが現実問題布団は一つしかないわけで、
妻でもいたなら川の字で寝るのは当たり前だったろう。
そう何度も布団の外で俺が寝ていれば、自分が嫌われているのでは?と
そんな誤解をしてしまうかもしれない。
という訳でもっともらしい言い訳をすることに。
「いやほら、俺おととい仕事から帰ってからまだ風呂に入ってないからさ?
昨日もお出かけして帰ったらすぐ寝ちゃったろう?
流石にそれで布団に潜り込んだら、な?わかるだろ?」
「う~~~、ほんとに?」
ただでさえおっさんなのだ。
加齢臭という奴は嫌でも気になる。
どう見ても立派なダブルの羊毛布団に、無為におっさん臭を移したくない。
ただ、説明自体に嘘はなかったのでほのかも渋々ながらに納得はしてくれる。
だが、俺はここで迂闊にも自爆スイッチを自分から入れていたことに
遅まきながら気づいてしまう。
「お風呂、お風呂かぁ………。
私もまだ汗流してなかったよね。
いいよ、パパ、んじゃあ今から一緒にお風呂に入ろ?
そしたらパパが言ったこと信じてあ・げ・る♪」
「お、おう」
名案だとばかりににっこり笑うほのか。
顔はニコニコしていたけれど、纏う雰囲気が完全にこう言っていた。
ちゃ~~~~んす♪、と。
我が家のお風呂はユニットバスだ。
トイレ、洗面台と一緒にシャワーと湯舟が同じ部屋の中設置されている。
給湯器は外付けで操作盤も部屋の外の壁面。
お湯の温度は基本温度を外で設定して水で調整して好みに高さにする感じ。
大人一人でも、狭い。
足は延ばせないし肩までお湯が張れない深さ。
だから普段は風呂に入る=シャワーで汗を流す、だ。
足を伸ばしてのんびり風呂を楽しみたいときは
近所の銭湯(歩いて3分)か、最寄りのスーパー銭湯に行く。
「マイキー・オルテ」がスーパー銭湯のそばだったなら
毎日サウナに入ってから出勤したんだがなぁ、ふふふふふ。
「ねぇパパ、早くぬ・が・せ・て?」
「服の脱ぎ方くらい自分で分かるだろうに。
こういう時ばかり知らないふりしてもダメだぞ?」
「う~~~、パパはお嫁さんの服をドキドキしながら脱がすっていう
最高のシチュエーションに興味ないのっ!?」
「はいはい、あと10年もしたらドキドキするかもなぁ」
ジャアアアアアア、とシャワーを出して温度を確認しつつ
娘の戯言をスルーする。
ほんと嫁アピールが好きな子だよなぁ。
別にちょっとくらい我儘だったり言うこと聞かなかったりしても
娘として育てるって決めてポイ捨てする訳もないのだけども。
……その辺は、当事者からすれば分かってても不安なのかな。
「ぶぅ~、脱いだよ?」
「洗濯物はかごに入れたな?よしよし。
んじゃあほら、洗ったげるから中に入れ~」
「なんでパパは脱がないの!?
パパも入ってくれるって言った!」
「一緒に入ってるじゃん」
「服着てお風呂に入るの!?」
「風呂狭いからな。
ほのかを洗ったらシャワーを浴びながらほのかはお風呂に浸かってもらって、
お湯がたまったら俺が交代で入る」
どうせ服は洗濯するから濡れても構わんしな。
そう考えての提案だったのだけど。
「やだやだやだ!パパの身体はほのかが洗うのっ!
一緒にお湯につかるのっ!」
と真っ裸でごね始めた。
「いや、別にそこまでせんでも……」
「やっ!パパ、ほのかに遠慮してるっ!
ほのかはパパのお嫁さんになるんだから、
もっとわたしを見て、わたしを触って、わたしを感じてくれないとやだっ!」
俺にしがみついてそう訴えるほのかの顔には
分かりやすくこう書いてあった。
そんなに私が嫌いなのか!?と。
……なんというか、凄く分かりやすい子なのは助かるんだけど
あんまりグイグイ来られるのは慣れてないから戸惑うなぁ。
でもまぁ距離感を感じる=不安につながるなら
それを払拭してあげるのも親の務めだろう。
まだ昨日今日の関係なのだ。
この子との距離感をもっと理解するためにも
これは仕方のない事なのだと自分を納得させる。
「ほれ、脱いだぞ。
さ、んじゃあ中は入れ~」
「うん♪」
すごく嬉し気なほのかの様子に、なんか俺失敗したか?と不安になる。
ぬるめの温度に調整したお湯をかけ、熱くないかと聞けば
「大丈夫、ちょうどいいよ~。
それにしても、これがシャワー?
すっごい便利な道具よね。
お湯がいくらでも出てくるんだもん」
「お風呂、シャワーは中世頃に生きてた人たちから見たら
一度味わうともうやめられない系の代物かもな。
ほら、頭から浴びたらシャンプーで洗ってあげるから」
「ん……」
「アワアワするから目を開けるなよ?沁みて酷いことになるからな~」
「ひゃっ!ほんとにアワアワするっ!面白いねっ!」
美しい銀髪をシャンプーでわしゃわしゃアワアワ洗うのは結構楽しい。
もこもこと泡塗れになる頭を一度軽く流して、リンス(めったに使わない)する。
え、何故リンスまであるかって?
間違えて買ったからに決まってるでしょうが。
リンスをしっかりと洗い落とし、さて次は自分の頭をとお湯をかぶると
「ダメっ!パパの頭は私が洗うっ!」
好奇心で目をキラキラさせたほのかからストップがかかる。
ま、自分で洗えるようにならないと困るし
俺の髪は短いから練習台にはいいか。
そう思ってほのかの前にかがみこむ。
「んじゃあ頼もうかな。
俺はシャンプー…そこの瓶みたいなやつな。
頭のとこ押すと液が出るから、それを手に付けて」
「わかった!むふふふふっ♪」
不審な笑みと笑い声を上げつつほのかの小さな手が俺の髪をこねくり回す。
久しく床屋で髪を洗ってもらったりすることが無かったので
人に頭を洗われるのは久しぶりだ。
「うんしょ!うんしょ!」
と一生懸命洗ってくれる様子にほんわかしつつ、
こういうのも悪くないなぁ、とちょっと暖かい気分にさせられる。
相手は悪魔とはいえ、まだ子供なのだ。
見た目通りの精神年齢ではないのは話してて分かるが
見た目に引きずられている部分も間違いなくあるようだし
「親子の触れ合い」というのをどこかで求めているのかもしれないなぁ。
それを、こちらが気恥ずかしいからと避けてしまうのは
逆に情緒教育としてよろしくないかもしれない。
脳裏に浮かぶのは子供の頃の自分。
甘えたくても、甘えられる環境でなくなっていた家庭。
家族という「枠」の中で、ただ淡々と消費されていく時間。
「あの一件」以降、全てがおかしくなってしまった、
俺の「帰るべきはずだった」場所。
………うん、もうちょっとスキンシップ取ろう。
嫌な過去をちらりと思い出し、反面教師で同じ思いを
この子にはさせまいと心に誓う。
「できたっ!」
「お~、ありがとな~。
じゃあ、ほのかの身体が冷えないうちに身体洗おうか」
「うん!」
ボディソープで身体を洗ってやりながら、
髪をまとめるバンドとかもいるなーとか
シャンプーハットとかあったほうがいいかなぁとか
色々考えることは多くて。
ここまでのほのぼのした流れに、完全に油断させられていたことに気づいたのは
迂闊にもほのかに、「パパ洗ってあげるからもっとこっちに来て!」と
元気よくお願いされ、湯船に引き込まれてしばらくしてからだった。
「パパ、背中終わったよー?次は前ね?」
「ん~、ありが…え?前?」
「前はぁ……『ほのかで』洗ってあげる、ね?」
こちらの意識の陥穽をつく様に、ボディソープを身体に塗りたくったほのかが
ぬるりと俺の前に回り込み、抱きついて体をこすりつけてくる!
「うふふ!パパ、ほのかがパパの身体余すとこなく綺麗にしてあげるから、
パパはぜ~んぶほのかに任せてくれていいんだからね?
一緒に気持ちよくなろ♡」
「ちょ!おまっ!
隙を見せたらすぐそうやってエロ展開に持ち込もうとするっ!
エロ禁止っ!マジでやばいからっ!」
「ヤバいって、パパこうやって襲われるほうが好みだったのっ!?
なら私全力で襲うっ!」
「そういう意味じゃねえええええええええ!!」
湯気さんの代わりに泡さんが頑張ってお仕事をしてくれました。
そして大乱闘の末、何とか俺の貞操は守られた。
ほのかがこの後こっぴどく怒られたのは言うまでもない。
俺のほんわか感返せ。
親子でも理解し合えないことなんてざらなわけで。
ましてや他人と理解し合えると言い切れる、そんな方たちが羨ましく思える今日この頃。
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